千葉の停電、復旧を阻む「真因」は何なのか 荒廃した山林の倒木が電線を切断、難工事に

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電線に寄りかかった樹木の伐採作業(千葉県南房総市二部地区、記者撮影)

ブーンというチェーンソーのけたたましい音が周囲にこだまする。

台風15号による大規模停電の発生から9日後の9月18日。千葉県南房総市二部地区の復旧現場では、東京電力パワーグリッドの協力会社の作業員が高所作業車に乗り込み、根本から崩れかけている広葉樹の幹や枝を切断して、地面に下ろす作業に苦闘していた。

「硬くて重い木なので、チェーンソーで切るのに時間がかかる。切断した木は落下しないように重機で吊るしながら、安全を確認しつつゆっくりと下ろしていく」

現場責任者を務める東電パワーグリッド品川支社の菅野欣浩氏が、作業の難しさをこう説明した。

1軒の停電を解消するために多大な労力

山あいのこの地区では台風による倒木が高圧電線を切断してしまい、電気が届かない状態が9日間にわたって続いていた。この日、東電パワーグリッドの指揮の下、協力会社の「東配工」が9台の車両と20人近い社員を投入し、停電の復旧に漕ぎつけた。

復旧の行く手を阻むのは、作業の難しさだけではない。山林の所有者と連絡がとれず、やむなく作業着手を優先。終了後に別途、伐採の了承を得ることにした。

さらに、現場近くにある民家への引き込み線にも木が覆いかぶさっている。そこには車両が入れないため、はしごを使いながら時間をかけて倒木を撤去していく。1軒の停電を解消するために、多大な労力が必要だ。

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