
乾電池を動力源とする実証実験CMロボット「エボルタ」や、週刊誌の付録から組み立てる「週刊ロビ」、ロボット型の携帯電話機「ロボホン」。これら話題性にあふれたロボットを開発したのが、ロボットクリエイターの高橋智隆氏だ。第4次産業革命の鍵としてAIやロボティクスが注目されているが、あくまで人型ロボットにこだわる理由は、そこに人とロボットがたどり着くべき最良の関係を見据えているからだ。
「『ピノキオ』に出てくるコオロギのジミニー・クリケットや『ゲゲゲの鬼太郎』の目玉おやじ、『魔女の宅急便』の黒猫のジジなど、物語には小さくて賢い相棒がよく登場しますよね。それが、コミュニケーションロボットの未来なのではないかと考えています。無機質で洗練されすぎていると愛着が生まれず、ただ命令するだけの存在になってしまいます。それでは、人とロボットの距離は縮まらない。だから私はロボット技術だけではなく人の心にも興味があって、より心の琴線に触れるようなロボットを作りたいと思っています」
人型ロボット開発の先駆者であるという事実は、参考にすべき先駆者が見当たらないことも意味する。歩むべき道を迷わないのか? 挑戦しつづけることに疲れないか? そうした問いに、高橋氏は「実現したいロボットはその時々に明確です。好きなロボットを作り続けて、気が付いたらここまで来たという感じ」だと返す。
「もちろん苦労もあります。しかし、自分自身の手でロボットが少しずつ完成していくこと、そしてその成果が世の中に何かしらのインパクトを与えていくことに、いつも新鮮な喜びを感じています。日々の生活の中で、車や時計などの工業デザインから多種多様なインスピレーションや刺激をもらっています。それによって情熱が極限まで高まったときに、未開のロボット分野にもイノベーションが起きるのだと感じています」

1892年に誕生したハミルトンも、独創的なデザインとテクノロジーを追求し、世界初の電池式時計やLED式デジタル時計などのイノベーションを起こしてきた。1918には、アメリカ初のワシントンD.C.~ニューヨーク間の定期航空便の公式時計に採用された歴史をもつハミルトンは1世紀にわたって革新的な航空時計でパイロットの先駆者たちを支えてきた。飛行中、正確な目標地点を割り出せる偏流修正角計算機能を腕時計に初搭載した「カーキ X-ウィンド オートクロノ」も、航空テクノロジーに挑戦する想いの賜物だ。
「生活の近くで人に寄り添う精密機械という視点では、腕時計はロボットの先達に当たる存在です。独立時計師の工房で作業風景を拝見したことがありますが、何百ものパーツがケース内にぎっしり詰め込まれている精緻なモノづくりの在り方に、ロボットとの共通点を感じました。大きさや耐久性など、技術的な制約やルールの中でこそ、そこで表現される個性に魅力が感じられるように思います。この『カーキ X-ウィンド オートクロノ』には、高性能な精密機械が持つ独特のオーラがありますね。そのデザインや機能は、私の創作意欲に新たな刺激を与えてくれました」
好きに殉じる。それが挑戦し続ける気持ちを支え、新しいイノベーションを生み出す糧となる。