中韓鉄道メーカー、「欧州本格展開」への高い壁 東欧などで受注獲得、信頼と技術向上がカギ

拡大
縮小
中国中車にとって初めての欧州向け車両となる、ハンブルクSバーン向けハイブリッド式入換用機関車。これを足がかりに欧州への進出が果たせるか(筆者撮影)

オーストリアの民間鉄道会社ウェストバーンは2019年10月30日、現行車両の置き換え用車両について、スイスの鉄道車両メーカー、シュタドラーと再契約したことを発表した。新しい契約では、6両編成15本の製造だけではなく、メンテナンスを含んだ契約となっており、その総額は3億ユーロ(約365億円)となった。

2019年5月18日付の記事(「中国製」に食指、ヨーロッパ新興鉄道の思惑)で既報のとおり、ウェストバーンは世界最大の鉄道車両メーカーである中国中車(CRRC)と交渉を行っていることが報じられたが、同社は最終的にシュタドラーを選択、中国中車は失注してしまった。

ビッグ3をあっさり抜いた中国

鉄道先進国がずらりと並ぶ欧州では、各国それぞれに本拠地を構える鉄道車両メーカーが国鉄と手を組んで、鉄道車両の研究開発および製造を行ってきた。しかし1990年代以降、主導権はメーカーが握る方向へシフトし、各鉄道会社は複数のメーカーから提案された仕様を比較検討して最適なメーカーと契約する、というスタイルが主流となった。

ウェストバーンで使用されるシュタドラー(スイス)製2階建て電車KISS。ウェストバーンは置き換え用車両として中国製ではなくシュタドラー製車両を導入することを決定した(筆者撮影)

この流れに伴って業界の再編が加速し、より力を持ったメーカーによって各国の小規模メーカーは次々と吸収合併されていった。業界での生存競争は、そのまま国力の差としてはっきりと表れ、いつしかドイツを拠点とするシーメンスとボンバルディア、フランスを拠点とするアルストムが、鉄道業界のビッグ3と呼ばれる時代になった。

ビッグ3は欧州のみならず、世界においてその存在感を示し、鉄道車両のメーカー別シェアは、一時期3社の合計が過半数を超えたこともあった。

だが、そのビッグ3も長くは続かなかった。他国の技術を吸収し、自国の高速鉄道建設ラッシュに乗じて売り上げを伸ばした中国メーカー2社が、ほとんど自国向けの生産だけだったにもかかわらず、あっさりとビッグ3をシェアで抜いてしまったのだ。

次ページ世界トップでも欧州市場参入には高い壁
関連記事
トピックボードAD
鉄道最前線の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
猛追のペイペイ、楽天経済圏に迫る「首位陥落」の現実味
猛追のペイペイ、楽天経済圏に迫る「首位陥落」の現実味
ホンダディーラー「2000店維持」が簡単でない事情
ホンダディーラー「2000店維持」が簡単でない事情
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT