<調査概要>
・調査テーマ   教育のICT化の取り組み状況に関するアンケート
・調査対象    47都道府県の知事
・調査実施期間  2020年10月7日~12月4日
・調査方法    郵送・メール・電話でアンケートを実施
・回答数     37人(未回答:山形、福島、東京、新潟、奈良、鳥取、島根、愛媛、鹿児島、沖縄)

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北陸地方・東海地方は、新田八朗氏(富山県)、谷本正憲氏(石川県)、杉本達治氏(福井県)、古田肇氏(岐阜県)、川勝平太氏(静岡県)、大村秀章氏(愛知県)、鈴木英敬氏(三重県)の7人から回答を得られた。その一部を紹介する。

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教育のICT化で現場の負担は増えるのか?

新型コロナウイルス(以下、新型コロナ)の感染拡大の影響などによって、GIGAスクール構想が前倒しされたことで、教育現場の人材育成が急務となっている。実際、全員が教員間のICTリテラシーの差を埋める施策を「行っている」と答えており、教育現場のICT化が急速に進む中で、中長期的な視点で行われるべき人材育成が、急場をしのぐための施策になっていないか、注視する必要があるだろう。

教育現場におけるICTの環境整備については、6人(富山、福井、岐阜、静岡、愛知、三重)が「どちらかというと整っている」と答え、ICTに関する独自の取り組みについても、同じ6人が「ある」と答えている。一方で、ICT教育の推進によって懸念される、現場の教職員の負担増については、1人(富山)を除いて「どちらともいえない」としている。しかし、現場の教職員は通常業務に加えて、新型コロナへの対応が求められているほか、「情報ネットワークを担当する教員の負担が増加する」(愛知)といった意見も寄せられている。認識のズレが生じぬよう、現場の声にしっかりと耳を傾けながら慎重に進めていく必要があるだろう。

特徴的だった「問11」の回答をスライド動画で紹介

ICT教育に積極的な地域とそうでない地域の差

ICT教育に関する独自の取り組みについて、6人(富山、福井、岐阜、静岡、愛知、三重)が「ある」と答えている。その内容はさまざまで、積極的な姿勢は歓迎すべきだが、積極的な地域とそうではない地域との間に格差が生まれるということ、つまり、今や日本では、義務教育だとしても全国で同水準の教育が受けられる保証はないということを意味する。そもそも公教育は家庭環境による格差を埋める役割を担ってきたが、それが期待できないだけではなく、事態をより悪化させてしまう可能性すらあるというわけだ。

GIGAスクール構想の対象になっていない高校はなおさら、地域間格差や家庭環境による格差の影響を受けやすい。全国的にみても、国に期待することとして「高校における1人1台端末の整備」や「家庭での通信費に対する支援」などを挙げる地域が多いのは、そうしたことへの危機感の表れかもしれない。

通信制などを含めれば進学率がほぼ100%となっている時代において、政府は、高校などにおける教育のICT化についても、各地域に丸投げするのではなく、少なくとも格差が広がらないような対策を検討する必要があるのではないだろうか。

特徴的だった「問15」の回答をスライド動画で紹介

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(写真:iStock)

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