さまざまなICTツールが使われる時代において、どんなふうにそれをフル活用すればいいのかって難しいですよね。

僕も、一昨年に学校が休校になってから現在に至るまで、いろんなツールを使ってきました。遠隔地からZoomなどを使って生徒に授業や講演を行うことも、今年に入ってから50件以上やらせていただいております。そんな中で試行錯誤をして、ICTツールを活用した授業として「こんなやり方があるんだ」というのが見えてきたので、今回は皆様にそれらの一部を共有したいと思います。

西岡 壱誠(にしおか・いっせい)
現役東大生。1996年生まれ。偏差値35から東大を目指し、オリジナルの勉強法を開発。崖っぷちの状況で開発した「思考法」「読書術」「作文術」で偏差値70、東大模試で全国4位になり、2浪の末、東大合格を果たす。そのノウハウを全国の学生や学校の教師たちに伝えるため、2020年に株式会社「カルペ・ディエム」を設立。全国5つの高校で高校生に思考法・勉強法を教えているほか、教師には指導法のコンサルティングを行っている。また、YouTubeチャンネル「スマホ学園」を運営、約1万人の登録者に勉強の楽しさを伝えている。著書『東大読書』『東大作文』『東大思考』(いずれも東洋経済新報社)はシリーズ累計38万部のベストセラーとなっている
(撮影:尾形文繁)

「Googleフォーム」や「Slido」のいいところ

まずICTツールのいいところは、その場でいろんな意見を吸い上げることができるということです。

例えば、何か生徒に考えてほしいときに、「Googleフォーム」でちょっとしたアンケートを作れば、生徒たち一人ひとりの意見を吸い上げることができます。最近、僕は長崎県の創成館高等学校の生徒に対して、東京からオンラインで講演をしたのですが、「この問題の答えを書いてください!」というのをGoogleフォームで回答してもらいました。その回答を受けて、次の講演で「こんな感想があるね」と話をしたりしました。

「Googleフォーム」の実際の画面(資料提供:西岡氏)

「それって紙でも同じことができるんじゃないの?」と思うかもしれませんが、ここからがICTのよいところで、それを教室の前方に投影して見せれば「こんな回答をしている人がいるね」「これすごい回答だね!」とアンケート結果をすぐに紹介できるのです。これって紙ではなかなかできないですよね。

また、「ロイロノート・スクール」を使えば、生徒に回答を書いてもらっている最中に、先生も生徒も全員の内容をリアルタイムでチェックできます。これをすると、「へえ、A君はこんな回答を作ったのかー」というのがクラス全員で見られるわけですね。

学んだことを一人で完結させない「学びのシェア」

僕らがほかに使っているツールとしては、「Slido」というものがあります。

これは簡易的なLINEグループみたいなもので、生徒一人ひとりが部屋に入ると、その中で先生がいろんな問いを出すことができます。

アンケートを出して投票してもらって、それを教室の前方に投影して、「〇〇を選んだ人は40%でした」みたいなことができますし、質疑応答として生徒に質問を出してもらったうえで、「どの質問がいい質問か」を生徒に投票してもらうということもできるようになります。

これらのツールを使えば、その場で一人ひとりが回答でき、投影されたものを見て「この回答いいね!」と水平比較をしていくことが可能になります。そしてこれを使うときに、多様な回答がありうるような質問を投げると生徒が盛り上がります。

例えば、英作文の問題だったり、社会の考えさせられるような問題であれば、もっとこの「ほかの人がどう考えているのかがわかる」というのは面白くなるはずです。

これを、「学びのシェア」と僕は呼んでいます。学んだことを一人で完結させるのではなく、多くの人の考えをインストールしたり、また自分の意見を多くの人にアウトプットしたり……。

そうやって学びをシェアしていくと、それによって学習効果が上がり、勉強の成績が上がるというわけですね。

東大合格者が多い高校では、これが当たり前に行われています。勉強を教え合ったり、「この前のこの問題、こういう解答作ったんだ〜」と問題で遊び合ったりしているから、勉強が苦にならずに楽しんで成績を上げることができるわけです。

とくに、岡山県の蒼明学院中等部・岡山龍谷高等学校の中学2年生の生徒さんと高校2年生の生徒さんに出題したときには、果敢に挑戦してくれて、こんなにいろんな解答をもらうことができました。

「Slido」の実際の画面(資料提供:西岡氏)

これらは解答が多様で、みんないろんな解答をします。だからこそ「お、あいつはこんな解答をしたのか」ということが楽しいわけです。

ICTツールはこんなふうに「学びのシェア」をしてみるのに使ってみてはいかがでしょうか?

(注記のない写真:ふじよ / PIXTA)