PCR躊躇しまくった日本がこの先に抱える難題 市中も院内も感染蔓延、割を食うのは国民だ

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新型コロナウイルス対策はゼロベースで見直す必要があるのではないか(写真:REUTERS/Issei Kato)

新型コロナウイルスの感染拡大が続いている。安倍晋三首相は4月7日に7都府県に緊急事態を宣言し、同16日には全国に対象を拡大した。

私は幾つかのメディアの取材を受け、「政府の判断をどう思うか」と質問された。

私は「(新型コロナウイルスに感染しているかどうかを判別する)PCR検査をしていないので、国内の状況がわからない。何とも判断できない」と回答した。

人口1000人あたりのPCR検査数は1.4

いろいろ議論はあるだろうが、日本はPCR検査の数を絞ってきたと言われる。4月18日現在、日本の人口1000人あたりのPCR検査数は1.4で、イタリア22.1、ドイツ20.9 (4月12日現在)、韓国10.8、アメリカ11.2、フランス7.1 (4月14日現在)と比べると、相対的に見て明らかに少ない。

PCR検査はウイルス感染の標準的診断方法だ。PCRをしなければ診断できない。最近になって感染者数が増えたのは、PCRの検査数が増えたことによって、感染していると診断される人の数が増えたことによる可能性がある。

文字が小さくて恐縮だが、下図にPCRの検査数の推移を示した。東京五輪の延期が決まった3月24日以降、検査数が急増していることがわかる。特に保健所、国立感染症研究所などの公的機関での検査数が増加している。

(外部配信先では図表やグラフを全部閲覧できない場合があるので、その際は東洋経済オンライン内でお読みください)

保健所はPCRの検査数を絞ってきたことが知られている。3月23日、埼玉県は保健医療部長の名前で埼玉県医師会などに「新型コロナウイルス感染症に関する今後のPCR検査の考え方等について」という文書を配付し、規制を緩和している。これは厚生労働省からの指示だろう。

保健所の関係者も、このことを認めている。西田道弘・さいたま市保健所長は「病院が溢れるのが嫌で(PCR検査対象の選定を)厳しめにやっていた」と公言した。

この発言を、清水勇人・さいたま市長は問題視し、西田氏を注意した。さらに、清水市長は「決められた基準に沿ってやっている」「(西田氏が)医師としての裁量のある部分でケース・バイ・ケースで判断した面はあるかもしれない」と弁明したが、額面通りには受け取れない。西田氏は元厚労省医系技官だからだ。彼らの本音が透けて見える。

私は、最近の感染者の増加はPCRの検査数を増やした影響が強いと考えている。

もちろん、それだけが理由ではない。3月後半に大学病院など医療機関の検査数が増加したのは、院内感染が増えたからだ。例えば、4月4日現在、東京都では779人の感染が確認されていたが、このうち154人(19.8%)は院内感染だった。

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