安倍前首相、政治の表舞台復帰に秘めた「野望」 本音は再々登板ではなく、キングメーカー狙い

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5月21日、半導体戦略推進議員連盟を設立し、あいさつする安倍晋三前首相(中央、写真:時事)

菅義偉政権を揺るがすコロナ・五輪政局の混迷を横目に、安倍晋三前首相が政治の表舞台に復帰したことが、永田町に揣摩臆測を広げている。

安倍氏は4月ごろから政治活動を本格化させ、各種議員連盟の役員に次々就任する一方、テレビ出演や雑誌のインタビューなどで精力的に発信を続けている。中でも、コロナ禍に苦闘する菅首相について「(10月以降の)続投は当たり前」などと熱いエールを送ったことが、政局絡みで注目された。

菅政権が命運を懸ける東京五輪・パラリンピックについても、安倍氏は「オールジャパンで臨めば開催できる」と菅首相への全面支援を表明。「一議員として菅首相を支える」と強調している。

残る安倍前政権の「負の遺産」

こうした安倍氏の言動を受けて、自民党内保守派からは安倍氏の再々登板に期待する声が相次ぐ。安倍氏周辺からは「最大派閥の細田派を安倍派に衣替えしてキングメーカーになる」との声が出るなど、安倍氏の存在感は増すばかりだ。

ただ、菅首相の政権運営の火種ともなっている河井克行・案里夫妻の巨額買収事件に絡む1億5000万円支出問題など、安倍前政権の負の遺産は少なくない。安倍氏が首相として決断した東京五輪の1年延期も、現状では菅首相の「大きな重荷」(官邸筋)となっている。

政界では「安倍氏が菅首相の続投を支援するのは、将来の自らへの疑惑追及を封じるためで、自民党の最高実力者としての影響力確保が狙い」(自民長老)と指摘する向きも多い。安倍氏はそうした臆測もどこ吹く風で、月刊誌のインタビューで「ポスト菅」候補に言及。自民党内では「そもそも現在の混乱と自民党政権への批判の元凶は安倍氏」(閣僚経験者)との反発も根強い。

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