元日産エンジニアが考案した次世代電池の実力

安全性とコスト競争力に自信、来年から量産へ

堀江氏はかつて日産自動車のエンジニアで、排ガス浄化触媒やEV(電気自動車)用電池システムの研究開発に長年従事。2010年に発売されたEV「リーフ」でも途中まで電池の開発を担っていた。母校の東京大学に招かれて2007年に日産を退社し、同大学の人工物工学研究センターで准教授、生産技術研究所では特任教授として、次世代型電池の研究に取り組んだ。

理想の電池として、早くから全樹脂電池の構想自体は抱いていたが、大きな壁になったのが樹脂の技術だった。電池に最適な材料を見つけ出すには、樹脂の合成や設計に関する高度な知見が欠かせない。そうした中、堀江氏の講演を聴いた三洋化成工業の技術者が訪ねてきたのをきっかけに、構想が実現に向けて動き始めたのだという。

三洋化成工業は、紙オムツ用の高吸水性樹脂や潤滑油添加剤、トナー原料など機能材料を得意とする化学メーカーだ。当時、同社は樹脂のノウハウを生かせる新たな事業を探していた。こうして、堀江氏と三洋化成工業による共同研究開発が2012年にスタート。それから試行錯誤を経て、世界で初めて全樹脂電池の実用化にメドをつけた。

2020年3月、福井県で開いた工場新設会見の様子。中央が堀江氏、左は三洋化成工業の安藤孝夫社長、右は杉本達治・福井県知事(写真:三洋化成工業)

この次世代電池技術は産業界から大きな注目を集め、今年春に横河電機や大林組、帝人、長瀬産業など7社から計80億円の出資が集まった(6月には追加で豊田通商も出資)。いずれも材料の取引や電池システムの設置など、事業面でのメリットに期待した企業による出資だ。

APBはこの増資で得た資金を活用して、量産化のための工場の準備を進めている。これまでは三洋化成工業のパイロットプラントで試作品を作ってきたが、福井県越前市に自社工場用の土地・建屋を取得。2021年春までに生産設備の導入を終え、来秋をメドに電池モジュール製品の商業出荷を開始する計画だ。

ターゲットは再生エネ用の大型蓄電池

堀江氏がこの次世代電池技術で狙う用途は、太陽光などで発電した電気を貯めておく定置用の大型蓄電池だ。

太陽光や風力発電など世界的な再生可能エネルギー導入拡大により、その電力をいったん貯めて有効活用する蓄電池のニーズも高まっているが、実際の普及はさほど進んでいない。現行のリチウム電池で大型定置用を作るとコストが高く、異常時の安全性にも課題があるからだ。電池が大きくなればなるほど、エネルギー容量が増し、事故が起きたときに大惨事になりかねない。

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