YouTuberへの誹謗中傷、法整備でもなお残る厄介 事務所が頭抱える、「対処しにくい」具体事例

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新たな法整備に向けても進み始めた誹謗中傷問題。動画投稿活動を行っているユーチューバーのケースに着目し、解決が難しい背景に迫った(写真:NOBU / PIXTA)

「話し方が気持ち悪い」「顔がブサイクすぎる」――。

あるユーチューバーが投稿する動画のコメント欄には、一部の視聴者からの心ない言葉が並んでいる。珍しいことではない。数千から数百万まで、一定規模のフォロワーを抱えるインフルエンサーであれば、男女や年齢を問わず、誰もが経験することといえる。

SNSなどネット上を中心に活躍するインフルエンサーの存在感が高まるにつれて、彼らへのこうした誹謗中傷被害が顕在化するようになった。中には殺害予告やストーカー行為などで、身体への危険が及びかねないケースも散見される。

罰則強化の法整備へ

ネット上での誹謗中傷対策の強化に向け、国も動き始めた。

9月14日、上川陽子法務大臣は「こうした(誹謗中傷などの)行為を抑制すべきとの国民の意識が高まっている」と話し、今までは懲役刑がなかった侮辱罪に「1年以下の懲役・禁錮もしくは30万円以下の罰金」を追加し、罰則を強化することを目指すと明らかにした。

法整備に先んじて動き出している企業もある。ユーチューバー事務所大手のUUUMは2020年6月、自社に所属するユーチューバー(インフルエンサー)への誹謗中傷や攻撃的な投稿に関する対策専門チームを立ち上げた。メンバーには警察出身者などがおり、外部弁護士とも連携する。

同チームは所属ユーチューバーへの殺害予告や、住所の特定・晒しあげ、名誉毀損といった悪質な案件に対して、ユーチューブ、ツイッターなど各プラットフォームへの投稿削除依頼や警察との連携などを担っている。

同チームで対処した案件数は、2020年8月から2021年7月末までの1年間で100件に及んだ。前年(2019年7月から2020年6月末、専門チーム発足前)と比べ3倍以上に増えた。また、殺害予告やストーカー行為で犯人検挙につながったケースは4件あった。

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