「早期教育でバイリンガル」はこんなにも難しい 赤ちゃんの言語習得にみる子どもの母語学習

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大人になると忘れてしまいがちですが、子どもの言語取得は意外と険しい道のりです(写真:CreativaImages/iStock)
近年、子どもに英語の早期教育をさせたいと考える親は多い。「子どもはラクラクと言葉を覚える天才」「子どものときから海外で暮らしていれば自然とバイリンガルになる」といったイメージがその背景にある。
ところが、東京大学で認知科学や発達心理学の研究をする針生悦子教授は、そうした動きに疑問を呈す。針生教授が、赤ちゃんの「驚き反応」に着目するなどし、人が言葉を学ぶプロセスについて明らかにしてきた中で、わかってきたこととは?

赤ちゃんの言語習得は想像もつかない世界で始まる

著者は新刊『赤ちゃんはことばをどう学ぶのか』を通じ、子どもは母語の学習にどのように取り組んでいるかを改めて整理しました。

子どもの母語学習は、いったん言語を身に付けてしまった大人からすると想像もつかないような世界でスタートします。

そもそも子どもは、周囲の人が、ベラベラと音声を発しているのは、意味もなくうなっているのではなく、「話している」ということにまず気づかなければなりません。

言語の音ということであれば、あの音とこの音は違うもので、どの音が同じ音なのかも、子どもは自分で見極めなければなりません。

例えば、父親が言う「オムツ」と母親の言う「オムツ」は、物理的な音としてだいぶ違いますが、単語としては同じです。一方「オムツ」と「オツム」は、別の単語で意味も異なります。このようなことを、まだ母語すら学習途中の子どもに説明するのは、簡単なことではありません。

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