子どもたち同士が教え合い学び合いながら動画を作るよさ

現代の子どもたちにとって動画を見たり、作ったりすることは、今や日常だ。とくに教えなくても、子どもたちは自分でどんどん調べて、先生があっと驚くような動画を作ってしまうこともある。そんな動画作りは、子どもたちの興味関心が高いこともあって、グループで取り組むことで協働的な学びを自然な形で実現できるのが魅力だ。

何を撮影するか、どんな構成にするのかなど、子どもたち同士が教え合い学び合いながら、限られたスケジュールの中で役割分担をして1つのアウトプットを作る。それは、まさに協働的な学びの実践といえるのではないだろうか。ここでは入門編として、学校現場で映像制作を取り入れた授業の提案、アドバイスを行う映画監督の山﨑達璽氏から「クラス紹介動画」を作ることを目標とした学習指導案を紹介してもらう。

山﨑達璽(やまざき・たつじ)
日本大学藝術学部映画学科監督コース卒。芸術学修士。1999年、大学の卒業制作『夢二人形』がカンヌ映画祭にノミネートされ、映画監督デビュー。2008年、新感覚時代劇『宮城野』(出演:毬谷友子・片岡愛之助・國村隼・樹木希林ら)を発表。その後、映画だけでなく企業広告映像やミュージックビデオに加え、教員向け動画コンテンツの制作などにも活躍の幅を広げ、2015年から4年にわたって150コマ近くのアクティブラーニングに取り組んでいる教員の授業を取材。現在は、映像専門学校の講師を務めるほか、ぐんま国際アカデミーやドルトン東京学園など学校現場で映像制作を取り入れた授業の提案、アドバイスを行う。著書に『探究活動ではじめる動画・映像制作 ~映画監督がひもとく 1人1台タブレット時代の新しい学び~』(Kindle版)がある

概要は、3人1組のグループをつくり、それぞれのインタビュー動画を撮影し、グループを紹介する動画に編集。さらに、それらをつなげて1本の「クラス紹介動画」にまとめ上げることを目指す。

狙いは、端末を使ったごく簡単な動画作りを通じて、撮影から編集への作業フローをイメージし、カメラや動画編集アプリの基本的な使い方を身に付けること、また計画的なものづくりができるようになることだ。

「グループ紹介動画を作ろう」

1回目 撮影の基礎〈インタビュー撮影〉
内容:出演者、インタビュアー、撮影者の3人1組で、1人ずつインタビュー動画を撮影する。ニックネーム、趣味、好きな食べ物や音楽などの質問をして、カメラに向かって答える。時間は約1分。
ゴール:適切な構図での撮影ができる。質問をする側と受ける側を体験して、インタビュー撮影ができる。

ここでまず注意したいのは、出演者とカメラ、インタビュアーの配置だ。出演者はカメラに向かって話し、インタビュアーを見ない。インタビュアー自身は画面には映さない。

カメラは横向き。YouTubeなど多くの映像媒体はテレビと同じ横長の画面で、私たちの視界も横長なのでカメラは横向きに構えるのがポイントだ。カメラの位置は下からあおったり、上から見下ろしたりすると極端に表情の印象が変わるため、出演者の目線の高さに合わせる。もちろん、カメラ付きのタブレットやパソコンでの撮影もOK。その際も目線や高さには注意したい。

人物の大きさはバストショット。表情や服の雰囲気、背景などをバランスよく見せるため、頭の上から胸ぐらいの位置で切り取るとよい。

2回目 編集の基礎〈グループ紹介動画に編集する〉
内容:iMovieなど動画編集アプリを使って、3人分の撮影素材を「カット編集」でつないで1本の動画にする。つなぎ目の切り替わり方には「トランジション」を入れて工夫をする。
ゴール:作業の流れを理解し、基礎的な編集ができる。

グループ紹介動画の完成イメージは、以下のサンプル動画を参考にしてほしい。3人分の撮影素材をつなげて、1本の動画に仕上げることを目指す。

実際のiMovieを使った編集手順は、以下のとおりだ。機種やアプリのバージョンによって画面や表示位置、操作手順に多少の相違がある。

1. プロジェクトの作成
iMovie を立ち上げると、最初の画面「プロジェクト」に「+」ボタンが表示されるので、これをタップ(あるいはクリック、以下同)する。

「新規プロジェクト」が立ち上がるので「ムービー」を選択。

2. 撮影素材(動画データ)の読み込み
撮影素材を読み込む画面が表示されるので、使いたいものにチェックを入れて選択していく(撮影素材や画像は後から追加することもできる)。画面下の「ムービーを作成」をタップ。ここから、撮影素材は編集のための「クリップ」となる。

