元日産エンジニアが考案した次世代電池の実力

安全性とコスト競争力に自信、来年から量産へ

「製造工程がシンプルな全樹脂電池なら、大幅な製造コストの引き下げが可能。安全性も格段に高く、定置用蓄電池の普及に大きく貢献できる」と堀江氏は自信を見せる、実際、再生エネ導入が進む欧米のエネルギー関係企業などから多くの問い合わせが寄せられており、早ければ来年、こうした企業と大型蓄電池の実証実験を開始する。

堀江氏は元日産のエンジニア。その経歴を考えれば、これから本格的な普及期を迎えるEV用途も注力領域かに思えるが、本人曰く、車載用は当面考えていないという。「車載用の電池はレッドオーシャン(血で血を洗う競争の激しい領域)。そこにいきなり飛び込んだら、大変なことになる。まずは定置用の大型蓄電池で事業の基盤を確立するのが先決。それができたときには圧倒的なコスト競争力を有し、車載用での展開も見えてくる」。

「10年後に5000億円の事業規模へ」

堀江氏と二人三脚で実用化に漕ぎ着けた三洋化成工業としても、全樹脂電池に対する期待は大きい。累計で数十億円の研究開発費を負担し、2019年には資本業務提携を結んでAPBに出資。今春の大型増資で出資比率は薄まったが、それでも4割以上の株式を保有する筆頭株主だ。APBは関連会社の位置付けで、三洋化成工業から約40人の研究技術者を派遣している。

全樹脂電池は設計の自由度が高いのも大きな特徴。ハイポーラ積層型で、写真のようにシート状の電池を何層にも重ねて大容量化できる(写真:APB)

「当社にとっても、全樹脂電池のような社会を変えるほどのイノベーションはかつてない大きなチャレンジ。この技術には自信を持っていて、大いに期待している。定置用の大型蓄電池の潜在需要は大きいので、10年後には5000億円ぐらいの事業規模にしたい」(三洋化成工業の安藤孝夫社長)

事業が成功するためには、現在準備中の第1号工場を予定通りに立ち上げ、効率的な量産技術を早期に確立することが課題になる。APBのロードマップによると、さらに次のステップとして、巨大な第2工場を2020年代半ばまでに立ち上げ、スケールメリットを発揮する考えだ。そのときにはリチウムイオン電池の半分以下にまで製造コストを下げるシナリオを描いている。

「全樹脂電池は現時点で考えうる理想的な究極の電池。この技術によって、エネルギー分野でイノベーションを起こしたい」と語る堀江氏。元日産エンジニアが抱く壮大な夢は、果たして実現なるか。

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