


戦略分野に資源を集中投下し
フロンティアの拡大に挑む
コア事業をしっかり固めつつ、戦略分野をさらに深耕し、未知なるビジネス領域も切り開いていくことで、新たな飛躍への道を進もうとしている芙蓉総合リース。医療ベンチャーへの出資、エネルギー・環境分野での新しいビジネスモデルの構築など、リース業の枠にとらわれない成長戦略が輝きを放つ。
代表取締役社長 辻田 泰徳氏
PROFILE ■ 1981年富士銀行入行。2011年みずほ銀行常務執行役員。2012年みずほフィナンシャルグループ常務執行役員、2013年同社代表取締役副社長、みずほ銀行取締役副頭取などを経て、2015年芙蓉総合リース代表取締役副社長、2016年4月より現職。
コア事業をしっかり固めつつ、戦略分野をさらに深耕し、未知なるビジネス領域も切り開いていくことで、新たな飛躍への道を進もうとしている芙蓉総合リース。医療ベンチャーへの出資、エネルギー・環境分野での新しいビジネスモデルの構築など、リース業の枠にとらわれない成長戦略が輝きを放つ。

中計で目指すべき姿を明示
―2017年度を初年度とする中期経営計画がスタートして1年経過しました。ここまでの進捗状況と手応えはいかがですか。
辻田増収増益を達成し、手応えは十分です。マイルストーンを予定どおり通過できたので、2年目も自信を持って計画を遂行していこうと社内の会議でも言ったところです。今回、5カ年計画をつくりましたが、金融・リース業界の中計は3カ年が多いので、珍しいかもしれません。営業資産2兆5000億円、ROA(営業資産経常利益率)2.0%、経常利益500億円という、5年後に目指すべき会社の姿を明示しました。
―「Frontier Expansion 2021 前例のない場所へ。」というビジョンを掲げられましたが、中計づくりで重視した点は。
辻田中計はトップダウンで策定することも多いと思いますが、今回はボトムアップでつくりました。そのため時間はかかりましたが、計画に対する社員の当事者意識が強くなりました。若手社員にビジネスプランを提案してもらい、昨年4月にファイナンス部門から不動産ファイナンス部を独立させました。その結果、不動産ファイナンス部門は大きく収益を伸ばしています。全員参加型で計画をつくったことにより社員の意識改革が進んだことも、前期の業績がよかった要因の一つです。
―新領域に積極的に挑戦するということですが、具体的にはどういう領域ですか。
辻田オートリース、ベンダーリースなどのコア分野をしっかり守りつつ、エネルギー・環境、医療・福祉などの戦略分野には徹底的に経営資源を投入していきます。エネルギー・環境分野では、たとえば東京藝術大学大学美術館のESCO(Energy Service Company)事業があります。ESCO事業に本格的に取り組んでいるのは当社も含めて業界で数社しかありません。

有力な医療ベンチャーに出資
―医療分野では、先進的な乳がん検査機器を開発中のLily MedTechなどのベンチャーに出資されました。

資本業務提携を通じて、医療分野の取り組みを強化。写真は、Lily MedTechが開発中の乳がん検査機器
辻田医療ベンチャー3社に立て続けに出資しました。この3社には、IPOをしても株は売らないという話をしています。ただ、開発中の製品が上市できたら、その販売に優先して協力させてもらう契約です。医療機器はリースと親和性が高く、医療・福祉は成長分野ですが、競合が激しいため撤退するリース会社もあります。当社はここを本気でやろうと考え、川上から徹底して攻めていきます。また東京工業大学と産学連携としては日本初の「GAPファンド」を立ち上げました。社会的責任を果たすという意味でCSR的側面もありますが、単なる寄付にするつもりはありません。大学から社会的課題を解決できる技術や製品が生まれ、大きなマーケットを創出したら当社が先頭を切ってそこに入っていく。そういうCSV(共通価値の創造)的発想も加味しています。
―医療分野で大学の知財となると、非常に高度で先端的です。目利きが必要になるのではないですか。
辻田業界の事情に通じ、技術もわかる人材がメーカーなどから来てくれるとありがたいですね。もちろんそれなりの手は打っていますが。オープンイノベーションのような取り組みも有効でしょう。中古大型医療機器を中心に解体・撤去から買い取り・販売までをワンストップで請け負えるFUJITAと昨年、資本業務提携しましたが、この4月には連結子会社化しました。これにより中古医療機器の買い取り・販売だけでなく、将来価値を織り込んだリース商品の開発強化、病院の移転・新築時の建て替え支援サービスの展開などにそのノウハウを活用していくことができるようになりました。

2018年には、中古医療機器の買い取り、解体・撤去など行うFUJITAを連結子会社化した(写真はイメージ)

リースの枠にはこだわらない
―競争が激しいリース業界にあって、貴社の強みはどこにありますか。
辻田一つは社員です。サービス業ですから人材が最大の経営資源ですが、当社には、リース業に必要不可欠な会計と税務のプロがたくさんいますし、不動産のエキスパートもいます。航空機リースでは入口から出口まで当社内で完結できますし、スタープレーヤーもいます。ソリューション提案では負けないと自負しています。もう一つは、お客様に恵まれていることです。芙蓉グループの各社がお客様になっていますし、みずほ銀行の取引先には優良企業も多くあります。最近はみずほの取引先以外にもお客様が広がっています。
―今後の成長戦略をどう描きますか。
辻田とにかく新しい領域に経営資源を集中的に投下していきます。医療・福祉などの分野も今は点と点を結んで線にしている段階ですが、一気通貫でできる体制を整えることにより、線を結んで面にしていく。そうしてシェアアップし、収益率も上げていきます。その過程で脱リースもあり得るでしょう。リース事業をやめるつもりはありませんが、リースの枠にこだわるつもりもありません。社員には、「それぞれの持ち場で勇気をもって一歩踏み出そう。そうすればフロンティアの先の世界が見えてくる」と言っています。私たちのミッションは、お客様の期待に応えることではなく、期待を超えることにありますから。
