ベンチャー「サンバイオ」株が急騰したワケ 外傷性脳損傷治療薬の早期承認に大きく前進

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株価急騰のきっかけとなった11月1日公表のサンバイオのリリース(編集部撮影)

再生細胞医薬品を開発するバイオベンチャー、サンバイオの株価が急騰劇を演じている。8日には一時上場来高値となる7550円をつけた。時価総額は3000億円を超え、一躍、バイオベンチャーの最注目銘柄に躍り出た。

きっかけは11月1日に出された1件のリリース。開発中の細胞治療薬「SB623」の国際共同治験(日米)2相で、主要評価項目を達成したと公表したのだ。

この治験では運動障害を伴う外傷性脳損傷(TBI)患者61人に同薬を投与。24週間後に機能の改善度を示す一般的な指標が、薬を投与したグループで8.7ポイント改善した(正常な状態を100とする)。対照群(薬を投与しなかったグループ)の2.4ポイントと比べ改善幅に差が現れた。

主要評価項目は、医薬品の治験をする際に、これをクリアすれば有効性が示せたという指標だ。治験開始に先立って決めておくもので、プライマリーエンドポイントとも言う。主要評価項目を達成することが治験の目標といってよく、達成できればおおむね問題なく次の段階に進むことができる。

2019年の早い時期に承認申請

主要評価項目を達成した意味は大きい。国内では治験3相は行わず、「再生医療等製品に関する法律」に基づき、条件付き早期承認を目指すことができるからだ。同社は、2019年の早い時期にも承認申請を行う見通し。アメリカでも「(条件付き承認に類似する)新制度の活用を含めて検討し、1日も早い承認を目指す」(森敬太社長)。

条件付き早期承認制度は、2014年11月から始まった再生医療等製品を対象とする新しい制度。安全性が確認された段階でいったん承認が下り、患者の治療を行いながらデータを収集し、7年以内に本承認取得を目指す。世界に先駆けて日本で導入され、世界中の再生細胞治療開発企業の注目を集めている。サンバイオ自身も、もともと日本人起業家がアメリカで創設した会社だが、この制度の施行を見て日本に移転してきた経緯がある。

つまり、治験2相をクリアしたことで、サンバイオは脳細胞薬の実用化にぐっと近づいたわけだ。

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