日産が懸念するゴーン保釈後の「時限爆弾」 逮捕から108日、3度目の請求でようやく保釈

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保釈され、東京拘置所を出る日産自動車の前会長、カルロス・ゴーン被告(写真:時事通信社)

世界中に衝撃を与えた逮捕から108日目、かつてのカリスマ経営者は刑事被告人に立場を変え、再び世間に姿を現した。日産自動車のカルロス・ゴーン前会長が3月6日、勾留されていた東京拘置所(東京都葛飾区)から保釈された。ゴーン氏は逮捕以降、一貫して無罪を主張しており、不正を告発した日産とは全面対決の様相を呈している。

東京地検特捜部に昨年11月19日、金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)容疑で逮捕されてから、会社法違反(特別背任)容疑など2回の再逮捕を経て108日間に及ぶ長期の身体拘束には、国籍があるフランスなど海外メディアから批判が高まっていた。前任の弁護人による2回の保釈請求はいずれも却下されたが、2月に弁護人が「無罪請負人」の呼び声高い弘中惇一郎弁護士らに交代して初めての請求でいきなり保釈が認められた。

5日の保釈決定から一夜明けた6日午後4時半ごろ、作業着とマスクで「変装」したゴーン氏は東京拘置所で弁護団が用意したスズキ製の軽自動車に乗り込んだ。その後、都内の弁護士事務所に向かったとみられる。

保釈されても、息苦しい生活

保釈されたとはいえ、ゴーン氏は今後、裁判所から示された保釈条件に従った少々息苦しい生活を強いられる。例えば、事前に裁判所に届け出た東京都内の場所に居住は制限され、住居の入口には監視カメラが設置される。ほかにも、パスポートは弁護人に預け、海外渡航は禁止、日産幹部など事件関係者への接触禁止、携帯電話はインターネットとメールは使用不可、通話先記録も裁判所へ提出、日中は弁護人の事務所に滞在、など数々の細かな条件がある。ただ、食事や居住環境などの面で拘置所よりはるかにストレスの少ない生活に戻ることができそうだ。

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ゴーン氏はこれまで一貫して無罪を主張しており、裁判でも検察側と全面的に争う構えだ。その一方で、会長を務めていた日産やフランスのルノーにおけるほぼすべての役職はすでに失い、経営に対する直接的な影響力は限定的だとの見方が強い。2月には日産とルノー連合の統括会社「ルノー日産BV(RNBV)」の会長も退いた。ルノーではゴーン氏の後任として就任したジャンドミニク・スナール会長による新体制がスタート。ルノーのティエリー・ボロレCEOは5日、保釈後にゴーン氏が経営陣に復帰する可能性を明確に否定した。

日産単独での不正調査は現在も継続しているほか、RNBVを舞台とした不透明な金の流れについてルノー、日産両社が共同調査を進めている。共同調査は3月中旬にも結果が公表される見通しだ。「刑事裁判の結果がどうであろうが、ゴーン氏を会長から解任した判断には揺るぎない」(日産幹部)としており、民事面でもゴーン氏に対して損害賠償を請求する方針を固めるなど強気の姿勢を崩していない。

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