40万社の顧客基盤を生かし
“「リース」の先へ”向かう
リコーリースは1976年、リコー製品の販売支援を目的に設立以降、メーカー系リース会社としてリコー製品以外にも対象を広げ成長を続けてきた。同社の大きな特長は中小企業中心に40万社にも上る取引先があることだ。厚い顧客基盤を背景に“「リース」の先へ”に向かう新たな成長を目指している。
代表取締役社長執行役員 瀬川 大介氏
PROFILE ■ 1980年リコー入社。2005年同社執行役員。2009年InfoPrint Solutions Company, LLC CEO。リコー常務執行役員、経営革新本部長、日本統括本部長などを経て、2016年リコーリース副社長執行役員。同年6月より現職。
リコーリースは1976年、リコー製品の販売支援を目的に設立以降、メーカー系リース会社としてリコー製品以外にも対象を広げ成長を続けてきた。同社の大きな特長は中小企業中心に40万社にも上る取引先があることだ。厚い顧客基盤を背景に“「リース」の先へ”に向かう新たな成長を目指している。
取引先の98%が中小企業
―2016年6月に社長に就任されましたが、就任後の手応えや進捗はいかがでしょう。
瀬川当社はこれまで、メーカー系リース会社として「リース・割賦事業」と「金融サービス事業」の二つの事業を軸に、総合的なフィナンシャルサービスを提供し成長してきました。
一方、市場環境の変化に伴い、従来のリースの手法だけではお客様のニーズに応えることができなくなっています。ビジネスモデルを変え、新しい価値を提供しなければなりません。
2017年の年頭あいさつでは「待ちから攻めへ文化を変えよう」と話しました。失敗はゴールへのステップ、チャレンジしていい、というメッセージも出し続けています。その風土が徐々に醸成されつつあると感じています。
―貴社は中小企業を中心に厚い顧客基盤を持つことが大きな特色です。その優位性を、どのようにさらなる成長につなげていく考えですか。
瀬川当社の取引社数は約40万社で、そのうち98%が中小企業です。平均契約単価は約230万円となっています。このような少額・大量契約のビジネスを行っている企業は、国内はもとより世界でもあまり例がありません。大量の契約を高効率・高品質で行えるのも当社の特長です。また、少額・大量契約のために、リスクを小口に分散できるため、当社自身の安定性にもつながっています。今後はこの多くのお客様に対して、新しいサービス・商品を提供していきたいと考えており、多様な取り組みを始めています。
"「リース」の先"にある
新領域へ
―2017年4月から、3カ年の中期経営計画もスタートしました。どのような成長像を描いていますか。
瀬川中計では“「リース」の先へ”をビジョンに掲げました。リースや金融にとどまらず、環境や社会、お客様の発展に役立つサービス・商品を提供できる企業を目指すという思いを込めています。これまでにない事業領域への進出やリスクテイクにも積極的に取り組んでいくつもりです。
我々はこれまで販売支援リース(ベンダーリース)を中心に成長してきました。これをベースに新たなものにも注力して成長しなければなりません。その一つとして中計の事業成長戦略で「創エネ・省エネを軸とした新たな環境分野への挑戦」を掲げました。太陽光発電設備を中心とした再生可能エネルギーにもさらに力を注いでいきます。FIT(電気の固定価格買取制度)の価格は下落傾向にありますが、初期投資額を抑えることが可能な屋根置き太陽光発電や、バイオマス、小水力といったほかの発電設備などに対し、リースの手法にこだわらず取り組むことで、十分に収益が得られると考えています。
―中計では「社会の変化に対する課題を解決するための金融サービスの開発と提供」も事業成長戦略に掲げています。具体的にはどのような事業を行っていくのでしょうか。
瀬川たとえば住宅関連です。団地などの集合住宅では建物の老朽化、少子高齢化に伴うコミュニティの活力低下などが問題になりつつあります。そこで当社は都市再生機構(UR)の関連会社で集合住宅の管理や修繕を手掛ける日本総合住生活(JS)様と業務提携しました。団地再生ローンの提供のほか、リフォーム、商業施設や保育施設など働く世代のための施設の誘致、環境整備・管理運営の支援など、集合住宅の再生やコミュニティの活性化に向けた事業を共同で行っていきます。
これらを含め、社会の課題解決につながる取り組みを推進し、事業成長を果たすことがSDGsの貢献につながると考えています。
中小企業の成長に寄与する
―「ビジョンである“「リース」の先へ”を実現する取り組みが着実に進んでいますね。
瀬川“「リース」の先へ”とは、決して既存のビジネスやお客様以外に活路を求めるという意味ではありません。逆に、これまで培ってきた40万社のお客様との関係性を強くし、期待に応える付加価値の高いサービスを提供したいと考えています。このため、中計でも「ベンダーとのアライアンス強化と顧客網の最大活用」「リコーグループ各社との協業」などを成長戦略に掲げています。
当社には、40万社のお客様と6000社の取引ベンダーを結ぶネットワークがあります。これから商品やサービスの拡販を目指す企業に対して販売金融などの提供もできます。
また、リコーグループ各社との協業により、loT向けセンサー、ロボット、フィンテックなど、ハード、ソフト両面のソリューションを提供することもできます。さらにはベンチャー企業をサポートしながら一緒になって、既存のお客様に対して従量課金など新しいスキームのリースを提供するといったことも可能になります。
―昨年11月には「カジュアルフライデー」制度を導入するなど、貴社自身の改革も進めています。
瀬川私も金曜日はジーンズです。服装だけでなく、金曜日には、定時前に業務を終了する「早帰り退社」も推奨しており、時間単位で有給休暇を取得してもいいようになっています。理由は問いません。「働き方」も含めて、自分で考え、自分で決めるのです。“「リース」の先へ”についても、答えがあるわけではありません。お客様のために何をすれば一番喜んでいただけるか、自分で考え行動することが大切です。
特に当社のお客様は98%が中小企業で、日本の縮図とも言えます。このお客様の成長に役立つことが当社の使命であり、日本のマーケットを支えることにも寄与すると感じています。引き続き、お客様とともに成長していきたいと願っています。