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最近、日本企業のクロスボーダーM&Aでも利用され始めている「表明保証保険」。その魅力について、この保険の手配・仲介業務を手がけるJLT(Jardine Lloyd Thompson)リスク・サービス・ジャパン(以下、JLT)の宍倉浩司氏と五十幡佳美氏、そしてGCAの野々宮律子氏の3氏に語ってもらった。

日本企業のM&Aでも
表明保証保険が急拡大

宍倉 浩司氏

宍倉 浩司

JLTリスク・サービス・ジャパン
エグゼクティブ・バイス・プレジデント

―今、国内市場の縮小に伴い、海外進出を加速する日系企業のM&Aにおいて、「表明保証保険」が注目を集めています。

宍倉 売り手側が表明保証に違反した場合に備える「表明保証保険」は、2005年の発売からしばらくは、保険料率も高く、あまり利用されていませんでした。しかしこの2、3年は、補償能力に限界のある個人オーナーやプライベート・エクイティ(PE)ファンドが売り主となる案件で利用が急増。補償責任を限定したい売り主側と、広範な保証を求める買い手側との間で争点となる表明保証の一部を保険に肩代わりさせることで、顕在化していないリスクへの備えというだけでなく、M&Aの交渉を合意に達しやすくするための戦略的な交渉ツールとしても使われています。

五十幡 特に米国では、一定規模以上の案件の25%程度、北欧や豪州では90%以上と、積極的に活用されています。売り手側による事実隠蔽などの表明保証問題によって日系企業が損害を受けた例から、保険の必要性・有効性が明らかになり、日本企業がクロスボーダーM&Aの際に保険を検討する動きが目立っています。

野々宮 成長途上の企業を経営や資金面でサポートし、育ててから、他の事業会社に売却するPEファンドの活動がグローバルで盛んになっていて、それに伴うM&A案件増加の影響もあるようです。PEファンド保有の企業は持続的な成長戦略をとれること、海外プラットフォームとしてマネジメントしやすい規模であること、大企業から事業分離する際に生じる問題への懸念もないことから、日本企業には取り組みやすいのです。ただ、PEファンドは、収益を投資家に迅速に還元する必要があるため、損害賠償を補償し続ける当事者能力に限界があります。表明保証保険の手配は買い手側がするのが一般的ですが、売り手のPEファンドが保険利用を指定することもあります。

表明保証保険の特殊性に対応するには
専門の仲介業者が不可欠

五十幡 佳美氏

五十幡 佳美

JLTリスク・サービス・ジャパン
マネジャー
スペシャルティ・ビジネス・ディベロップメント

―JLTのような仲介業者が介在する意義は何でしょうか。

野々宮 表明保証保険は、最初に複数の保険会社から見積もりをとって、1社を選定した後、保険の引き受け交渉に入ります。1社に絞った後は他社に乗り換えられないので、複数社が競合していてこちらの立場が強い見積もり段階で、保険料率やカバー範囲などの条件交渉を有利に導かなければなりません。そのため、保険代理店・ブローカーを通じて、多くの保険会社に声をかける必要があるのです。無料だからといって、気軽に見積もりを依頼すべきでないことには留意が必要です。

五十幡 この保険は、代理店・ブローカー抜きでは成り立たないと思っています。たとえばターゲットが米国企業の案件の場合、引き受け候補の保険会社は約20社にのぼります。我々はすべての保険会社に見積もりを依頼したうえで、各保険会社から出された条件を比較し、ディールに最適な保険会社を推奨します。

宍倉 表明保証保険は、引き受け審査の段階で保険会社が新たな免責事由を設定する、いわゆる「後出しじゃんけん」がありえます。それを避けるには、代理店・ブローカーが見積もり段階でディール固有の免責事由や問題点を整理し、最適な保険会社を選定する必要があります。また、保険会社が作成した約款のドラフトを、買い手側に有利になるよう修正する交渉も行います。これは専門知識がなくては非常に困難です。JLTグループのスタッフには、元M&A専門の弁護士や、元保険会社のアンダーライター(引き受け審査の担当者)もいて、高度に専門的な交渉にも適切に対応できます。

