プロが語る2020年の投資戦略「4つのポイント」 一部の高利回り債や高配当株は選別投資を

拡大
縮小
2019年は米中貿易摩擦でマーケットは悲観論であふれていた。写真は2019年6月のG20大阪サミットでのトランプ大統領(左)と習近平国家主席(写真:ロイター/アフロ)
今の世界経済は不透明要因であふれている。アメリカと中国・欧州との貿易摩擦やイラン・中東情勢の混迷、接戦が予想されるアメリカ大統領選挙、イギリスとEUの将来関係交渉、さらには中国発で世界に広がる新型肺炎の不安まで重なり、先行きがなかなか読めない情勢だ。
一方で、世界経済が緩やかながら着実な成長を続けていることも事実。多くの国でインフレ率は目標水準以下に抑えられており、各国中央銀行の利下げを後押ししてきた。財政政策も総じて景気刺激的であり、政策面から景気をサポートしている。
こうした投資環境を世界の有力機関投資家はどのように考えているのか。ロンドンを本拠とする大手資産運用会社、HSBCグローバル・アセット・マネジメントでグローバルCIO(最高投資責任者)を務めるジョアンナ・ムンロ氏に聞いた。

リスクオフ戦略は賢明ではない

われわれは今、不確実性の時代にある。だが、不確実性を理由にリスクオフ戦略をとるのは賢明ではないと考えている。

1年前の2019年1月、投資環境の展望はかなり暗いものだった。前年の株価パフォーマンスが散々で、米中貿易戦争や世界的な景気後退懸念の高まりから、市場は悲観論であふれていた。世界ベースの「経済政策不確実性指数」(政策の影響による経済の先行きの不確実性を示す指標)は2019年に過去最高に上昇。2001年のアメリカ同時多発テロ事件や2008年のリーマンショックの時を上回る水準だ。そのため、投資家の多くが資産を現金化した。

しかし、それは結果的に誤りだった。2019年の実際のリターンは、株式をはじめ、社債や新興国債券、原油など驚くほど良好なものとなった。実際に起こったことと市場の懸念の間に大きな乖離が見られた。

ジョアンナ・ムンロ(Joanna Munro)/イギリス・ケンブリッジ大学で数理工学士。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスで経済学修士。1986年から欧米の金融機関で株式アナリストなどに従事。HSBCインベストメントのグローバルCIOなどを経て、2019年9月から現職(撮影:今井康一)

市場にとってより重要だったのは、金融政策の変化だ。2019年には世界16の国と地域で利下げが行われ、マクロ経済の見通しを改善させた。長期金利も大幅に低下し、ドイツなどはマイナス金利となっている。こうした状況が金融資産を下支えしている。

2020年の投資戦略については、4つのポイントが指摘できる。第1に、リスク資産を選好する投資姿勢を継続すべきだということ。不確実な環境は続くが、過度に防衛的な資産配分は得策ではない。第2に、マクロ環境的には好ましい状況にある。世界経済は緩やかだが安定的な成長が続き、循環的な景気底入れ・低インフレ局面の中で中央銀行の緩和的スタンスが維持される。

第3に、リスク資産の中でも、一部の高利回り債券や配当利回りの高い株式を選別すべきだということ。第4に、今後のグローバル債券投資は先進国国債の枠を超えて、より柔軟に投資対象を分散する必要があるということだ。

次ページ先進国の国債は割高に
関連記事
トピックボードAD
マーケットの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT