#5 体験者の100%が「今後も利用したい」と回答 AIチャットボットが行政サービスを変える

制作・東洋経済企画広告制作チーム / 日本オラクル

近年、さまざまな分野で関心が高まっているAIの実用化。日本では、2016年に創設された人工知能戦略会議が司令塔となって産学官が連携し、AI技術の研究開発や社会実装が進められている。そのような中、実際にAIを積極的に活用する自治体が現れた。AIの活用で、行政サービスはどのように変わっていくのだろうか。先駆けとなる港区の例を見てみよう。

区民の8%にあたる約2万人が外国人 行政情報を行き届かせるために

港区の武井雅昭区長は、7月10日の記者発表で「2018年を港区におけるAI元年と定め、AIの活用による行政サービスの向上と業務効率化を目指す」と宣言した。そのAI施策の中でも、特に注目を浴びているのがAIチャットボットの導入だ。その背景には、港区ならではの課題があるという。AIチャットボットの導入を決めた産業・地域振興支援部の国際化・文化芸術担当課長である大久保明子さんはこう語る。

大久保 明子

港区
産業・地域振興支援部
国際化・文化芸術担当課長

大久保 明子

「日本に駐在する大使館の半数以上が集中している港区は、区民の8%にあたる約2万人が外国人です。これまでも、外国人相談員3名が庁舎で電話や来庁者の対応にあたるほか、5つある各地区総合支所を含む区有施設に10台のタブレットを置き、タブレット端末を活用した通訳サービスが受けられる体制を取ってきました。また、港区公式ホームページでは自動翻訳で英語、中国語、ハングルに対応しています」(大久保さん)。

しかし、窓口等で英語対応が受けられると知らない人も多く、必ずしも行政情報が行き届いているとは言えなかったという。そのような中、3年に一度の区内在住外国人を対象とした調査が行われ、前回調査と比較して、在住外国人の情報の入手先としてSNSの割合が大幅に増加していることがわかった。中でもFacebookを利用している外国人の割合が多いことからFacebookに「Minato Information Board」を開設したのが2017年のこと。

「このページでこちらがお伝えしたい情報を発信することはできますが、外国人の方の問いかけを受けとめるものにはなっていません。そこで、さらに踏み込んだ双方向のやりとりができるものとして、AIチャットボットの導入を決めました※」(大久保さん)。

※なお、本サービスは、現在、Facebook社の承認待ちの状況。Facebook社の承認がおり次第、運用を開始する。

利用の仕方は簡単だ。利用者は、Facebookのメッセンジャーアプリで「Minato Information Board」に質問をする。英文はもちろん、キーワードの入力だけでもいい。最もふさわしい回答をAIが選び、即時に回答してくれる。たとえば、ソファの捨て方を尋ねた場合、申し込みが必要であることや粗大ゴミ受付センターの連絡先が表示されるといった具合だ。

田上 緋佐

港区
産業・地域振興支援部
地域振興課国際化推進係

田上 緋佐

SNSで情報にアクセスできる 会話するようにレスポンスがくる

AIチャットボットの導入に携わる産業・地域振興支援部 地域振興課国際化推進係の田上緋佐さんは、そのメリットをこう話す。

「使い慣れたSNSで情報にアクセスできるうえ、会話をするようにレスポンスが返ってくることがAIチャットボットの強みです。区のホームページも必要不可欠なものですが、外国人の方から『欲しい情報までたどり着けなかった』とお聞きしたことがあります。その点、AIチャットボットはキーワードだけでも欲しい情報にたどりつけるので、外国人の方にも使いやすいようです」

運用にあたっては、外国人のニーズや区が伝えたい情報などを総合的に考慮し、まずは、「防災」「教育(区立小学校)」「ゴミの捨て方」「国際・文化」の4分野を取り上げることにしたという。想定される質問とそれに対する答えは、外国人相談の実績や港区公式ホームページにあるFAQをベースにしつつ、人間が英語文を作成。自動翻訳ではない自然な英文が返ってくるため、スムーズな会話を楽しめるようになっている。しかし、利用者の質問に対する答えがない場合も当然ある。

「AIチャットボットで解決できない場合、英語対応が可能なコールセンター『みなとコール』をご案内するようになっています」(田上さん)

AIチャットボットで解決できれば、「みなとコール」のスタッフや外国人相談員は、対人でなければ解決しづらい問い合わせに注力できるというメリットもある。導入に先立って行われた実証実験では、AIチャットボットを体験した外国人の100%が「実際に利用したい」と答えたという。

