制作・東洋経済企画広告制作チーム / 日本オラクル
全国の自治体が積極的に魅力を発信し、注目される時代。その地に足を運ばせる大きなきっかけはSNSなどの「個の発信」だろう。人々が名所・名産、ご当地食材などを<上げる>ことで情報は広がり、知り、行ってみたいと思わせる。そうなると、重要なのは発信を仕掛けること、分析することになってくる。
たとえば──────
徳島県那賀町
2005年に鷲敷町、相生町、上那賀町、木沢村、木頭村が合併してできた小さな町、那賀町。人口わずか8900人で森林が95%という自然あふれる同町では「動画」をキーとした観光施策を実施。お遍路さん第21番札所太龍寺とロープウェイといった、いくつもの風光明媚な場所を動画で撮影し、コンテストを開催した。応募と告知というもっとも重要な第一歩にソーシャルを生かすなど、人とデジタルツールを最大限に活用し、町の観光振興の足がかりとした。
鳥取県
同県の最強の広報マンは平井知事だろう。すなば珈琲はもとより、最近ではパンダ命名にも「乗っかる」など、積極的に自県の魅力を発信し続けている。必ず、自県の大きな特徴や名所・名産を的確にリンクさせる秀逸さはもちろんだが、機に敏なタイミングは最高の仕掛けとなっている。
観光庁の調査によると、2016年の日本人国内延べ旅行者数が6億4,108万人に達した。また、日本人国内旅行消費額は20兆9,547億円と、東日本大震災前年の20兆4,354億円を上回った(※1)。さらに、訪日外国人旅行者数も2,404万人と順調に増加している(※2)。各自治体では国内旅行者と訪日外国人旅行者の双方を誘致すべく、さまざまな努力を行っているが、そこには課題も多い。
そんな中、オリジナリティ溢れる観光キャンペーンの数々で注目を集めているのが鳥取県だ。新たなクラウドシステムの導入によって課題克服を目指す鳥取県の観光戦略について、県庁の担当者に話を聞いた。
「鳥取県は蟹取県に改名します!」
平井伸治県知事がそう宣言したのは、2014年11月のこと。「蟹取県 ウェルカニキャンペーン」の記者発表会での一幕だ。
このキャンペーンは、県内の対象宿泊施設の宿泊者100名に抽選で鳥取県産のカニが当たるというもの。2017年はこの企画に加え、カニ写真のフォトコンテストやスタンプラリーといった企画も行われるなど、バージョンアップを遂げている。
県内にさまざまな観光資源がある中、カニを軸とした「蟹取県 ウェルカニキャンペーン」を打ち出すことになったのはなぜなのだろうか。その経緯を鳥取県元気づくり総本部広報課 課長補佐の森岡潤一さんはこう話す。
鳥取県元気づくり総本部 広報課 課長補佐
森岡 潤一
圧倒的なビジュアルで展開される「ウェルカニキャンペーン」。いったん入り込むと、これでもか!と言わんばかりの企画のハサミ打ちが待ち構える。そのポイントにはソーシャル展開をハサミ込むなど、施策への注力が伺える。
「鳥取県内の観光客数は、冬場になるとどうしても落ち込んでしまいます。そこで、冬場に誘客できる観光資源の発掘が課題となっていました」
季節ごとの観光客数の変動は、多くの自治体にとって課題の一つではないだろうか。鳥取県でもそれが数字に表れており、県内の観光客数は、トップシーズンである8月の163万人に対し、最も少ない2月は52万1,000人に留まる(※3)。
「冬場の観光資源を探している時、職員から『もっと県産のカニをPRしてはどうか』という声が上がったのです。鳥取県のカニの水揚量は全国トップ。中でもベニズワイガニの漁獲量は日本一を誇ります(※4)。県民は『松葉ガニを始め、鳥取のカニは美味しい』と思っていたものの、日本一だという自覚がそれほどありませんでした。首都圏からの来県者も『美味しいカニがこんなに安いなんて!』と言われることもありましたが、観光の素材としてあまりカニをPRして来ませんでした。実際、美味しいカニを食べに行くとなると、東京からは新潟に、大阪からは兵庫県の城崎や香住に行くケースが多かったのではないでしょうか。そうした方に『鳥取でいいカニを食べよう』と思ってもらおうと、『蟹取県 ウェルカニキャンペーン』を行うことになりました」(広報課 森岡さん)。
「蟹取県」「ウェルカニ」というギミックで話題を集めたキャンペーンも、今年ですでに4年目。NHK Eテレの初代ストレッチマンとして知られる俳優の宇仁菅真さん扮するカニ取り団長・カニダーなど、インパクトのあるビジュアルにも抜かりはない。
冬場は“カニパーカー”で出勤するなど、普段から「蟹取県 ウェルカニキャンペーン」のPRに余念がない鳥取県観光戦略局観光戦略課 係長の山田泰裕さんは、鳥取ならではの仕掛けについてこう話す。
鳥取県観光交流局 観光戦略課 総務企画担当 係長
山田 泰裕
「県知事が言葉の力を重視した発信を続けている中、職員の中にも、『ただ愚直に発信するだけではダメだ』という危機感があります。限られた予算の中でいかにメディアに取り上げてもらい、多くの人に知っていただくか。それには何かしらのフックが必要ですし、そうでなければゼロサムになってしまいます。『蟹取県に改名します』と発表した当時は、『由緒ある名前をなぜ!?』という声もありましたが、最近では『またか』と半ば呆れつつも(笑)、受け入れていただいているように感じています」(観光戦略課 山田さん)
この「蟹取県 ウェルカニキャンペーン」を展開し、拡散する上で欠かせないのが、TwitterやInstagram、Facebookといったソーシャル・ネットワーキング・サービスの活用だ。公式ホームページだけでなく、TwitterやInstagramからフォトコンテストに気軽に投稿できるようにしたほか、情報の拡散にも積極的に活用している。
これらの展開を支えているのが、オラクルソーシャルクラウドのSRM(ソーシャルリレーションマネジメント)だ。このソリューションには、ソーシャル・キャンペーンのコンテンツ開発やSNSの投稿管理、ソーシャル・リスニングやソーシャル・モニタリングといった機能が備わっているためだ。観光戦略課の山田さんは、その活用法についてこう語る。
「県としてキャンペーンを実施する上では、情報の拡散度合いやその内容について把握することが欠かせません。このソリューションは、SNSでの拡散度合いやその内容がグラフで可視化された状態で作成されるため、とてもわかりやすい。SNSでの拡散度合いとその日にあったニュースをこちらで関連づけて分析することも可能。毎日上がってくるレポートを見れば『ネガティブとポジティブ、どちらの反応が多いか』はもちろん、『どんなニュースをきっかけにキャンペーンに関するつぶやきが増えたのか』ということまでわかるので、非常に便利です。そしておかげさまで、今のところポジティブな反応がほとんどです(笑)」(観光戦略課 山田さん)
また、ソーシャル・リスニングのツールは、新たな観光戦略を仕掛ける上でも活躍しているという。
「境港へのクルーズ客船の寄港の増加などもあり、鳥取県の訪日外国人の述べ宿泊者数は、2012年の3万9,490人に対し、2016年には10万320人まで増加しました (※3)。県ではさらなるインバウンドの増加を目指し、海外で開催される観光展にも積極的に参加してPRを行っています。多言語対応のソーシャルクラウドは、海外でPRを行った際の反応まで拾うことができるので、助かっています。職員の外国籍の方にも発信してもらっています」(観光戦略課 山田さん)
ちなみに、鳥取県では観光戦略課以外でもこのオラクルソーシャルクラウドを広く活用しているという。
「毎日の分析レポートが見やすいので、広報課や県内外に鳥取県の食の魅力をPRする食のみやこ推進課、東京などの県外本部などでも使用し、さまざまなキャンペーンの動向や全体像の把握を行っています。もうひとつ言うとコストが大幅に抑えられたのも、大きなメリットと言えますね」(広報課 森岡さん)。
あまりに美しい鳥取の星空を売りにしたキャンペーンもその見せ方は秀逸だ。同県の企画化のスピードは、知事以下、担当部署の方々の熱い思いによるものだ。全県に波及する効果を狙い、さらにITを駆使していく鳥取県の今後に注目だ。
