フェラーリが強気に値上げしても売れる理由 このブランディングは計算し尽くされている

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「488GTB」はフェラーリの最新主力モデルの一つ

自動車業界はある一面で言えば大きなデフレの波にさらされている。大量生産を前提として、競合メーカー同士が爪に火をともすようにコスト競争にいそしむ事業構造だ。今年、大きな問題となったフォルクスワーゲン(VW)の排ガス不正事件も、生産・販売台数で世界を制したものが生き残る、という熾烈な競争の帰結ともいえるかもしれない

一方、もはや世界的にコモディティ化してしまった自動車業界において異彩を放つグループが存在する。イタリアのモデナという片田舎を発祥の地とするスーパーカーメーカーたちだ。フェラーリ、ランボルギーニ、マセラティ、パガーニ。ハイパフォーマンスカーを少量生産する「中小企業」たちである。

中でもニューヨークとイタリアの証券取引所に上場を果たし、積極的な拡大路線を歩んでゆくとされているフェラーリこそがまさにキング・オブ・スーパーカーだ。

8気筒モデルの売れ行きは33%も増加

フェラーリといえば独特の曲線を活かしたシャープなスタイリングと官能的なエグゾーストノートを聞かせるF1譲りの芸術的エンジン。誰もがその走り去る姿に酔いしれる。もちろんその価格も・・・。そう、もちろん高いのだが、ここ数年その価格がさらに大きな動きを見せている。

8気筒エンジンをミッドマウントした最新モデル、フェラーリ「488GTB」の売れ行きは絶好調だ。「カリフォルニアT」や「458スペチアーレ」を含む主力である8気筒モデルの2015年第3四半期売り上げは前年比で33%も増え、前年同期のフェラーリ社の売上高は9%増加。純利益は62%も増えている。

フェラーリの屋台骨を支えるこの488GTBの好調な売れ行きはフェラーリにとって大きな安心材料であろう。フツウの自動車メーカーなら宣伝販促活動に勤しみ、販売台数を伸ばすことによって売り上げを稼ぎ、利益を上げたことだろうが、フェラーリの場合は少しばかり様相が異なる。

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