投資ファンド、プライベートエクイティなどグローバル金融業界で世界中を飛び回り、”一流”と呼ばれるビジネスパーソンたちと接してきたムーギー・キム氏。自らの経験から導き出したビジネスの教訓本『最強の働き方』がベストセラーになり、東洋経済オンラインでの「バレるコラム」が大人気を博しているが、やはり腕時計に対する姿勢からも、”一流”かそうでないかはバレてしまうものだと話す。
「一流の人物は、腕時計選びも一流です(笑)。彼らはブランド時計にありがちな“富の象徴”ではない、自分の生き様を価値基準にした選び方を実践します。たとえば世の中には、何百万円もするような時計が存在していますが、そこにはマーケティングにかかるブランド代がたっぷり含まれているもの。テレビや雑誌の広告など、世間一般で流布される"高級"をそのまま鵜呑みにしてしまうのは、他人軸で生きてしまっている“二流の時計選び”にコロコロ転落しているといえるでしょう。本当に仕事ができる人はつまらない見栄を張ることなく、なによりもその腕時計に込められた哲学やストーリーを大切にするのです」
そうした意味で腕時計ブランドの良し悪しを図るには、次の3点が重要になるという。
「ブランドに共感できるストーリーがあるか、余分なところではなく本質であるクオリティに力を入れているか、メンテナンスサービスにも長けていて、何十年のお付き合いができるかどうか、です」
ハミルトン社の腕時計に関していえば、「世界初の電池式腕時計を開発」「鉄道公式時計に採用」「米陸・海・空軍に供給」といった時計業界そのものに革新をもたらしてきた技術力と信頼の伝統が広く知られている。また、決して安くはない買い物である腕時計において、価格のできる限りの部分を本質への投資に充てるというのは、“見せびらかすためではない謙虚な自信”の表れだ。特に“目に見えない上質”という意味では、時計の心臓部であるムーブメントや、ディテールを研ぎ澄ますことに拘っている。
腕時計は何十年という長い付き合いになるため、メンテナンスサービスが充実しているかどうかにも、製品にどれだけの愛情が注がれているかを見極める指針にもなる。“一度良いものを買ったら、何十年と使い続けてほしい”という自社製品への謙虚な誇りが、ハミルトン社のメンテナンスサービスの強さに表れているのだ。
そして購入する側としては、「腕時計は見せびらかすためではない」という意識が欠かせないとムーギー氏は語る。
「お金を持っていることが幸せを意味せず、富をひけらかすことがダサいといわれる時代です。腕時計は見栄を張るためではなく、自分らしさを表現するものとして身につけたいものです。何より、自分の判断基準に自信をもって選べているかどうかが問われます」
自分とは異なるスタイルを持つ腕時計は、むしろ違和感を増幅させるものでしかない。また、身の丈以上の腕時計を二流の闇に転落している者が身につけたとしても、却ってその「見栄張り根性」がバレてしまうものである。
“見せびらかすため、他人の価値観で選ぶ”という姿勢がバレてしまうのが、腕時計だ。”一流”のビジネスパーソンは、自らにふさわしいモデルを選び出し、周りに見せびらかすためではなく、自分の価値観で選んだ時計に“謙虚な自信”をもって、人生の時を刻んでいくのである。