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変貌遂げるリース業界 知られざる金融サービスとしての実力

顧客の代わりに資金を出して物件を購入、それを貸し出す「ファイナンス・リース」から始まったリース業界。顧客の要望に応じて、オペレーティング・リース、メンテナンス・リースなど、さまざまな手法を生み出し、顧客のビジネスの可能性を広げてきた。そして新たな挑戦は、今後も続いていく――。

リース取扱高の推移

リーマン・ショック、会計基準・税制が変更され
2008年から環境激変

1960年代から急成長したリース業界。以降も民間企業の設備投資動向と連動しながら需要はうなぎのぼりで、1991年には8.8兆円を突破し、その後、「7兆円台」で推移していた。
しかし、リースの会計基準・税制の変更(2007年公表、2008年施行)に加えて、2008年ごろからのリーマン・ショックによる経済不況が重なり、2000年代後半から取扱高は下降した。
民間設備投資額に対するリース比率を見ても「5.35%」(2017年度)まで下がった。次の一手への挑戦が始まった。
出典:リース統計(2017年度)/リース事業協会

リース取扱高の推移

日本経済を取り巻く逆境が
新たな挑戦に駆り立てた

 リース業界は、民間企業の設備投資動向とほぼ連動して成長してきた。ピーク時の1991年には、リースの取扱高(=リース契約の総額)は、8.8兆円に達した。「21世紀には、恐らく12兆円にまで膨らむ」――。リース業界は、こんな期待に沸いていた。

 ところが日本経済は「失われた20年」に突入。リース業界は横ばいで推移する民間の設備投資動向に合わせ、取扱高7兆円ほどで足踏みしていた。

 状況が一変したのは2009年~2010年。増加に転じた民間設備投資とは対照的にリース業界の取扱高は下がり始めた。前年にリーマン・ショックで打撃を受けたうえ、大企業を対象とした会計基準が変更になったからだ。

 これまで費用として計上していたリース物件は、資産に計上することになり、リース利用の会計上のメリットが失われた。加えて低金利の状況が続いているので、金融機関からの借り入れ、自己資金で購入する動きも出てきた。一番底の2010年には取扱高は4.6兆円まで下がり、新たな一手が必要になった。

海外事業は0.5兆円から
1.2兆円に大躍進

 こうした状況の中、多くのリース会社が、新たなターゲットとして狙いを定めたのが海外事業だ。少子化によって、国内市場は縮小していくのに対して、アジアをはじめ、海外では人口が増加している国、経済が伸び盛りの国が沢山ある。こうした国ならば一緒に成長が可能と期待できる。

 これまでのリース業界の典型的な海外展開の手法は、海外進出する日本企業のサポート。日本で手掛けていたリース事業を海外で展開するビジネスモデルだ。すでに多くの企業が手掛けているので、各社とも、他社とは違う海外事業へのチャレンジを始めた。

 たとえば海外のリース会社の買収。日本は総合リース会社が主流だが、海外は貨車専門、エンジン専門といった専門リース会社が主流だ。存在感のある専門リース会社を傘下に収めることで、新たな世界戦略の道も開ける。

 また現地企業と組んで、現地の会社をターゲットにしたリース事業を始めようとしているところ、特殊なノウハウを持つ海外の企業と組んで、まったく新しいビジネスに挑戦するところも現れた。結果、海外事業の売り上げは、2012年の5000億円から2017年には約1.2兆円に膨らんだという。

 国内市場では環境や医療・介護分野に進出する企業が目立つ。社会には必要だが、収益化が難しい。そんなジャンルにリース業界が乗り込むことで、自立した産業に生まれ変わるかもしれない。

グローバル展開を加速していくリース業界

グローバル展開を加速していくリース業界

国内・海外のリース設備投資額(上図、連結ベース)の総額は、6兆8147億円。そのうち、海外のファイナンス・リースおよびオペレーティング・リースは、2012年度の0.5兆円から2017年度には「1兆1761億円」に伸びた。
日本のリース会社による国際展開時の進出先はアジア・中東エリアが多い。リース事業協会の「海外拠点調査」(2018年3月31日現在)によると、世界「30カ国186法人」のうち「アジア・中東」は「16カ国128法人」を占めている。欧州・アメリカへの進出も近年は増加している。
出典:連結リース統計(2017年度)/リース事業協会

リース利用率

リース利用率

リース利用設備

リース利用設備

9割以上の企業が利用しているリースは
身近な企業運営ツール

リースを利用している企業の割合(上図)は「91%」にも上る。利用設備では情報通信機器(85.4%)と自動車(67.1%)が最も高く、企業の運営にリースが必要不可欠であることがうかがえる。
なおリース利用理由は「設備導入時に多額の資金が不要」「事務管理の省力化」「コストを容易に把握できる」が上位にランクインしている。
出典:リース需要動向調査(2015年)/リース事業協会

多様なネットワークが
新たなビジネスを生む可能性

 リースを利用する業種は多岐にわたる。リース期間は大体5年~10年、建物などは30年ほどにまで達する。

 つまり多様な企業や業種との間にネットワークが築かれているわけだ。これを生かして共同事業をスタートさせたり、新規事業に出資したりしているリース会社は少なくない。

 また、事業で培った目利きの力、廃棄処理に関するネットワーク、在庫の管理技術、資金回収のノウハウなどを生かして、新たな代行サービスなどを立ち上げるところも出てきた。

 あらゆるモノを扱うリース会社に発想の限界はない。多様な業界が変貌するような力を秘めているはずだ。

製造業よりも、非製造業の利用が多い。
サービス業もリースが牽引

製造業よりも、非製造業の利用が多い。サービス業もリースが牽引

業種別リース取扱高(上図)で最も多いのは、非製造業(63.5%)。建設業や製造業で使われる産業機械や工作建設機械もさることながら、情報通信機器や事務用機器等でリースを活用する一般企業が多くを占める。
非製造業でも、設備投資が生産性を上げることが認識されてきたのだろう。これまでは製造業がリースによって1人当たりの労働装備率を高めてきたが、これからは、医療、介護を含む、非製造業での労働装備率が高まっていきそうだ。
なお企業規模別で見ると大企業35.1%、官公庁・その他12.2%に対し、中小企業が52.7%だ。
出典:リース統計(2017年度)/リース事業協会

情報通信機器、中でもコンピュータ関連は
全体に占める割合が大きい

情報通信機器、中でもコンピュータ関連は全体に占める割合が大きい

機種別リース取扱高構成比(上図)を見ていくと、最もその比率が高いのは「情報通信機器」であることがわかる。その中で半分以上を占めているのが「コンピュータ関連」(パソコン等)。全体に占める比率に換算しても「17.2%」と非常に高い。その後は輸送用機器(自動車、船舶等)、商業及びサービス業用機器、産業機械、事務用機器、医療機器……と続いていく。
機種分類ごとの前年比率では比較的「横ばい」になる傾向がある中、「土木建設機械」は前年比率122.5%と、2ケタの増加を示している。
出典:リース統計(2017年度)/リース事業協会

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