「デジタルネイティブたちは、インターネットの酸いも甘いもわかっているのではないでしょうか」と指摘するのは、東京工業大学名誉教授の赤堀侃司氏(ICT CONNECT21会長)。7月に総務省が公表した「2019年度 青少年のインターネット・リテラシー指標等に係る調査結果」を受けてのコメントだ。2012年度に始まったインターネット上の危険や脅威への対応能力を可視化するテスト創設に深く関与した赤堀氏は一方で、日本ならではの高校生とスマートフォンとの関係に危惧を抱いている。リテラシー評価で浮き彫りになった懸念とは何か。今回の結果を赤堀氏に読み解いていただいた。

高校生のインターネット・リテラシーは高い水準で推移

総務省が、毎年1回、高校1年生を対象に実施しているインターネット・リテラシーテスト。2019年度も57校、7252名がテストを受けた。

「インターネット上の違法コンテンツ、有害コンテンツに適切に対処できる能力」「インターネット上で適切にコミュニケーションができる能力」「プライバシー保護や適切なセキュリティ対策ができる能力」を可視化するテストの正答率68.7%は、過去4年間の平均68.8%とほぼ同等だった。

「制度創設時に期待していた正答率70~75%に近く、高いレベルで推移していると評価できます」と赤堀氏。「シニア層と比較しても高いリテラシーを持っているのではないでしょうか」と続ける。利用状況を見ると、高校生の97.5%がインターネット接続機器としてスマートフォンを保有。最もよく利用する機器もスマートフォンが92.5%に達している。

「例えば、この4年の間にスマホの機能や高校生の使い方が劇的に変化したとは言えません。いわば、自動車と同じで基本的な機能が同じですから、求められるリテラシーもドラスティックに変化することはありません。そうした意味で、7割近い正答率で推移している結果もうなずけます」と赤堀氏は語る。

結果が変化した項目もあった。テストではインターネット・リテラシーの能力を下記のとおりに分類している。

1. インターネット上の違法コンテンツ、有害コンテンツに適切に対処できる能力
 a. 違法コンテンツの問題を理解し、適切に対処できる。【違法情報リスク】
 b. 有害コンテンツの問題を理解し、適切に対処できる。【有害情報リスク】
2. インターネット上で適切にコミュニケーションができる能力
 a. 情報を読み取り、適切にコミュニケーションができる。【不適切接触リスク】
 b. 電子商取引の問題を理解し、適切に対処できる。【不適正取引リスク】
 c. 利用料金や時間の浪費に配慮して利用できる。【不適切利用リスク】
3. プライバシー保護や適切なセキュリティ対策ができる能力
 a. プライバシ一保護を図り利用できる。【プライバシーリスク】
 b. 適切なセキュリティ対策を講じて利用できる。【セキュリティリスク】

この中で、4年前と比較すると「不適切利用リスク(過大消費、依存、歩きスマホ、マナー等)」「有害情報リスク(不適切投稿、炎上、閲覧制限等)」の正答率が相対的に下降している。が、赤堀氏は前向きに数字を捉えている。

「これら2つの項目は、いわば実質的な被害につながりにくいリスクともいえるでしょう。もちろん炎上を起こしてしまうと精神的なストレスがのしかかることはあるでしょうが、金銭的な被害に遭うわけではありません。マナーについても同じです。マナーを守ることは大事ですが、失敗経験を積むことでより賢い利用法が身に付いていくのではないでしょうか」