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スマートフォンやパソコン、デジタル家電などあらゆるエレクトロニクス製品で使用されるプリント配線板(電子回路)には、ほこりや熱、湿気などから回路パターンを保護する「絶縁膜」が欠かせない。太陽ホールディングスはこの絶縁膜に使用される「ソルダーレジスト」の老舗。高まる半導体需要への対応にとどまらず「総合化学企業」への飛躍を掲げ、新規事業への進出やM&Aなど矢継ぎ早に次の一手を打つ佐藤英志社長に、同社の戦略を聞いた。

制作・東洋経済企画広告制作チーム
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創業から65年
海外売上比率は80%超

 プリント配線板の表面を覆い、回路パターンを保護する絶縁膜となるインキ、「ソルダーレジスト」。さまざまな電子部品に欠かせないこの化学材料で、世界トップクラスのシェアを誇るのが太陽ホールディングスである。

 同社は1953年創業の太陽インキ製造が母体で、当初は印刷用インキの製造を行う会社であったが76年に事業方針を大転換。以後、エレクトロニクス業界向けの化学品に注力して現在の地位を築いた。いまや国内に6企業、海外に12企業ものグループ企業を抱えるまでに成長した。その経緯について、代表取締役社長の佐藤英志氏はこう語る。

「プリント配線板が現在の製造方法になる市場の黎明期、それに対応した製法の包括的な特許を取得し、技術的優位を確立して一気にシェアを獲得しました。今ではその特許は切れていますが、たとえばお客様が新しい基板をつくろうとするとき、最初に相談を受けるのはシェアの高いわれわれです。一方、当社は原材料の調達量が多いため、規模の利益で他社に先手を打って新しい製品を出せる。こうしてお客様のご要望にきめ細かく対応できることが、何よりも当社の強みであると考えています」

 直接顧客は世界中のプリント配線板メーカーだが、その先にあるスマートフォンメーカーなど最終顧客とも接点を持ち、新製品に求められる部品の研究開発にいち早く着手。要求があれば即座に対応できる体制を確立しているのが、同社の強みである。

 また、88年に韓国で現地生産を始めたのを皮切りに、米国、台湾、中国にも生産・販売拠点を設置。今では香港、シンガポール、タイに販売・技術サービス拠点を置き、ソルダーレジストの海外売上高比率はなんと80%を超える。それは「ニーズをいち早くキャッチするため、極力お客様に近い場所で生産する」(佐藤氏)という方針の表れである。

基板に緑色のソルダーレジストを塗布し、銅の回路パターンを保護することで断線、ショートなどのトラブルを防ぐ

医療・医薬品など
新たに3分野へ進出

 近年、あらゆるモノとインターネットがつながるIoTが普及しつつある。これに伴い、スマートフォンやデータセンター用サーバーのほか家電、自動車用などさまざまな製品で爆発的に半導体の需要が増加。いわゆる「スーパーサイクル」に入ったといわれる。

 半導体にはプリント配線板が使用されるので、絶縁体となるソルダーレジストの需要も高まり、同社の成長に寄与しているというわけだ。さらに同社は昨年策定した中期経営計画「NEXT STAGE 2020」において、「総合化学企業への飛躍」という方針を打ち出した。

佐藤 英志

代表取締役社長

佐藤 英志

「外部からは一見、当社は主力商品であるソルダーレジストだけつくっている会社に見えるかもしれません。実はその中に複数の製品区分があり、この42年間ビジネスを続けてきました。

 一方で、果たして20年、30年先も同様に成長していけるのだろうかという漠然とした不安があるのも確かです。そこで、昨年の中期経営計画策定にあたり、これまでに培ってきた化学の知見をベースに、次の経営の柱をつくっていこうと方針を定めたのです」

 佐藤氏は総合化学企業を目指すにあたり、現在のエレクトロニクス分野に加え三つの事業領域に参入していくと力強く語る。医療・医薬品、食糧、エネルギーの三つだ。

 医療・医薬品分野では昨年、子会社の太陽ファルマを設立。長期収載品13製品の製造販売承認の承継、販売移管を進めている。これにより医療・医薬品事業の今年度第1四半期は、15億7900万円の売上を計上した。

 今後は「追加の長期収載品の取得や海外展開、市場のニーズを反映させた新しい剤形の開発などを検討している」(佐藤氏)。医療・医薬品事業にはまったくの新規参入となるが、グローバルメーカーとして長年培ってきた海外進出のノウハウを生かしたい考えだ。

 食糧とエネルギーについては、企業の社会的責任(CSR)的な側面からも推進していくという。植物工場での野菜栽培と再生可能エネルギーによる自社工場の稼働を開始。20年ほど先をメドとして本格的に事業化するべく、化学の知見を生かした事業開発に取り組んでいる。

「確度の高い挑戦」で
10年、20年先の柱を構築

 今年度に入り同社は、システムエンジニアリングやソフトウエア開発等を手掛ける「マイクロネットワークテクノロジーズ」社と、「サウマネジメント」社のIT企業2社を立て続けに買収し、傘下に収めた。その狙いは二つ、「一つはIT投資の遅れを取り戻すために、システム開発の能力を社内に取り入れること。もう一つは、将来を見据え、デバイス領域に進出できる可能性を広げること」(佐藤氏)である。

「現在は電子部品用の化学材料メーカーですが、今後のIoT領域の成長を考えて、デバイスを自社で製造できないかと検討しています。そしてデバイスをつくるとき、勝負の分かれ目になるのが『ソフトウエア』の質だと考えています。たとえばタッチセンサーでちょうどいいタッチ感をつくり出すのは、モーターを制御するソフトウエアの能力。こうしたIT関連の知見を獲得するべく、2社を買収するに至ったのです」(佐藤氏)

 好調な市況の続くソルダーレジストで安定的に利益を出しながら、それを基盤として中長期的に見込みの高い分野に投資し、10年、20年先のビジネスを構築する。いわば「確度の高い挑戦」に取り組み始めた同社へ、ますます期待が高まっている。

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太陽ホールディングス
〒171-0021 東京都豊島区西池袋一丁目11番1号
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