防災、教育からゴミの捨て方 国際・文化の4分野からスタート

このAIチャットボットを支えているのが、オラクルのクラウドサービス、「Oracle Service Cloud(オラクルサービスクラウド)」と「Oracle Database Cloud(オラクルデータベスクラウド)」だ。オラクルが選ばれた理由は大きく分けて4つあるという。

「1つ目は、教師データを必要とせず、1組の質問回答を登録するだけでAIが自動学習し、適切な回答ができること、2つ目は、職員がAIチャットボットに必要なFAQの更新(質問と回答の文章作成)ができることです。外部の業者さんに作業をお願いする必要がないため、情報のタイムラグがなく、外部とのやり取りといった作業負担も軽減できます」(田上さん)

作業負担の少なさはオラクルの特徴だ。通常、AIを利用するには事前に大量のデータを読み込ませる必要がある。チャットボットでも「1つの回答に複数の質問」というセットを大量に読み込ませ、言葉の揺れなどをAIに学習させていかなければならない。しかし、オラクルでは自動的に学習するAIを備えており、「1つの質問に1つの回答」の1セットを登録するだけで使い始めることができる。チャットボットを使っているうちにAIが自動的に学習して賢くなっていくため、運営する側の負担が少なくて済むというわけだ。

そして、3つ目の決め手となったのが、セキュリティの高さだという。「区民の方に安心してサービスを利用していただくためにも、セキュリティの高さは重要です。チャットボットのFAQの更新は職員が行うにしても、外部の業者さんの協力を得ることになりますし、利用者がチャットにご自身の個人情報を書き込んでしまう可能性もあります。チャットボットのやりとりは、すべてデータベースに残ります。しかし、『オラクルデータベースクラウド』では、データベース管理者とデータへのアクセス権限管理者が分けられるため、データベース管理者は会話ログやユーザー属性情報といった秘匿データにアクセスできません」(大久保さん)

そうした秘匿性の高いデータ群に限ってセキュリティ設定を強くすることもできる。さらに、最低2人の人間が同時に操作しなければ、データアクセス権の変更も不可能だ。この堅牢さゆえに、外部だけでなく、内部の情報漏洩も防ぐことができるのだ。

「やさしい日本語」で対応

港区ではまず英語と、小学3年生レベルを想定した「やさしい日本語」で対応

「最後は、多言語対応が可能であること。外国人向けにサービスを展開するにあたり、多言語対応可能であることは必須です。英語対応に加え、区が推進している「やさしい日本語」でも対応できる点は魅力です。」(田上さん)

オラクルのAIチャットボットは現在33カ国語に対応しており、港区のAIチャットボットでは、英語に加えて小学3年生レベルと言われる「やさしい日本語」でも会話できるようになっている。

港区では、このAIチャットボットを今後どのような形で展開させていくのだろうか。 「まずは『防災』『教育(区立小学校)』『ゴミの捨て方』『国際・文化』の4分野から始め、順次カテゴリーを拡大する予定です。また、外国人の方が意外と知らない日本の文化、たとえば『入学式ってどのようなもの?』『小学生はどのようなカバンで通学するの?』といった項目も、登録しています。今後もこのような質問をニーズに合わせて加えていきたいですね。これまでは、外国人の方のニーズを把握する手段は各種会議や3年に一度の調査などに限られていました。今後は、AIチャットボットのログを分析することでより多くの方の声を拾い、区の施策に反映できたらと考えています」(大久保さん)。

在住外国人が知りたい情報を的確に返すだけでなく、区と区民を直接つなぎ、新たな施策を生み出す可能性を秘めた港区のAIチャットボット。先駆者とも言える港区のAI施策は、今後ますます注目を集めることになるだろう。

Oracle Cloudの詳細はこちら

It goes better with "Digital"

「AIチャットボット」は、多言語で素早いレスポンスが可能だ。
周りに頼れる人の少ない外国人でも、チャットで会話をするように気軽に質問でき
適切な回答を瞬時に得られる安心感は大きい。
普段の生活で生じる疑問の解決はもちろんだが、たとえば地震など緊急時の対応について
日ごろの情報発信ツールとして活用していくことも考えられる。
外国人が安心、安全に暮らせる街。
グローバル化の進む日本の先駆けとして、
港区はAIとともに進化を続けていくに違いない。

Oracle Cloudの詳細はこちら