シュタイナー教育やモンテッソーリ教育など、海外の教育手法を取り入れた保育園や幼稚園が関心を集めている。海外では、こうした公教育とは異なる教育を取り入れて運営されているオルタナティブスクールが、小学校以上の学齢の学校種にも普及しているという。日本におけるオルタナティブ教育の認知度はまだまだ低いが、「オルタナティブスクールが広がることが、教育に関わる多くの人たちにとって幸せな世界になる」と話すヒロック初等部・校長の蓑手章吾氏に、その理由と課題について解説してもらった。

世界的に見ても珍しい「公立小学校がほぼすべて」という日本

前回の記事でも触れましたが、私たちが「小学校教育」と聞いて思い浮かべるイメージはほとんど一緒だと思います。それもそのはず、文部科学省の令和3年度学校基本調査によると、日本の小学生の98.1%は公立小学校に通っていて、全国のどこでも同じような教育が行われるように整備されているのです。

当然、私たち親世代の98.1%(あるいはそれ以上)は日本の公立小学校しか経験していないはず。そうなると、「小学校といえば」というあるあるネタが「疑いようのない常識」として共有されているのです。ちなみに、海外に目を向けてみると、米国や中国ではおよそ10%、フランスに至っては15%近くの小学生が公立学校以外の教育を受けています。このように、公立小学校がほぼすべてという国は、世界的に見ても珍しいかもしれません。

さらに今の時代でいうと、私たち親世代が小学生だった時代と比べて、より公立小学校が均質化してきています。社会や保護者のニーズが多様化するにつれ、「全国どこでも同じ質の教育を受けられるようにするべき」という平等的観点から、学校現場では地域や学校全体で授業やルールの統一化を図る「〇〇スタンダード」と呼ばれるものが敷かれるようになりました。情報化などの背景もあり、一昔前まで存在していた「名物先生」や「独自ルール」のようなものはほとんど見られなくなりました。

それに伴うかのように、不登校児の数も年々増加していることは周知の事実かと思います。文科省の調査では、不登校を「年間30日以上の欠席」という定義から算出して1.0%としていますが、日本財団の調査では「年間30日以上は欠席していないが、不登校の傾向にある小学生」は14.4%に上ると報告しています。小学生の7人に1人が不登校傾向にある、というのが日本の教育の現状なのです。

こちらも海外に視野を広げてみると、不登校という概念が存在しない国が多いようです。「学校に行けなくなる」という現象は同じようにあるそうですが、そこで選択できる学校が多様だったり、家で学ぶ「ホームスクーリング」という学び方が認められている国も多くあります。そう考えると、文科省が不登校を「問題行動」と並列しているあたりに、国民の意識や文化的な認識の違いが表れているようにも感じられてきます。

日本でも注目されるオルタナティブ教育とは

そんな中、日本でも注目されるようになってきたのがオルタナティブ教育です。主にはシュタイナー教育やモンテッソーリ教育など、欧米の教育思想を取り入れて実践している保育園・幼稚園が増え、日本でも脚光を浴びるようになりました。