営業活動における新規顧客の開拓は、業種・業界を問わず全ての企業にとって重要な課題のひとつだ。しかし現実には多くの企業でノウハウの蓄積や共有が充分に行われておらず、それが営業力アップの阻害となっている。営業部門にとって普遍的なテーマとも思える新規顧客開拓だが、いまあらためてその重要性が問われているという。長年、製造業のマーケティング活動を支援してきたシンフォニーマーケティングの丸山直子氏はこう語る。
「日本の製造業で新規顧客を増やしたいというニーズが以前より高まってきたのはここ最近のことです。それまで既存の優良顧客への営業活動だけで十分売上を上げてきた企業も、リーマンショックや3.11を経て既存顧客の拡大が難しくなってきた。新たなお客様を獲得しなければ企業の成長が難しくなったというのが背景にあります。しかしいざ新規を開拓しようにも、企業によってはそういった知見やノウハウがほとんど存在しない。一体どうすればいいのか分からないというのが本音ではないでしょうか」。
またインターネットの普及により誰もが手軽に情報へアクセスできるようになったことも、これまでの営業活動が通用しなくなった一因にあるとマイクロソフトの宇根靖人氏は語る。「以前であれば商品やマーケットに関する専門的な知識、最新の情報を営業マンだけが抱えていたので、お客様にとっても商談すること自体が価値のあることでした。しかし現在はインターネットを活用すれば最新の情報から料金まで、彼ら自身の手によって知ることができるようになった。その結果として、商談して情報を提供するという従来の営業から、新しい付加価値を提供するというスタイルへと営業マンに変革が求められているのです」。
時代の変化に伴って営業活動そのものに求められる要素が変わってきた。それぞれの営業マンには専門性が求められ、それをチームとして最適化することが企業には必要とされている。しかしそれを実現するのは並大抵のことではない。「これまでは『ひきあい』に頼っていたので、顧客リストを使う必要性がなかった。リストを作って情報を統合、データベース化して使っていこうという発想自体を持っていない企業が現在でも多く存在する」(宇根氏)のが実情だ。先にも述べた通り、これからの時代は一人ひとりの営業マンが各々の商品の専門性を持ったプロフェッショナルへと変革する必要がある。しかし顧客の情報が適切に共有されていないと、ある営業マンにとっては宝の山となるニーズが別の営業マンのところで眠ってしまう。そうなってしまえば企業としての機会損失は避けられない。顧客リストをはじめとして、チーム全体で顧客データを共有・見える化することは、これからの営業活動において必須の条件と言えるだろう。
また日本人はマーケティングが苦手という話をよく耳にする。すでに需要のある顧客を刈り取る「狩猟型」の営業活動は得意だが、マーケットを耕していくのは苦手。良いものを作り提供すればものが売れる時代を長く経験した日本の製造業には、長期的な視点で段階的に育てていくという「農耕型」のマーケティングがこれまで発想としてほとんど存在しなかった。では実際にどのような考え方でそういった仕組みを実現すればいいのか。今回用意したスペシャルPDFでは、より詳しくその考え方についてまとめる。マーケティングの活用はもちろん、生産性向上の方法まで解説する。顧客のニーズが日々変化していく現在、顧客情報管理の重要性は今後ますます高まっていくはずだ。