3. クリップをタイムラインに並べる

中央の再生ボタンを押すと、タイムラインが再生される。

タイムライン部分の好きな所をタップしたまま左右に動かすことで、再生位置を移動できる。

4. カット編集
ここから、クリップをそれぞれ加工して「カット編集」を行っていく。

まず、加工をしたいクリップを選択して、黄色い枠が付いた編集が可能な状態にする。長さを変えるには、クリップの枠の両端の太くなった部分をタップしたまま動かす。分割するには、画面下部のメニューの「アクション」をタップし、サブメニューから「分割」をタップする。

順番を入れ替えるには、クリップの中心をタップしたまま、ほかのクリップの前後に持っていく。

5. トランジションを追加する
クリップ同士の「つなぎ目」の切り替わり方を設定する。

タイムラインの「▷◁」がトランジションのアイコンで、配置されたクリップには自動的に「ディゾルブ」が追加されている。

ほかの切り替わり方に変えたいときは、トランジションのアイコンをタップし、下部のメニューから好きなものを選択する。

6. 書き出し
一通り編集が終わったら、全体を再生しながら確認し、問題なければ、画面左上にある「完了」をタップ。

画面下の「↑」ボタンをタップし、メニューの「ビデオを保存」をタップすると書き出される。

「クラス紹介動画を作ろう」

3回目 構成〈クラス紹介動画の構成を作る〉
内容:グループ紹介動画をつないで10分のクラス紹介動画にまとめる設計をする。10分に縮めるにはどう取捨選択するか、さらに、どんなオープニングの見せ方をするかを話し合い、その「構成」を書面にする。
ゴール:完成形を想定して、何をどのように見せたいかの設計ができる。作業の優先順位を考えられる。

あくまで第三者に見せることを意識し、決められた長さに合わせて内容を構成することが大切だ。また「オープニング」の見せ方も考えてみよう。クラスの雰囲気が伝わる「イメージカット」を撮影して、10~30秒程度にまとめ、さらに題名やBGMをつける。

イメージカットは、校舎や校庭などの外観、廊下や階段や教室の様子の情景、クラスで作った小物、集合写真など。授業の様子を再現してみるのも面白い。ただ、あれもこれもとなるとキリがないので、欲しい素材の優先順位をつけて、撮影の段取りも考えておくことがポイントだ。

4回目 撮影の応用〈イメージカットの撮影〉
内容:構成に沿って、オープニングに使うイメージカットの撮影をする。
ゴール:素材が十分に集まっている。あらかじめ構成を設計することで、撮影の効率化につながることを理解している。

素材集めを工夫する。イメージカットの撮影は使い慣れたスマホを使っても問題ない。数秒単位しか使わないため、多少ラフな撮影になってしまってもそれがリアリティーに見える。また、集合写真や絵画などの資料はスキャンした画像データでもOK。

5回目 編集の応用〈クラス紹介動画に編集する〉
内容:構成に沿って、グループ紹介動画を短くつないだうえでオープニングを作り、10分の作品に編集する。
ゴール:テロップやBGMをつけるなどの編集の応用技術が身に付いている。あらかじめ構成を設計することで、編集の効率化につながることを理解している。よりハイレベルな編集技術を主体的に学びたくなっている。

オープニングに「題名」、各自のインタビューの始めに「名前(ニックネーム)」などテロップをつける(iMovieでは、テロップは「タイトル」と表記される)。テロップの挿入の仕方は、以下のとおりだ。

まずテロップを挿入したいクリップをタップ、メニューから「タイトル」をタップすると、デザイン一覧が表示されるので好みのものを選ぶ。

画面に表示された「タイトルを入力」をタップしたまま動かすと文字の位置を調整できる。「タイトルを入力」をタップするとメニューが表示され、「編集」をタップすると文字が入力できるようになる。

さらにプリセットのフリー音源から、オープニングのBGMを設定してみよう。

画面のいちばん右上にある「+」ボタンをタップ。「オーディオ」をタップし、そこから「サウンドトラック」をタップする。

利用できる音源が表示されるので、好みのBGMを見つける。気に入った音源をタップして選択し、右側の「+」マークをタップするとタイムラインに追加される。

タイムラインのオーディオの部分をタップすると、長さや音量を調節することができる。

オープニングから1つ目のグループ紹介までになるが、下記の動画を見るとイメージしやすい。この後に、ほかのグループの動画もつなげて10分の動画へと仕上げる。最後に完成した動画を始めから通して見直し、気になった部分を再度修正し、2回目の「6. 書き出し」に進む。

6回目 上映~ふりかえり
クラス紹介動画が完成したら、発表の場をつくる。スクリーンやテレビに映し出して、うまくいった点とうまくいかなかった点を挙げ、改善点などを話し合う。普段のスマホでの動画視聴ではなく、大きな画面を前に全員で見るシアター体験をすれば、日常の娯楽とは一線を画す学びにつながるはず。

(画像はすべて山﨑達璽事務所提供、協力:ぐんま国際アカデミー中等部・高等部)

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