クラウドやアウトソーシング、ビッグデータなど、ビジネスに活用できるITの選択肢が年々増えている。企業におけるIT部門の存在意義が問われていると言えるだろう。むろん、どの企業のIT部門でも、大なり小なり、ビジネス部門への貢献を旗印に掲げているはずだ。だが、実際に、ビジネス部門の期待に十分に応えていると胸を張ることができるIT部門はどれくらいあるだろうか。興味深いデータがある。米国の大手IT関連メディアIDGの調査部門であるIDG Research Serviceが、ビジネス幹部とITリーダーを対象に行った調査だ。その結果を見ると、両者の考え方の間にはいくつかのギャップがあることがわかった。
制作・東洋経済企画広告制作チーム



米国IDG Research Serviceは2013年6月、「ITaaSに関する2つの見解:ITとビジネスが見る世界の相違」を発表した。
同調査は、EMCとVMwareの資金提供により、北米、欧州、アジア太平洋地域にある従業員数1,000人以上のビジネス幹部とITリーダーの計366人に調査を行った結果をまとめたものだ。
「ITaaS(サービスとしてのIT)」とは、ITのさまざまな機能を、その名のとおり、あたかもサービスを利用するように、必要なときに必要なだけ提供するという概念だ。料金(課金)の支払いも、「使った分だけ」といった形になるのが一般的だ。
ITaaSを導入するためには、IT部門の独立採算性化も含め、他の部門と同様に、戦略的な組織運営が不可欠となる。同調査ではこれを「ITをビジネスのように運営する」と表現している。
ビジネス幹部もITリーダーも、このテーマにはともに大きな関心を持っているようだ。「ITをビジネスのように運営するという目標が、自社にとって極めて重要または非常に需要」と答えたビジネス幹部は62%、ITリーダーは70%となっている。
その一方で、「ビジネスとITのアライメント(連携)について、十分または大幅に改善した」と答えたのは、ITリーダーが83%に達しているのに対して、ビジネス幹部は67%と、差があることは注目すべきだ。



最近になって、事業部門がさまざまなソリューションを直接、社外のサービスプロバイダから購入する例も多く見られる。
ITリーダーにとっては、「自社のビジネス部門のニーズを知り尽くしているのは、われわれなのに……」という自負もあるだろう。だが、ビジネス幹部の評価は厳しい。
「(自社のサービスが)外部のサービスプロバイダに劣らない」と答えたのは、ITリーダー63%に対して、ビジネス幹部47%となっている。さらに、「ビジネスが必要としている/求めているサービスについて正確に理解している」と答えたのは、ITリーダー73%に対して、ビジネス幹部53%と、大きな開きが見られる。
厳しい見方をすれば、IT部門が考えているほどには、ビジネス部門の期待に応えることができていないと言える。
同調査の報告書を見ると、その要因もうかがえる。IT/ビジネス間のパートナーシップの効果の向上における障害について、ビジネス幹部は、「ITとLOB(事業部門)の間のコミュニケーション不足」を第一位に挙げている(45%)。



ITaaSを導入することは必ずしも、IT部門が外部のサービスプロバイダと競合することを意味しない。企業によっては、スケールメリットを発揮しながら外部から調達し、ビジネス部門に提供するという形もあるだろう。
むろん、単に「安くて便利」といったご用聞きでは、IT部門の存在価値は高くならない。ビジネス部門の期待に応えるためには、自社のビジネスの将来を見越し、文字どおり経営に貢献するITサービスを提供する必要がある。
調査でも、「将来的なサービスの明確なビジョンを伝える」、「新しいサービスを積極的にビジネスに伝える」、といった項目について、ビジネス幹部がIT部門に不満を持っているという結果になっている。
あなたの企業のIT部門が、ビジネス部門の真のパートナーになるために何が必要なのか。同調査の報告書を見ると、新たな発見があるに違いない。