主要企業のCIOは、技術スキルに不安を抱える一方で、役割への変化に手応え

 英エコノミスト・インテリジェンス・ユニット(The Economist Intelligence Unit=EIU)は昨年5月から6月にかけて、EMCによる協賛の下、「戦略的CIO:新たな役割がもたらすリスク・機会そして変革」と名付けられたアンケート調査を実施した。調査対象となったのは年間売上高5億ドル以上のグローバル企業のCIOで、156人が回答に応じたという。
 昨年末に同調査の報告書が発行されたが、その内容からうかがえるのは、グローバルに成長する企業のITプロフェッショナルとして活躍しながらも、課題に直面し悩むCIOたちの声だ。たとえば「ビジネス目標に即したテクノロジーの利用におけるCIOの課題は何であると考えますか?」という問いの答えの第1位は「不十分な技術スキル」(38%:複数回答可)となっている。
 ビッグデータ分析、クラウド、モバイル対応、ソーシャルネットワークなどのキーワードに示されるように、IT技術が急速に進化している。これらを推進する能力に不安を感じているCIOも多いようだ。ただし、その反面、これらの変化を好機と感じているCIOも少なくない。「戦略的リーダーとしてのCIOの役割はどのように変わりましたか?」という問いに対し、「革新的な変化をもたらす良い立場にいる」と答えたCIOは、3年前には26%にすぎなかったが、今回は49%と大幅にその割合が増えているのだ。主要企業のCIOが、役割の変化に手応えを感じていることがわかる。

企業を成長に導くために「業務遂行型CIO」から「戦略的CIO」へ

 かつて、企業におけるCIOの役割は、どちらかと言えばITサービスの提供役といったところだった。だが、それもここ数年で様変わりしつつある。前述した「戦略的リーダーとしてのCIOの役割」について、「ITサービスの提供のみを担当する」と答えた割合は、3年前には33%だったが、今回は26%となった。CIOはCEOやCFEなどほかの経営メンバーと同様に、企業を成長に導くための責任を負う存在になっているのである。
 その要因はどこにあるのか。特筆すべきは企業に求められるスピードがますます速くなっていることであろう。顧客のニーズに迅速に応えるためには意思決定のスピードを速くすることが重要だ。そのためにはITの活用が不可欠になる。ビッグデータ分析やモバイル対応は、あくまでも手段であり目的ではない。CIOとして大切なのは、テクノロジーの専門家である前に、まずは経営リーダーであることなのだ。「業務遂行型CIO」から「戦略的CIO」に変わることが求められるのである。

CEOと密接に連携し、テクノロジー面からアドバイスを行い革新的な変化を起こす

 これからは、CIOがより戦略的に行動できる企業ほど、成長が実現できるに違いない。むろん、そのためにはCEOをはじめ、ほかの経営者の理解やチームワークも必須になる。
 予算の80%が既存のITインフラの維持に使われ、20%しか新たな投資に使えない「80-20の法則」に陥っている企業や、「ITは投資ではなくコスト」と語るCEOの下では変革を起こすのは容易ではない。さらに、組織の壁や、本社と事業部門との壁もある。調査の報告書を見ると、アンケートに回答したCIOたちは、それらの課題についても、解決に向けたさまざまな取り組みを進めているようだ。CIOに求められるスキルについても、めいめいが言及している。「戦略的CIO」を目指す人にとっても、ITを活用し強い組織をつくりたいと考えるCEOにとっても、同報告書は大いに参考になりそうだ。