どん底、JR貨物を再生に導いた「運命の2日間」 海運、空運のプロは経営再建請負人だった

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北海道のターミナルに停まる貨物列車 。JR貨物は「冬の時代」を越えて好調が続く(撮影:吉野純治)
JR貨物が元気だ。本業にもかかわらず長年赤字が続いていた鉄道ロジスティクス事業が2016年度に黒字化を果たし、連結経常利益を100億円台に乗せた。
2018年度は6月の大阪北部地震、7月の豪雨、9月の台風24号と度重なる自然災害に悩まされた。しかし、その後急ピッチで輸送量が回復し、2018年4月~2019年2月の輸送実績は前年同期比92.2%という水準まで持ち直した。山陽線の一部区間で工事や徐行運転が行われていることもあり、今も一部の列車が運休している。もしこれらが動いていれば、2月単月については「前年とほぼ変わらぬ水準」(真貝康一社長)という。
昨今のトラック運転手不足や環境問題の高まりなどJR貨物を取り巻く状況は明らかに追い風だ。しかし、その追い風を捉えて見事に浮上することができたのは、2013年に同社会長に就任した石田忠正氏(現相談役)の経営手腕によるところが大きい。
石田氏は日本郵船副社長、日本貨物航空社長を歴任。2011年にはまったく畑違いのがん研究会有明病院の理事長補佐に就任し、病院経営を黒字化させた実績もある。海運業と陸運業のプロはどのような経営手法でJR貨物の鉄道事業を黒字化に導いたのか。石田氏に聞いた。

「意識改革」にはこう取り組んだ

――JR貨物に来て、まず改善しなくてはいけないと思ったことは?

外部の人間がいきなりやってきて「こんな問題がある」「解決するためにはここを直さないといけない」と言ってもうまくいかない。もちろん表面上は変わるだろうが不十分。たとえ私が100点満点の提案をしても、人から言われてやるのでは意味がない。社員一人ひとりが「これは私の仕事だ」という気づきを得て、本気で取り組むという意識改革が必要だ。

一人だけが気づいても、回りにも同じ考えの人がたくさんいないと、組織としての行動にはならない。どの企業にも目に見えない不文律があって、社員自らを縛っている。それを解き放してあげないと「変わらなきゃ」という行動は起きない。これはどこの組織でも同じ。病院でもそうだった。JR貨物が国鉄の体質を引きずっているのは承知していたので、意識改革を本格的にやらないと経営改革はできないと強く意識していた。

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