国が実施「探究・校務改革支援」
経済産業省が実施している地域未来人材育成支援民間サービス等利活用促進事業費補助金、いわゆる「探究・校務改革支援補助金2025」。本補助金の概要は、 探究・校務改革支援サービスを提供する事業者に対し、事業費等に要する経費の一部を補助することにより、学校等教育機関は、事業者が提供するサービスを、一定期間無償で導入することができるというものである。
申請から採択までの具体的な流れとしては、民間事業者側がサービス内容を申請し、審査を経た後、 本事業の対象サービスとして登録される。その登録されたサービスについて学校等教育機関が導入を希望すれば、審査の後、導入にかかる経費について補助されるというスキームだ。
経済産業省では、民間の探究・校務改革支援事業者に対し、経費を一部負担することを通じて、サービスの導入先である全国の小学校・中学校・高等学校等教育機関の探究・校務改革を支援していくという狙いがある。補助の対象となるのは、探究的な学びの高度化に資するサービスと教職員の業務効率化・省力化を支援するサービスである。
この「探究・校務改革支援補助金2025」の趣旨について、経済産業省 商務情報政策局 商務・サービスグループ サービス政策課教育産業室 企画官の柳橋幸裕氏は次のように語る。

商務情報政策局 商務・サービスグループ サービス政策課 教育産業室 企画官
柳橋幸裕氏
「人口減少や少子高齢化が進む中、多様な学びの選択肢が用意された環境を整備することで、地域の未来を担う子どもたちの可能性を最大限に引き出し、自主性や新たな価値を生み出す人材を育成していくことが非常に重要であると考えています。また、日本の教職員は他国と比較して非常に多忙であり、民間サービスを活用し、現在教職員が担っている校務の効率化や省力化を図っていくことが必要不可欠だと認識しています。本事業では民間事業者が提供しているサービスについて、学校側は実質的な負担なしで体験できるということが大きな特徴となっています」
深化する探究学習と、教育現場にかかる負担
実際、教育現場ではさまざまな課題が山積している。とくに探究的な学びの高度化、そして、教職員の業務効率化・省力化について、経済産業省はどのように課題を認識しているのか。まず探究的な学びの課題について柳橋氏はこう語る。
「探究学習については、教職員の皆様方の創意工夫によって、いっそう深化していると捉えています。しかし、子どもたちの探究テーマは非常に多岐にわたっており、個々の教職員がそれぞれの子どもたちの考えるテーマに対し、個別最適なサポートを行うのは限界があるだろうと考えています。一方で、総合的な学習(探究)の時間に限らず、各教科等の学習においても探究的な学びをサポートするため、さまざまな民間教育サービスが続々とリリースされています。そこで事業者に対して経費の一部を補助することで、教育現場でも民間教育サービスを活用していただきたいと考えています」
確かに子どもたち1人ひとりの探究テーマに対し、1人の教職員が対応するには専門的にも限界があるだろう。そのため、例えば探究学習に特化した生成AIを活用して、課題設定、情報収集、整理分析など「教職員が効果的なファシリテートを行っていけるようサポートする、新たな観点の提供や論拠の補強の提案が可能になるような民間教育サービスを活用してほしい」(柳橋氏)という。
一方、教職員の業務効率化・省力化の課題についてはどうか。柳橋氏が続ける。
「現在、日本の子どもたちは世界トップレベルの学力を有しており、その全人的な教育も国際的に高く評価されています。まさに教職員の皆様の献身的な努力の賜物だと捉えています。ただ、それが教職員の多忙さにもつながっています。そもそも学校には教職員自身が自分たちだけで教育していくという、いわば自前主義が文化的にも慣習的にも残っています。そのため、民間サービスの活用にもなかなか踏み出せませんでした。しかし、ICT技術がますます発展していく中で、校務の課題についても民間教育サービスを活用して、課題を解決してほしいと考えているのです」
こうした課題感の下に生まれた「探究・校務改革支援補助金2025」。今年度の補助金の交付については3~5月にかけて登録、審査があり、5月上旬から交付が始まっている。今年度の受け付けは締め切られているが、今後のために民間事業者のサービスについて情報収集を行うことをお勧めしたい。
「探究・校務改革支援サービス体験会」で得られるもの
経済産業省では、今後教職員や教育関係者、民間事業者、教職員志望の学生など幅広い関係者を対象とした「探究・校務改革支援サービス体験会」の開催を予定している。いわば、学校で活用できる民間教育サービスを体験できるイベントとなっており、教育関係者が参加しやすい7~8月の夏季休業期間中に全国5カ所で実施される。

「現場の先生方をはじめ、教育関係者の方が、民間事業者が提供する支援サービス内容をよく理解できる機会となっています。昨年も同様のイベントが開催され、多くの方々に参加いただきました。中には探究学習について地域と企業との交流促進をコーディネートしたり、校務でもAIによる自動採点システムや時間割作成といった校務の省力化につながるサービスを提供している民間事業者もいらっしゃいました。イベントに参加した方同士の交流も盛んになっており、普段接点のない方と、横のつながりを持つことで得られるものも非常に大きいと考えています」(柳橋氏)

このほかにも、経済産業省では毎年、さまざまなテーマで学校等教育機関を支援する取り組みを行っている。本事業に関する情報は、「探究・校務改革支援補助金2025」のホームページ上で公開されており、情報も随時更新中だ。今後の動向や補助金の詳細についても、ぜひチェックしてほしい。柳橋氏もこう述べる。
「民間の教育サービスをいきなり導入するのは学校側でもハードルが高いはずです。導入するにはテスト期間も必要。本事業はその補助金であると考えていただければと思っています。この補助金でより広く民間の教育サービスを体験していただきたい。そのためにもぜひ『探究・校務改革支援サービス体験会』に参加して、情報収集してほしいと考えています」

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