スキージャンプとクロスカントリースキーという2つのノルディックスキー競技を組み合わせたノルディック複合は、1990年代、日本のお家芸的な種目であった。そして、その中心選手のひとりに荻原次晴さんがいた。双子の兄、健司さんとともに、荻原兄弟は当時のウィンタースポーツの主役だった、といっても過言ではないだろう。
その次晴さんは、1998年長野オリンピックを最後に現役を引退。現在、スポーツキャスターとして活躍していることは、多くの方がご存知だろう。「実際、その競技を体験してみる」という姿勢で臨む解説は、とてもわかりやすく明快である。
そんな次晴さんが趣味といい、いま最もはまっているのが登山。“次晴「登山部」”を立ち上げ、部長として仲間の先頭に立っている。
「生まれが群馬県の草津で標高1200mの町ですから、山に生まれたということ。それに両親が山好きなので、幼少の頃から関東甲信越のあちこちの山に連れて行かれ、そこから山歩きが始まったんです。でも、競技生活をしているときはなかなか登山に行けませんので、ヨーロッパのアルプスの山々を見ながら、いつかゆっくりと登山をしてみたいな、と思っていました。だから、引退して、あらためて登山を始めました」
山好きな人たちを募ってはじめた“次晴「登山部」”は、仲間に自分の趣味に付き合ってもらっている感覚なのだそうだ。ただ、自然の怖さを知っているからこそ、山とは真剣に向き合っている。部の目標は「日本百名山」を全部登ろうということだ。
「先日、48峰目を終えました。当初は部員を増やそうという目的もあって、初級者向けの山から始めたんですが。もう半分近く登りましたので、今後は険しい山になっていきますね。そろそろアイゼン、ピッケル、ヘルメットなどが必要になってきます」
とっても大変そうなのだが、山がどんどん険しくなって行くという話をする次晴さんの表情は、明るく楽しそうだ。そこで、登山から得られるものって何ですか?と尋ねると「山頂に着いたときの達成感ですかね。天気のいい日に山頂に着いたときの眺めは最高です。あとは下山した後の心地よい疲労感とビールですかね」と。