東洋経済ONLINE Paul Smith

見極めに必要なのはある「つくり」を見ること

生地写真

見事なまでにスーツを着こなす男たち。凛とした美しさや芳醇なダンディズムが漂い、その表情は自信にあふれ、見る者の心を刺激する。特別に誂えたわけでも一際目を引く仕様でもないのに、仕事着として凡庸に着込んだ者たちと明らかに一線を画しているのは、なぜなのだろうか。スーツに使われた生地の良し悪しや細やかなディテール表現、着用する人物の面貌や身体つきといった違いもあるだろう。しかし、最も重要なポイントは、仕立ての良さだ。スーツが着用した人物と一体となり、魅力的な空気を醸し出すこと。そうした効果こそが「スーツを着こなす」秘訣であり、ポール・スミスが常に目指し、実現させているところでもある。

伝統的な英国スーツの中心地であるサヴィルロウのビスポークをベースにしたポール・スミスのスーツは、人体のラインを忠実になぞるブリティッシュスタイルを体現。熟練職人の手仕事により美しく仕立て上げているのだが、そうした仕事が端的に現れているのがラペルロールだろう。下襟の立ち上がり部分のことで、ここがふんわりと折り返されているため自然な立体感が生まれ、胸元にニュアンスを加えている。ラペルロールはジャケットの肝であり、ポール・スミスの技術力やこだわりがはっきりとわかる部分だ。仕立ての良し悪しが現れるもうひとつのポイントは、生地の風合いだ。生地感をナチュラルに表現することと型や耐久性を保つことは一概に二律背反の関係にあるが、パーツごとに毛芯の種類や据え方をアレンジし、生地本来の風合いを最大限に引き出すことに成功している。

生地イラスト1 生地イラスト2 生地イラスト3

技術的な話をすると、ポール・スミスでは表地に芯地を縫い付ける本毛芯と直接接着させる接着芯を組み合わせた「ハーフ毛芯仕立て」を採用している。特に毛芯には天然素材を積極採用してナチュラルな風合いを表現しつつ、高温多湿な日本でも快適に着用できるよう工夫されている。肩先にゆとりを入れ、後身頃の肩幅を前身頃よりも広くパターンメイクした前肩縫製を採用しているのも、日本人に合わせた仕様だ。ラペルには「ハ刺し」と呼ぶ作業を丁寧に行うことで、あの豊かな表現力を手にしている。

スーツの仕立ては毛芯の種類や据え方など、完成時には目に触れない仕事によって決定する。それゆえ、表からは風合いやニュアンスといった感性に訴えかけるものになる。そこに留意すれば、スーツの良し悪しを見極める目が養われていくはずだ。まずは、ポール・スミスという好例からはじめてみてほしい。

つくりの確かさと美しさをあわせ持つスーツたち

モデルカット1 モデルカット2 次へ モデルカット3 戻る

ふんわりとしたラペルロールは高級スーツの証。ボタンホールも手縫いで据え付けられている。

1

上品なチェック柄生地が<br>ラペルロールの美しさを強調する

どのタイプでもラペルのロール感はスーツの顔となるが、このようなチェック生地の場合は特に顕著だ。仕立ての熟練技によって生み出されたロールが格子柄によってさらに強調され、高級感を醸成する。世界最古の毛織物メーカーであるイタリア・カノニコ社のメリノウール・スーパー110'sが用いられ、今季トレンドである杢糸を使用することで深みのある色を表現。同色系で統一した大判のチェック柄が、上品かつ個性的な印象にまとめあげている。

スーツ¥100,000、ベスト¥32,000、ドレスシャツ¥16,000、タイ¥14,000、ベルト¥14,000/ポール・スミス(すべてポール・スミス リミテッド03-3478-5600 税抜価格)

モデルカット1 モデルカット2 次へ モデルカット3 戻る

AMFステッチが洒脱な雰囲気を醸成。スッと直線に引かれたVラインも美しい。

2

こだわりのディテールに英国ブランドらしいセンスが漂う

伝統のブリティッシュスタイルをベースにしつつも、現代的なシルエットを表現しているのがポール・スミスの魅力のひとつ。濃淡の異なる糸から成るピンヘッド組織で奥行きを生んだカノニコ社のメリノウール・スーパー110'sが使われ、幅広いシーンで着用できる。上下の襟をつなぐゴージラインにはしご掛けと呼ばれる伝統技法を駆使したり、襟周りやポケット周りなどにAMFステッチを施したりと、細やかなディテールに満ちているのも、ポール・スミスらしいセンスを感じさせる。

スーツ¥90,000、ドレスシャツ¥26,000、タイ¥12,000、シューズ¥46,000/ポール・スミス、腕時計¥83,000/ポール・スミス ウォッチ (すべてポール・スミス リミテッド03-3478-5600 税抜価格)

モデルカット1 モデルカット2 次へ モデルカット3 戻る

裏地には滑りの良いキュプラ生地を採用。バルーン柄やコントラストカラーに個性を感じさせる。

3

仕立ての技術があってこそ艶めかしい生地感を表現できる

生地本来の風合いをしっかり生かしているのが、ポール・スミスのスーツの魅力だ。生地に使われているのは、年間通じて着用できるロロ・ピアーナ社の「フォーシーズンズ」。ハーフ毛芯仕立てを採用することで、美しいシルエットを構築しつつ、細番手の糸らしい美しい風合いを見事に表現している。表面の細かな毛を焼き切るクリアカット仕上げを施すことで、濡れたような艷やかな質感も表現されており、エレガントなスタイルを実現する。

スーツ¥110,000、ベスト¥34,000、ドレスシャツ¥18,000、タイ¥14,000、ベルト¥18,000/ポール・スミス(すべてポール・スミス リミテッド03-3478-5600 税抜価格)

モデルカット1 モデルカット2 次へ モデルカット3 戻る

パンツのウエストラインには内側に2つのタックを設けたことで、美しいシルエットを保ちながら余裕のある作りになっている。

4

優れた縫製技術で裏打ちされた快適トラベルスーツの最新作

2015年秋冬よりスタートして以来、ブランドの看板となったトラベルスーツ「A SUIT TO TRAVEL IN」からも新作が登場する。織物組織や繊維の段階からズレが起こりにくい設計と加工により、天然素材ながら抜群の防シワ性やシワ回復力、ナチュラルストレッチといった機能を獲得。格別の着心地が人気を博しているが、その前提には前肩縫製をはじめ、体のラインにピッタリと沿わせられる高い技術力があることに疑いの余地はない。

スーツ¥80,000、ドレスシャツ¥26,000、タイ¥12,000、ベルト¥14,000/ポール・スミス (ポール・スミス リミテッド03-3478-5600 税抜価格)

バッグ写真1 バッグ写真2

今なら特製ガーメントバッグがもらえる

10月10日までにポール・スミスのスーツを購入した人に限り、スーツ裏地と同様のコントラストカラーで彩られた特製ガーメントバッグがプレゼントされる。なくなり次第終了。

PaulSmith
INDEX
 2016 Autumn/Winter