教員のICT活用指導力を向上させるために

調査対象は、全国の公立学校(小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校)とそれらの学校で授業を定期的に担当している教員。学校におけるICT環境の整備状況を見ると、教育用コンピューター1台当たりの児童生徒数は前年の5.4人/台から4.9人/台に、普通教室の無線LAN整備率は48.3%(前年比7.3ポイント増)、大型提示装置整備率も59.2%(前年比7ポイント増)となっている。デジタル教科書の指導者用整備率は56.4%(前年比3.8ポイント増)、統合型校務支援システムの整備率も前年比6.8ポイント増の64.3%に達した。

一方、前回調査と数値がほぼ変わらないのが、教員のICT活用能力だ。授業にICTを活用して指導する能力は69.8%(前年比0.1ポイント増)、児童生徒のICT活用を指導する能力は71.3%(1.1ポイント増)。「GIGAスクール構想の加速による学びの保障」では、急速な学校ICT化を進める自治体等を支援するため、ICT関係企業OB などICT技術者を配置する経費を支援するとしている。対象となるのは、国立・公立・私立の小学校・中学校・高等学校・特別支援学校等だ。

ほかにも、「ICTを活用した効果的な指導方法(遠隔教育、家庭学習等を含む)」「ICTを活用した指導に関する研修講師の紹介・派遣等研修の実施」などについて、自治体や教育委員会からの相談に応じるICT活用教育アドバイザー事業が進められている。

ハードやツールの整備は、目的ではなく、あくまでも手段だ。GIGAスクール構想が掲げる「特別な支援を必要とする子供を含め、多様な子供たちを誰一人取り残すことなく、公正に個別最適化され、資質・能力が一層確実に育成できる教育ICT環境を実現する」ために、学校や教員のICT活用能力を継続的に支援していく取り組みが欠かせない。が、その一方で、教員のみに新たな負担を強いることがないよう、サポート体制の充実が望まれる。

教員の現状をマクロで把握すると、2020年度学校基本調査(速報値)では、小学校、中学校の在学者数が過去最少、教員数は小学校で増加、中学校は減少。小学校と中学校の義務教育を一貫して行う9年制の義務教育学校、1つの学校として一体的に中高一貫教育を行う中等教育学校はいずれも、学校数、在学者数、教員数が増加している。特別支援学校の在学者数も過去最多となり、特別支援学校数、教員数もともに増加傾向にある。

「個別最適化な学び」への新たな施策

中央教育審議会・新しい時代の初等中等教育の在り方特別部会の中間まとめ(骨子案)では、個別最適な学びを実現する観点から、「1人1台端末」による ICTの効果的な活用と作用し合いながら、児童生徒の学習状況を把握し、教科指導の専門性を持った教師による教科担任制の導入によって授業の質、児童一人ひとりの学習内容の理解度・定着度の向上を図ることが重要と指摘している。

具体的には、2022年度をメドに小学校高学年からの教科担任制を本格的に導入する必要性を提言。教員の持ちコマ数軽減によって負荷削減にも資するとしている。専科指導の対象科目として、外国語、理科、算数を例示した。

骨子案では、ICT を活用した学びについて、対面指導とオンライン教育とを使いこなす、ハイブリッド化によって個別最適な学びと、社会とつながる協働的な学びを展開する必要性に言及。学習履歴(スタディログ)の活用、デジタル教科書・教材の普及促進が挙げられている。

そして、教員のICT 活用指導力を向上させるために、都道府県教育委員会が定めている教員の資質能力についての育成目標にICT活用能力を組み込み、体系的かつ効果的な研修の実施を促している。

主体的、対話的かつ深い学びを実践していくためにICTをどう使いこなしていくのか。これからの教育政策を立案する際、ICTの活用が1つのベースとなっていくことは間違いなさそうだ。(写真:iStock)