中国「パサート・ショック」は日系車に追い風か VWが中国事業を拡大する中、品質問題が露呈

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中国で衝突試験の最高評価を獲得したトヨタ「イゾア」(筆者撮影)

新型コロナウイルスの影響による中国の自動車生産が停滞している中、ドイツのフォールクスワーゲン(VW)は2月24日、中国の14つの工場(従業員約8万人)で操業を再開し、中国市場での危機対応能力を示した。

その一方で2019年の年の瀬にCIASI(中国保険・自動車安全指数)が発表したテスト結果が、中国自動車業界で大きな波紋を広げた。25%オフセット前面衝突試験において中国で最も売れている中型セダン、VW「パサート」が、最低評価となったのに対し、日系4モデルが最高評価を得ている。

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中国ではドイツ車が頑丈さと耐久性で評価され、「質実剛健さ」を備えた上質な実用車の代表格である「パサート」は中国で高い人気を維持している。今回の「パサート・ショック」からVW車の品質問題が露呈している。この流れは中国市場で長年、ドイツ系自動車メーカーの後塵を拝してきた日系自動車メーカーにとって好機となりそうだ。

VWは上海汽車、第一汽車の2社と提携し、早い時期に中国市場に進出したため、幅広い需要を取り込み、中国乗用車市場で不動の地位を築き上げた。2019年の中国販売台数は約420万台(トヨタの2.6倍規模)、合弁子会社の一汽VWと上汽VWは中国乗用車市場で1位、2位の実績を残した。複数ブランドの現地生産や中国仕様車種・新技術の導入に加え、VWは今年中に生産能力を600万台に引き上げ他社を一段と圧倒しようとしている。

中国事業が広がる中、品質問題が多発

中国の中型車(Dセグメント)市場では、かつてトヨタ「カムリ」、ホンダ「アコード」、日産「ティアナ」がトップ3を占めていた。2011年に登場した新型「パサート」 は、日系3ブランドの寡占状況を破り初めて業界のトップ車種となっている。

中国で販売されているVW「パサート」(筆者撮影)

一方で、VWは中国で事業を広げる傍らで品質問題も多発しており、アフターサービスや消費者への対応も遅れている。2019年12月には「ティグアン」や「マグタン」のエアバッグの欠陥(15.9万台のリコール)を公表した。

車リコール情報を提供する「車質網」が集計した2019年の苦情(品質、アフターサービスなど)のうち、VWに関する苦情が多く寄せられており、とくに「パサート」のユーザー評価(5点満点)は1.6点に沈んでいる。「パサート」 は2019年には販売台数21.8万台で、その勢いが続いているものの、2位のホンダ「アコード」(21.7万台)との差はわずか1000台しかない。

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