保護者との双方に負担のない情報共有

聖徳大学附属取手聖徳女子中学校・高等学校
2022年度 後援会会長 根本 宏美 氏

「学校との距離が確実に縮まりました。とても便利で、もう元には戻れません」

取手聖徳のPTAである後援会の会長、根本宏美氏が話すのは、2022年度からスタートした先生と保護者が参加するTeamsの「保護者チーム」のことだ。意外と知られていないが、学校のTeamsには保護者も無償で参加することができる。そうすると何が変わるのか。根本氏はまず「手紙」を挙げた。

「子どもはなかなか学校からのお手紙を出してくれません。でも、保護者チームに先生がアップすれば見られるので、子どもにいちいち催促しなくても済みます。『いいね』を押せば確認したことが先生に伝わるのもいいですね。紙だと過去のものを取っておく必要があり、見返すのも大変でしたし、なくしてしまうおそれもありましたが、そうした心配も無用になりました」(根本氏)

実は同校の場合、保護者とのチャットなどを通じた双方向の連絡ができない設定にしている。根本氏ら後援会からさまざまな問い合わせが来て「先生の負担を増やしたくない」との希望があったからだが、それでも情報共有のスピードと質は比べものにならないほど上がった。

その一例が校外学習だ。以前は学校サイトにひも付けたブログにアップしていたが、保護者チームに切り替えたことで更新頻度だけでなく写真や動画の点数が大幅に増加。「子どもの様子がわかるのがうれしくて、何度も何度もチェックしてしまう」と根本氏が打ち明けるほど、保護者の関心も高まっている。しかも、コンテンツが充実したのに、教員の負担は逆に減ったというから驚きだ。

保護者チームでの校外学習についての発信。写真だけでなく、子どもたちの様子がわかる動画もたくさんあげられている。保護者にしか見られない設定になっているので安心だ

「アクセスできる人が限られている環境にあるからこそ、更新頻度や写真・動画の点数を増やせるようになりました。ブログは公開すると誰もが見られますから、プライバシーに配慮して写真をしっかり編集する必要がありました。夜遅くまでかかることもしばしばありましたが、保護者チームでは撮影したままアップできます。ログインして写真を埋め込んで……と手間のかかるブログと違って操作も非常に簡単ですし、保護者の方からも好評なので、学校としてとくに推進しているわけではないのですが、どの先生も積極的に更新するようになりました」(ICT教育推進部 増田瑞綺氏)

聖徳大学附属取手聖徳女子中学校・高等学校
ICT教育推進部 増田 瑞綺 氏

登下校の安全見守りからスムーズな出欠連絡まで

保護者がTeamsに参加したことは、子どもたちの学習だけでなく、安全も見守れるようになった。「想定外だった」と教員も保護者も口をそろえるのが、スクールバスをめぐる変化だ。

同校は、駅から離れた場所にあるため近隣10駅から専用スクールバスを運行。朝はどうしても道路が混むため、遅れが出たときは学校からメール配信システムを用いて保護者と生徒に情報提供をしていた。しかし、情報が一方通行のため、少しの誤差や現場で起きたアクシデントが伝わりにくいのが難点だった。

聖徳大学附属取手聖徳女子中学校・高等学校
礼法科主任 総務部副部長 井出 徹 氏

「Teamsに切り替えたことで、その問題が解消されました。生徒がリアルタイムの情報を伝えてくれるので、どのスクールバスがどのくらい遅れているか把握しやすくなったのです。不測の事態が発生したときも、電話と違って学校や保護者の誰かに伝わりやすいので、すぐ書き込むよう指導しています」(礼法科主任 総務部副部長 井出徹氏)

電話と違って待機する必要がないのに、リアルタイムに伝わる。従来にはなかったこの利便性は、同校の出欠連絡のあり方までも変えた。

「以前は、保護者から遅刻や欠席の連絡を受けるため、勤務時間の30分前に早出をする電話当番がありました。2018年4月にTeamsを全校導入したときに、Microsoft Formsで作成した出欠管理アプリと連携させたため電話当番はなくなったのですが、保護者とはTeamsでつながっていなかったので、入力フォームにアクセスできるQRコードを紙で印刷して配布していたのです。紛失したり連絡が取れなかったりする方が一定数いたのですが、今は直接アクセスできるようになったので、そういう方は激減しました」(増田氏)

情報共有をスムーズにすることで教員と保護者双方の負担を大幅に削減したTeamsだが、気になるのは導入時の保護者への周知やサポートである。取手聖徳ではアプリのインストールやユーザーアカウントの作成でつまずく人もいたが、在校生には保護者をサポートするよう依頼し、新入生の保護者にはマニュアルを事前配布したうえで、入学式など保護者が必ず来校するタイミングで集中的なサポートを実施した。結果、個別対応をわずか10件程度にとどめ、その後のトラブルもほとんどないという。

