

WebSphere事業部
第二テクニカル・セールス
横谷 信太郎
「企業における『ビジネス・ルール』は、まさに企業が収益を挙げるためのノウハウにほかなりません」と話すのは、日本IBMの横谷信太郎氏だ。横谷氏は、同社のテクニカル・セールスとして、多くの企業の「ビジネス・ルール管理」を支援している。
ビジネス・ルールとは、企業における業務の基礎となる決まりである。たとえば「ゴールド・メンバー会員である顧客がオンラインで合計1万円以上の買い物をした場合、10%の割引を適用する」といったものだ。
と言うと単純に思えるかもしれないが、実際は、一つの企業内でも管理部門、セールス部門、製造部門など、さまざまな部門に多種多様なビジネス・ルールが存在する。
「『お客様にこの用途を尋ねられたらこの製品を提案する』といったように、どの企業もルールを決めています。その意味では、ビジネス・ルールは日常的に行われる意思決定と言えます」
「ただし、日本の多くの企業が、その意思決定を依然として属人的に行っています」と、横谷氏は指摘する。
どの企業にも、「対応可能な部品がわからなければ○○さんに聞け」と言われるようなベテラン社員がいるのではないだろうか。企業によっては、そのルールを覚えるのが新入社員の最初の仕事というところもある。

むろん、繰り返し行うような意思決定を人間が行う必要があるのかという疑問もある。そのために、多くの企業ではITを活用しルールをシステム化するわけだが、一度つくってしまうと、変更するのに大きな時間とコストがかかるのがネックだった。このため、日常的なルールの変更にも迅速に対応できなかったのである。
「その課題を解決するために、特に米国の企業で幅広く採用されているのが『ビジネス・ルール管理(BRMS)』という考え方です」
「ビジネス・ルール管理」の大きな特長は、システムのアプリケーションとビジネス・ルールを切り離して管理することにある。このため、ビジネス・ルールが変更になった場合には、ルールだけを書き直せばよい。
横谷氏によれば、「ビジネス・ルール管理」は、ルールが多岐にわたる保険会社や金融機関、携帯電話キャリアの料金システムなどで広く活用されているほか、他の業態でも導入が進みつつあるという。

IBMは、米国をはじめ多くの国と地域で「ビジネス・ルール管理」を率先して提案してきたパイオニアであり、この分野におけるリーディングカンパニーだ。
横谷氏に、「ビジネス・ルール管理」導入の際のポイントを聞いた。
「スピーディーな意思決定のためには、IT部門の方だけでなく業務部門の方が自らルールを変更できるほうが便利です。その一方で、複雑多岐にわたるルールを全社的な視点で管理することも大切です。IBMではこれらを実現するとともに、導入・運用が容易な『ODM』というツールも提供しています」
「ODM」は「オペレーショナル・ディシジョン・マネージメント」の略である。同ツールを活用すれば、単にビジネス・ルールの自動化だけでなく、数千、数万のルール重複や矛盾のチェック、グループ化などが容易にできるようになっているという。同ツールを活用すれば、ルールの変更が簡単にできる点に特に注目したい。業務部門ではプログラミング言語を使わなくても、慣れ親しんだワープロソフトや表計算ソフトを使って作られたフォーマットに日本語で文章を作成するだけで、ルールの変更ができるというから驚く。
「ツールを導入するだけでなく、まずは、自社内にどのようなルールがあるのか『見える化』することが大切です。そのことにより、自社の強みや弱みも見えてきます。そのために当社では、導入前のコンサルティングにも力を入れています」と横谷氏は話す。