クラウドサービスを駆使して個性的なキャンペーンを展開し、効率的な分析を行っている鳥取県。鳥取市は、環境省が実施する「全国星空継続観察」で1位になったことのある唯一の県庁所在地だ。
また定点観測地やその他観測地点において複数回、日本一に輝いている。今年の5月には星空見えやすさナンバーワンをPRするため「星取県(ほしとりけん)」と改名して新たなプロモーションを開始し、「鳥取がまた名前を変えたぞ!」と話題となった。
「鳥取県は京阪神からの観光客が最も多く、2013年には鳥取自動車道が全線開通しました。京阪神からのアクセスが向上し、旅行スタイルが宿泊から日帰りになりつつあります。夜も鳥取県内に滞在していただく方法を考える中で、注目したのが鳥取の星空の美しさです。鳥取県は環境省が実施した星空調査で何度も日本一に輝いたほか、国内有数の天文台・鳥取市さじアストロパークもあります。そこで、年間を通じて星空を楽しんでいただけるよう、星空マップを作成しました」(広報課 森岡さん)。
蟹取県に星取県。独自のネーミングで話題を集める鳥取県の観光戦略。その目指す場所はどこにあるのだろうか?
「一番の目標は、県内の各地域に経済効果が波及することです。県がフックとなるキャンペーンを実施し情報を拡散させることで、県内の事業者の方々に関連する商品やサービスの販売などを行っていただければと思っています。実際、『蟹取県 ウェルカニキャンペーン』を続ける中で、小売店さんがカニの爪のボールペンをお土産物として扱い始めたというケースもあります。今後は県としても、キャンペーンと連動してどんな商品やサービスを扱ったらいいか、ソーシャル分析で分かったことも含めて事業者の方々にお伝えできるチャンスがあればと考えています」(観光戦略課 山田さん)。
地域全体の経済効果の波及を目指して行われる地方自治体の取り組み。その情報拡散にSNSが大きな役割を担う時代において、ソーシャル分析は今後ますます強力な武器となっていくことだろう。
関連情報
株式会社岡山情報処理センター(OEC)がOracle Social Cloudを鳥取県庁に導入しています。
https://www.oec-o.co.jp
参考資料
※1 観光庁 旅行・観光消費動向調査 平成28年年間値(確報)
http://www.mlit.go.jp/common/001186516.pdf
※2 観光庁 観光白書 平成29年度版概要
http://www.mlit.go.jp/common/001187257.pdf
観光庁 平成29年度版観光白書について
http://www.mlit.go.jp/common/001186623.pdf
※3 鳥取県観光交流局観光戦略課 平成28年 観光客入込動態調査結果
http://www.pref.tottori.lg.jp/secure/226510/H28sashiH29.08.pdf
※4 水産庁「水産物流通調査」(2015年)
http://www.market.jafic.or.jp/suisan/
鳥取県の発信力は平井知事のパワーに起因する印象が強かった。
しかし、多くの職員の方々の積極的な行動があってこそというのが取材の実感だ。
そこにはソーシャルを活用する取り組みがまずあった。
彼らのしたたかさは、明確で大きなゴール、つまり「県内全域に波及が及ぶこと」を必ず念頭においていること。
ソーシャルとリアルとを組み合わせ反響を緻密に追いかけ拡大を目指す。
ソリューションを最大限に活用している好例と言えるだろう。
日本オラクルが提供する<Oracle Social Cloud>は、
企業が行うソーシャル活動全体をサポートし、さまざまなニーズに合わせたサービスを提供できる。
一連のサイクルを
回したい
SRM Suite
マーケティング中心に
始めたい
Social Marketing
リスニング中心に
始めたい
Social Engagement and
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収集・解析に強みを発揮し、
LSA(潜在的意味解析)が高い関連性を見いだしキャンペーンの成功へと導く。