900億円赤字のスルガ銀、遠い再生への道のり 半年で預金6700億円が流出、見えぬ支援先

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11月14日の決算会見に臨むスルガ銀行の有國社長(記者撮影)

スルガ銀行は11月14日、2018年4~9月期の最終損益が985億円の赤字に陥ったと発表した。2019年3月期の通期についても、従来計画の250億円の黒字から975億円の赤字へと大幅に見通しを引き下げた。中間配当は見送り、期末配当も「未定」としている。

会社が設置した第三者委員会は9月、シェアハウス向け融資で審査書類の改ざんなど不正が蔓延していたとする報告書を公表。金融庁も10月、新規の投資用不動産向け融資を6カ月停止するなどの厳しい処分を下しており、今回の赤字決算も不正融資にかかる貸倒引当金の大幅積み増しが響いた。

9月末時点のシェアハウス融資残高2034億円のうち、3カ月以上返済が延滞しているローン残高の比率は30%にものぼる。スルガ銀行は今回、新たに947億円の与信費用を計上し、貸倒引当金を累計で1362億円とした。14日に静岡県沼津市で記者会見した有國三知男社長は「かなり保守的に引当を積んだ。担保と併せてほぼ全額保全されている」などと説明した。

自己資本比率8%は何とかクリア

8月9日に4~6月期決算を発表した時点で、すでに「今後、業績予想修正の可能性がある」と示唆しており、赤字決算自体は想定の範囲内だった。投資家や業界関係者の関心は、今後どこまで赤字が膨らみ、自己資本比率が低下するかに集まっていた。

規制上、銀行の健全性の目安となる自己資本比率は4%を上回っていればよい。ただ、多くの地方銀行は、その倍にあたる国際業務を行う銀行に求められる国際基準の8%をメドとしている。スルガ銀行の自己資本比率(単体)は、9月末で8.65%と、3月末の12.15%からは大きく低下したものの、8%を超える水準で踏みとどまった。

自己資本比率が注目されるのは、スルガ銀行の貸し出しに占める企業向けの割合がわずか1割という特殊な銀行という事情もある。金融機能強化法では、中小企業などへの資金供給を支援するため、地域金融機関の機能強化を目的として予防的に政府が公的資金の注入を可能としている。だが、スルガ銀行は首都圏の個人向け不動産投資用融資で業容を大きく拡大してきただけに、同法の適用は難しいとみられる。実際、地元の企業関係者の中からは、「静岡には地域に密着して中小企業融資を行っている優れた地銀や信金がほかにいくつもある」という声があがる。

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