受刑者にプログラミングを教える刑務所の狙い イギリス政府がもくろむ出所後の就労支援

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2014年カリフォルニア、サン・クエンティン刑務所の様子(画像:KPIX CBS SF Bay Area-YouTube)

イギリスの刑務所で、受刑者にコーディング(プログラム言語に従いコードを書くこと)を教え、出所後の職探しに役立ててもらうプログラムが開始することになった。イギリス政府が3月15日に発表した。

アメリカの「再犯率ゼロ」プロジェクトがモデル

イギリスのデジタル・文化・メディア・スポーツ省(DCMS)は、120万ポンド(約1億7800万円)の基金「デジタル・スキルズ・イノベーション・ファンド」を立ち上げている。貧困層など社会的に弱い立場にいる人たちが仕事を得やすくなるよう、デジタル系のスキルの研修などを行うためのものだ。今回ここから10万ポンド(約1480万円)が、受刑者へのコーディング研修に当てられることになった。

当記事は「ニューズウィーク日本版」(CCCメディアハウス)からの転載記事です。元記事はこちら

プログラムでは、厳選した受刑者を対象に、出所後に職が見つけやすくなるようコーディングを教える。研修の実施は、非営利団体コード4000が行う。研修はこれまでもイングランド北東部のハンバー刑務所で試験的に行われてきたのだが、新たな資金提供を受けて、研修実施の対象がホーム・ハウス刑務所にも拡大されることになった。受講できる受刑者の数は1000人以上増えることになるという。

コード4000によると、刑務所でのコーディング研修は、アメリカで実際に行われている同様のプロジェクトをモデルにしたもの。アメリカではザ・ラスト・マイルと呼ばれるプロジェクトが、カリフォルニア州のサンクエンティン刑務所で2010年に開始された。

ザ・ラスト・マイルによると、現在はカリフォルニアの他にインディアナ州、カンザス州、オクラホマ州にある全12施設でコーディングの研修を実施している。これまで460人にコーディングを教えてきたが、研修を受けた人たちの再犯率はゼロだという。なお、イギリスでの平均的な再犯率は55%だ。

コード4000が行うコースは4つのステージに分かれている。ステージ1はHTML、CSS、Javascriptなどの基本的なものから始まり、GitやTDD、MVC、データベース、フルスタック開発などを学ぶ。ステージ1を卒業できた人は、外部のクライアントを相手に本物の仕事を手がける。ここではわずかながら収入が得られ、この収入はプロジェクトの資金に還元されることになる。

さらにステージ3になると、刑務所から日帰りで外出し、クライアントの元へ行って仕事をする。最後のステージ4は、デベロッパーとしてフルタイムの職を得ることを目指す。

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