今年1月、中央教育審議会(以下、中教審)から「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して」という答申が出された。「新しい時代の初等中等教育の在り方」について審議した内容をまとめたもので、中教審メンバーは“新学習指導要領の参考書”とも表現する。3月27日に行われたオンラインシンポジウム「『令和の日本型学校教育』を語る!~一人一人の子供を主語にする学校教育とは~」では、学校現場や教育委員会などが直面する課題とともに、これから目指すべき学校教育の姿が語られた。Society 5.0時代の到来で、変わらなければならない学校教育は、本当に変われるのか。シンポジウムを通じて、「令和の日本型学校教育」の中身を探った。

教育の専門家で構成される中教審は、大臣の諮問機関として文部科学省に設置されている。答申とは、大臣の諮問に対する中教審の最終的な回答のことで、この答申を踏まえて文部科学省は制度改正や予算確保など具現化に向けて動き出すわけだ。

今回公表された「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して」は、2019年4月に文部科学大臣から中教審に対して諮問した「新しい時代の初等中等教育の在り方」について審議した内容をまとめたもの。これまで中教審からは、さまざまな答申が出されているが、この答申にはとくに重要な意味があるという。その理由は、初等中等教育全般にわたる提言であること、また新型コロナウイルスの感染拡大をはじめとする大きな変化の真っただ中にまとめられたことにあるようだ。

ポイントは、Society 5.0時代の到来といった急激に変化する時代にあって、子どもたちが育むべき資質・能力とは何かを定義していること。新学習指導要領の前文にも書かれているが、その着実な育成に必要な考え方や条件をどう整備するかについてまとめられている。中教審メンバーが“新学習指導要領の参考書”と表現するのには、ここに理由がある。

令和を生きる「子どもたちが育むべき資質・能力」とは?
一人一人の児童生徒が、自分のよさや可能性を認識するとともに、あらゆる他者を価値のある存在として尊重し、多様な人々と協働しながら様々な社会的変化を乗り越え、豊かな人生を切り拓き、持続可能な社会の創り手となることができるよう、その資質・能力を育成することが求められている
出所:「令和の日本型学校教育」の構築を目指して(答申)

 

この答申をどう活用すべきか。教育現場からは「ただでさえ目を通すべき文書が多い中で、またか」という批判の声も聞かれるが、20年代を通じて実現を目指す学校教育「令和の日本型学校教育」の姿、つまりすべての子どもたちの可能性を引き出す、個別最適な学びと協働的な学びの実現に向けた改革を進める補完として使ってほしいという。

一人ひとりの子どもを主語にする学校教育とは?

3月27日に開催されたオンラインシンポジウム「『令和の日本型学校教育』を語る!」には、「一人一人の子供を主語にする学校教育とは」というサブタイトルが付けられていた。登壇したのは以下の6名だ。

「『令和の日本型学校教育』を語る!」登壇者
荒瀬克己 関西国際大学学長補佐・基盤教育機構教授
今村久美 認定NPO法人カタリバ代表理事
堀田龍也 東北大学大学院情報科学研究科教授
岩本 悠   一般財団法人地域・教育魅力化プラットフォーム代表理事
戸ヶ﨑勤 戸田市教育委員会教育長
神野元基 株式会社COMPASSファウンダー
モデレーター:寺西隆行 文部科学省広報戦略アドバイザー

 

冒頭、中教審初等中等教育分科会長を務めた荒瀬克己氏は、新学習指導要領が「一人ひとりの子どもが、自分のよさや可能性を認識することができるようにすること」からスタートしている重要性を指摘。こうした「子どもが主語になる取り組みを、誰がやるのかといえば先生たち。だから一人ひとりの子どもを主語にする学校をつくっていこうとすれば、一人ひとりの教職員も主語になっていく。自分たちで考え、いろいろな人たちと相談しながらやって、うまくいかなければ振り返り、改善してよりよいものにしていく、そういう取り組みをすることが非常に大事」だと語った。