野々宮 保険会社との交渉を円滑に進めるには、最初に、案件の性質や想定されるリスクを漏れなく伝えることが重要です。そのため代理店・ブローカーには、グローバルなコミュニケーション能力と、M&Aに対する深い理解を期待します。JLT社は、見積もりを取る際に保険会社側に伝えるべきポイントは何か、適切にアドバイスしてくれるので安心できますね。引き受け審査は、かなり高度な交渉になることもあるので、保険会社やアンダーライターの質問傾向を察知することが大事です。

宍倉 海外M&Aは、ディール・ストラクチャー(合併、株式譲渡などの取引手法)によって、保険証券を発行する国が変わります。表明保証事項が記されるSPA(株式売買契約書)も、国によってそれぞれ異なる法規制、商慣行等の影響を受けるため、現地と緊密に連携できる国際ネットワークが欠かせません。その点でも、JLTのサービスは充実しています(下部コラム参照)。国際ネットワークを生かして、証券がどこで発行されても対応できる体制を整えています。

リスク・プロファイルを明確にして、
案件ごとに適切なリスク管理を

野々宮 律子氏

野々宮 律子

GCA
取締役執行役員COO
マネージングディレクター

―実際に、表明保証保険を利用して気付いたことはありますか。

野々宮 当事者の補償能力を超えた部分の補填という目的の他に、保険会社のリスク評価が保険料率などの数値で可視化されるので、案件のリスク・プロファイルをより明確にできる副次的な効果があります。そこに自社の知見を合わせ、保険をかけるべきリスクと、自社で引き受けるべきリスクを見極めれば、リスク管理強化につながるでしょう。

―表明保証保険は、日本でも利用が拡がっていくのでしょうか。

五十幡 日系損保会社が海外保険会社と組んで表明保証保険を発売してから、国内企業同士のM&Aに使いたい、という問い合わせも増えています。ただ現状では、たとえば日本語のSPAを読めるアンダーライターがいないなど、日系損保会社は引き受け体制が十分に整っていないケースも多くあります。審査は契約締結前の2~3週間にあたり、ディールの最終交渉と並行して進むため、英訳での対応も困難です。日本語のSPAとなる国内企業同士の案件では、実務的に難しいのが現状です。

野々宮 個人オーナーが売り手となる、中小・中堅企業の事業承継に伴うM&Aに表明保証保険が使えるようになれば、と思っています。一定額の補償を伴う表明保証は、モラルハザード防止のために必要ですが、売却金額の大半を預託しなければならなくなるような状況を解決すれば、事業承継M&A市場はもっと活性化するでしょう。正直、初めて表明保証保険を知った時は、「料率が高すぎて、保険をかける意味が分からない」と思いました。ですが今では、使い勝手も良くなり、頻繁に利用されるようになっています。今後は、さらに多様なニーズに対応することを期待しています。

充実のJLT国際ネットワーク

ウィリアム セコム 氏

ウィリアム セコム

JLTスペシャルティ・アジア
マネージングディレクター
JLT M&Aグループ

2016年、世界全体で発行された表明保証保険の証券数は、対前年比60%増となりました。こうした世界的な需要の増加に対応するため、JLTでは、表明保証保険の手配に豊富な知見・経験を有するスタッフを、東京、香港、シンガポール、北京、シドニー、ソウル、ニューヨーク、サンパウロ、ロンドン、ストックホルム、ロッテルダムなど世界17拠点に配置。これらを通じて、日本国外での保険証券の発行が必要な場合などに、国外の保険会社と交渉しています。

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JLTリスク・サービス・ジャパン株式会社

〒106-0032 東京都港区六本木3-16-26 ハリファックスビル4F
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MAIL:enquiries_JP@jltasia.com

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