河井夫妻「議員辞職」に安倍首相がやきもきの訳 1億5000万円の使途めぐる捜査進展はあるか

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2019年9月の内閣改造で記念撮影に臨む安倍晋三首相(下段中央)と河井克行前法相(三段目左から2人目)(写真:AFP=時事)

2019年7月の参院選での選挙活動をめぐり、東京地検特捜部が7月8日、河井克行前法相と妻の案里参院議員(いずれも自民党を離党)を公職選挙法違反(買収、事前運動)で東京地裁に起訴した。

法相を務めた夫とその妻の国会議員夫婦が大規模な買収などの罪で逮捕・起訴されるのは前代未聞のことだ。コロナ禍や豪雨被害のさなか、安倍政権にとっては手痛い打撃となり、今後の政局運営の大きな火種となるのは避けられない。

河井夫妻は安倍晋三首相に近く、選挙戦でも安倍首相や菅義偉官房長官の肩入れが際立っていた。しかも、克行被告を2019年秋の内閣改造で法相に起用したのは安倍首相だ。各種世論調査で議員辞職を求める声が多数を占めていることを背景に、与野党双方から河井夫妻の議員辞職を求める声が噴出しており、安倍首相や自民党執行部は当面、河井夫妻問題への対応に苦慮することになりそうだ。

有罪が確定すれば議員失職に

起訴状などによると、克行被告は、自民党本部が案里被告を参院広島選挙区(定数2)での2人目の公認候補に決めた直後の2019年3月下旬ごろから選挙直後の8月上旬までの間、投票や票の取りまとめを依頼する趣旨で、関係者に合計約2900万円をばらまいたとされる。

東京地検特捜部は、現金提供の対象が広島県議や地元の首長、後援会幹部ら100人にのぼり、案里被告も5人分計170万円について共謀したとしている。また、参院選公示前の投票依頼や現金提供は事前運動に当たると判断。克行被告を公選法上の「総括主催者」に当たるとして起訴しており、同被告の有罪が確定すれば連座制が適用され、案里被告も失職となる。

そこで注目されるのが起訴を受けての河井夫妻の出処進退だ。捜査関係者によると、夫妻は「買収の意図はなかった」「夫の言う通りにしただけ」などそれぞれ容疑を否認しており、裁判でも徹底抗戦の構えだという。夫妻は逮捕直前の6月17日にそろって自民党を離党しており、「建前からいえば、議員辞職は個人の判断」(自民幹部)となる。

仮に、夫妻がどちらも議員辞職せずに公判に臨めば、選挙の当選者らが買収事件に問われた場合に百日以内の判決を求める「百日裁判」となる。その場合、東京地裁が審理を急げば、10月半ばまでの判決言い渡しも想定される。ただ、過去の百日裁判を見ると、被告側の徹底抗戦で審理が長引いた例もあり、最高裁まで争いが続けば、判決確定まで1年近くかかる可能性もある。

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