
現在、高橋飛翔氏が代表を務めるナイルは3つの事業が柱だ。企業のWebマーケティング課題を解決支援するデジタルマーケティング事業、アプリ情報サービス「Appliv」などのスマートフォンメディア事業、そして「マイカー賃貸カルモ」による個人向けモビリティサービス事業がそれだ。いずれの事業でも業界から高い評価を集め、ナイルは右肩上がりの成長を続けている。
東大法学部にいた頃、高橋氏はできて間もない東大起業サークルの存在を知り、後に2代目の代表に就任した。起業への熱意やノウハウを仲間たちと共有し、ナイルを在学中に興している。
「創業時の元手は、蓄えていた自己資金や先輩からの借金。事業を拡大させると同時に、銀行からの融資を増やしました」
当初から成功したわけではなかった。初めに手掛けた教育事業は千数百万円を投資したものの、売り上げはほとんど回収できずじまいだった。大量の社員が辞めたときもあった。大学を卒業したばかりの若者でありながら、苦境に立たされても挫折しなかったのは、自分に対する確固たる自信があったからだ。
「事業が成功する確信なんてものはありません。しかし、『自分なら大丈夫だろう』『自分がやりたいことに賛同してくれる人はいるだろう』という自信はありました。『この軍資金は本当に返せるのだろうか?』という不安や逡巡が先にきてしまうようだと、起業家という職業は難しいと思います」

期待の新規事業として2018年1月にリリースしたのが、マイカー賃貸サービス「カルモ」だ。車両リース代はもちろん、自賠責保険料や重量税なども含めた月額定額で新車を個人に貸し出す、いわゆるサブスクリプションビジネスだ。サービス開始時から申し込みが殺到し、ユーザー数は順調に増加している。
カーリースという未知の分野に勝機を見いだした理由について、高橋氏は世間の所有欲と世帯収入の低下にあると分析する。
「自動車もはやり消耗品であって、所有に対するステータスが下がってきていると感じています。それと同時に、世帯収入が緩やかに減少していることも背景です。日本人の年収中央値は1994年に545万円を記録したのをピークに、2018年では約442万円と100万円以上近く下がりました※。マイカー購入は数百万円もかかりますし、ローンを組んでも税金支払いなどは月額化されず負担は大きい。『カルモ』は税金込みの月額定額制なので家計の平準化を実現できますし、実店舗を持たないことで業界最安値での提供を可能にしました」
高橋氏が「カルモ」をはじめたのは、そこに新しいビジネスチャンスのにおいをかぎ取ったからだけではない。自動車を必要としている多くの人に、少ない負担で提供したいという思いがあったからだ。
「『若者のクルマ離れ』などといわれますが、それは都市部に限る話で、実際はクルマがなければ仕事や生活に支障をきたす人のほうが多い。金銭的な問題でクルマを所有できず、生活がさらに苦しくなるという状況を少しでも解決したく、『カルモ』をはじめたのです」
※国民生活基礎調査(厚生労働省)より

「カルモ」事業の設立理由がそうであるように、高橋氏の原点には「多くの人に幸せをもたらす仕組みを作りたい」という思いがある。きっかけは、中学1年生のときに直面した祖母の死だった。
「100人以上の参列者が訪れ、みな涙で見送ってくれて、祖母はすごく愛されていたのだと実感しました。それ以来、『自分はどのように死にたいか?』を考えるようになり、結果として自覚したのは『多くの人から惜しまれたい』のではなく、『大きなことを成し遂げた、大勢を幸せにできたという手応えを心に抱いて生を終えたい』というものだったのです」
中学生だった高橋氏の脳裏をよぎったのは、広大な版図を掌握し、新世界を作り上げたアレキサンダー大王。今の世の中に落とし込むと、政治家になることが目指す道だと思えた。高橋氏は現実的な筋道を検証し、多くの政治家を輩出している東大法学部に行くことを決め、勉学に励み、これを実現させている。彼の中にある『自分なら大丈夫だろう』という絶対の自信は、こうした実際の行動と成功の積み重ねにある。
在学中、政治家より起業家のほうがスピーディかつダイナミックに社会を変えられると確信し、進む道を軌道修正したが、祖母の死を契機に心に抱いた想いにはわずかなブレもない。
「会社として健全に存続さえできれば、売り上げや純利益の金額そのものを追う気はなく、執着もありません。どれだけ社会に受け入れられる仕組みを作れたのか。結果として、どれだけの人を幸せにできたのか。これがすべてだと思うのです」
限りある生の時間の中で、いかに自分に納得の行く成果を残せるのか。そうした高橋氏の哲学が、ナイルの急成長の礎となっている。

思いを結実させるためにも、時間の有効活用は最重要課題のひとつだ。それは、自分自身にとってだけでなく、周囲の時間の使い方にも気を配っている。
「あらゆる人にとって時間は有限であり、どれだけ無駄を省いて濃密な時間を過ごすかが重要です。僕は1日に8〜10回くらい会議があるのですが、グダッとした時間は本当に無駄。会議で無為な時間を過ごすなら、大切な人との時間を設けたり、興味のある本を読んでもらったりしてくれたほうがいいですから、社員にも時間の密度をつねに意識してもらっています」
自分が待つぶんには構わないが、人のことは待たせたくないという高橋氏は、日々の業務遂行に腕時計が欠かせないと話す。スマホではポケットから取り出す、画面を点灯させるという手間がかかるが、腕時計なら即座に時刻を確認できるからだ。
「1日に何十回と眺めるので、見ていてテンションが上がるモデルが好きなのです。腕時計は一目置かれるステータスアイテムという側面もありますが、僕は自分自身の満足感を重視しています。美しいものを見るのは、幸せなこと。それを自らの腕に巻き、見るたびに心が弾むというのはステキな体験だと思います」
高橋氏の心を捉えた腕時計のひとつが、ハミルトンの「ジャズマスター オープンハート」だ。大胆なカットによって機械式ムーブメントの一部が露出したドレスウォッチで、重厚感のあるディテールとモダンなデザインが都会的な魅力を生み出している。
「心が弾みますね。僕は細かいところまで気になるたちで、Webサイトのデザインなどにもこだわりをもってとことん指摘してしまうのですが、この時計は、ブルースチール針の繊細さや多面カットを施したインデックスなど細部の仕上げまで美しく、全体のバランスもいい。時刻を確かめるたびに、愛着が高まります」
求める結果が100だとすると、今はまだ0.1でしかないという。その頭の中には、より多くの人を幸せにするための事業構想がまだまだ広がっているに違いない。お気に入りの腕時計とともに、挑戦の日々は続く。

ハミルトン
ジャズマスター オープンハート
H32565521
¥105,840(税抜)
機械式自動巻き/ステンレススチールケース/ケース径40mm/サファイアクリスタルガラス/5気圧防水
詳細はこちら
ナイル代表取締役社長
高橋 飛翔
1985年生まれ。東京大学法学部卒業。ナイル代表取締役社長。大学在学中に、ナイル株式会社を起業。企業のWebマーケティング課題を解決支援するデジタルマーケティング事業を展開し、業界を代表する存在へと成長させる。