子どもが使っているTeamsを職場でも試し、よさを実感。保護者での利用へ

興味深いのは、この大きな変化のきっかけをつくったのが保護者だということだ。2021年度の後援会会長だった寺田明子氏は次のように話す。

聖徳大学附属取手聖徳女子中学校・高等学校
2021年度 後援会会長 寺田 明子 氏

「後援会の役員は、メッセージアプリで連絡を取り合っていました。でも、学校からの連絡を全員に伝え、返事を取りまとめて再び学校に報告するのがかなり大変でした。他の保護者からすぐに返事が来るとは限りませんし、一人ひとり確認するのも手間がかかるからです。それなら、学校で便利に使っているTeamsをまずは後援会の役員だけででも使わせてもらえないかと思ったのです」(寺田氏)

寺田氏の頭にこの方法が浮かんだのは、子どもが生き生きと学校生活を過ごしていたことと無関係ではないようだ。「高校から入学した娘は、小中学校時代と違って学校の話をたくさんするようになりました。この学校ではいろんな生徒や先生と関わりやすい空気があって、前に出るタイプではなかったのにクラス役員や生徒会活動も積極的に挑戦するように変わっていきました」と振り返る。そんな中で、家でもTeamsの絵文字やアプリを使って楽しそうに連絡を取っていたという。

このことをきっかけに寺田氏も自身の職場にTeamsを紹介した。職場で使うことによって利便性の高さを知ったことが、異例の提案につながった。学校側も、それを前向きに受け止め導入に踏み切った。

「保護者への連絡手段としてメール配信システムがありましたが、文字数が限られているうえ、文書や画像の添付もできませんでした。かなりの費用がかかっていたので、保護者が参加しても追加負担のかからないTeamsを試す価値があると思いました」(増田氏)

結果、懸念された保護者の反対や抵抗はなく、便利さが喜ばれているのは前述のとおり。学校側も、大量のプリントを用意する手間とコストが削減できたうえ、わざわざ伝達事項を生徒に強調して伝える必要もなくなるなど、負担が大幅に減った。それによって生まれた余裕は、間違いなくプラスに作用しているようだ。

生き生きと学ぶ子どもに「ワンチーム」で寄り添う

「今までは学校に行ったときに担任の先生と話すぐらいでした。この学校では担任以外にも授業を担当している教科の先生、他のクラスや学年の先生までも子どもの様子を話してくれます。こんなにもたくさんの先生が見てくれているのだと保護者としても安心感につながります。」(寺田氏)

保護者からこう言った声が出るためには、日常的に生徒の情報を学年や教科を超えて共有することが必要である。Teamsが教員間の情報共有において重要な役割を占めているのは言うまでもない。しかし、それだけではないと井出氏は語る。

「この学校ではさまざまな人が協働しやすい『空気』を大切にしています。誰かを蹴落とすのではなく、挑戦する人を支援するチームであり続けることはわれわれの大切な願いです。そして大きな変化の時代を迎えた今、取手聖徳は『学び屋さん』を育てることをキーワードにしています。生徒の主体性と協働性を伸ばし、『学びたいときに学べる環境』を整え、保護者のみなさまと一体になって見守るのに、Teamsは大きく役立つと確信しています」(井出氏)

有識者からの一言
職員室に全教員の机が配置されている小学校と異なり、高校は教科ごとの研究室が教員のベースであることが多く、同一教科の先生同士と比較し、全教員が顔を合わせる機会は随分と少なくなってしまいます。また、高校のPTAは小学校ほどの密な活動が少なく、保護者同士のコミュニケーションも比較的少ないのが一般的です。
しかし、取手聖徳ではバーチャル空間であるTeams がそのような物理的な状況を一変し、結果としてワンチームが構成されたということのようですね。(信州大学名誉教授 東原義訓氏)

教員の仕事は多様化しており、多忙な状況から教員同士の連携は緊密とは言いがたい。保護者との連携においても、保護者と学校双方の負担は問題になっている。ましてや、教員と保護者の「ワンチーム化」を実現するのは想像以上に困難だ。取手聖徳のように、教員と子ども、保護者の三者が無理なく円滑なコミュニケーションを取れているのは希有なケースだといえよう。

2022年度から高校でも「総合的な探究の時間」がスタート。大学入試においても従来のペーパーテストだけでは測ることのできない探究の要素を課すようになっている。探究型学習に必要な「主体的・対話的で深い学び」を促すには、取手聖徳のような「ワンチーム」体制で情報共有をし、子どもたちに寄り添うのが有効なのは言うまでもない。無理なくそうした状況を生み出したICTが果たすべき役割は、今後さらに大きくなっていくだろう。取手聖徳の取り組みは、そのロールモデルとして注目するに値するのではないだろうか。

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