日本人は経済を「信仰の対象」にしてしまった アトキンソン×北野唯我「日本の生産性」対談

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「信仰」を払拭することこそが、日本復活の第一歩だといいます(撮影:尾形文繁)
2019年1月に個人の才能からイノベーション論を問う『天才を殺す凡人』を刊行した北野唯我氏。同じ月に人口減少への警鐘と今後の日本のあり方を提言した『日本人の勝算』を刊行したデービッド・アトキンソン氏。2人の問題意識、執筆の動機は、いずれも「日本人の生産性」にあるという。
いまの仕組みのどこに問題があり、どこを変えれば「日本人の生産性」は上がるのか。問題意識を共有する2人が「雇用」を縦軸に語り合ったもようをお届けする。

北野:はじめに、今回の著書『日本人の勝算』を今このタイミングで書かれた背景には、どのような考えがあったのでしょうか?

『日本人の勝算』は7万部のベストセラーとなっている(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

アトキンソン:『日本人の勝算』の前作『新・生産性立国論』でも、最低賃金と生産性や、企業の規模と生産性の相関について触れています。その際に、2つの突っ込みが読者から投げかけられました。

1つ目は、問題提起はしているが、どうやったら事態が改善するのか、何をするべきなのかという具体的な提言に欠けているというものです。特にどうすれば日本全体を動かすことができるのかという点が書かれていないという指摘でした。

そこで、『日本人の勝算』では人口減少時代に適応した産業構造のあり方を提示し、そこに向かっていくためのインセンティブを高めるには何をするべきかを提言したのです。

もう1つの突っ込みは、学者の先生たちからでした。ある政府の委員会で出会った先生曰く、「アトキンソンさんは経済学の博士号を持っていないのだから、経済を語る資格がない。だから何も言うな。言っていることが正しい、正しくない以前の問題だ」というのです。

一応、反論もしましたが、感情的になられて議論にもならないので、早々にやめました。そこで、彼らへの反論の意味も含めて、『日本人の勝算』では世界中の一流研究者たちの研究成果を徹底的に調べて、論旨を組み立てたのです。

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