飲食店を「倒産」させるコロナより深刻な問題 NY名店オーナーが20年来の店をたたむ理由

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ニューヨークの人気店「プルーン」オーナーのガブリエル・ハミルトン氏(写真右)と妻のアシュリー氏。大学院卒業以来20年続けた店は、この4月に閉店した(写真:Danny Ghitis/The New York Times)

20年間続いたレストランをやむなく閉じた私は、当初の夢に立ち返り、何が実現できるかに思いをめぐらせている。そのための場所は、この街にまだ残されているのだろうか。

従業員を一時解雇する前の晩

従業員30人を全員レイオフ(一時解雇)する前の日の夜、2人の子どもが死ぬ夢を見た。子どもたちは生き埋めになり、実際に埋まっている場所からわずか5フィート(約1.5メートル)の場所を私が間違えて掘っている間に息絶えた。ロイヤルブルーの靴下を履いた下の子のかかとが黒い土の中から突き出しているのを見つけた時には手遅れだった。

それまでの10日間、周囲の人間の誰もが右往左往していた。ニュースやツイートの大波の中、友人、仲間のシェフやマネージャーからメッセージが殺到し、自分のレストランの接客係ばかりか、今では独立して自分のレストランを構えるようになった、かつての従業員までもがアドバイスを求めてきた。

オペレーション担当のマネージャーからは、穏やかながらも不安に満ちた声で「Caviar(キャビア)」のような外部のデリバリー・サービスと契約するよう懇願された。不安を募らせた妻のアシュリーも、夜9時の閉店に営業時間を短縮し、シフトを減らすよう迫ってくる。

当局からの明確な指示がない中(公立学校もまだ休校になっていなかった)、私はその10日間、対立する意見に整理をつけながら、今後どうするべきかもがいていた。そして、あるとき突如として悟った。妻も含めて全員をレイオフするのだ、マンハッタンにある私のレストラン「プルーン」を3月15日の夜11時59分をもって閉店とするのだ、と。

冷静に処理できるデータが1つだけあった。当座預金口座の残高だ。専用口座に取り分けてある徴収済みの売上税と、仕入れ先からの未払い請求書の山をそのままにすれば、最後の1週間の給与は全額捻出できる。

その日、ブランチ営業後にスタッフ全員参加のミーティングを行う頃には、自分の決断の正しさを確信するようになっていた。日々の売り上げはここ数週間と下がり続けていた。土曜日に1万2141ドルあった売り上げが月曜日には4188ドル、木曜日には2093ドルと急落していくのを目撃していたため、ここでパラシュートを開く決断をしたことに私はほっとしていた。パラシュートを開くタイミングが遅れて、木に激突することだけは避けたかった。

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