2019年激動の市場でも投資機会は十分にある 世界の成長鈍化と重要なリスクに備える

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2018年末には相場は大荒れ、2019年も激動が予想される(写真:REUTERS/Eduardo Munoz)

2019年は経済成長率の鈍化、各国中央銀行の金融引き締め、政治構造の大きな変化といった転換期にあるため、市場の変動は大きく、厳しい投資環境が続くだろう。そうした中、個人投資家はどのような戦略で臨めばよいのか、考えたい。

2018年は適温相場と呼ばれた2017年の投資環境から一転し、①アメリカの金利の急上昇、②中国経済の減速、③米中貿易戦争などの政治リスクの3つが株式市場の大きな重しとなった。特にアメリカではFRB(連邦準備制度理事会)によるバランスシートの縮小が始まる中、財政・税制の拡大と併せて金利上昇が予想以上に進んだことが、株式市場の楽観モードを一気に転換させた。その後も米中間の貿易対立の激化、イタリアの財政問題、ブレグジット(英国の欧州連合離脱)をめぐる交渉の難航、アメリカの政府機関閉鎖といった政治リスクの台頭が市場の不確実性を高めている。

しかしながら、世界経済を見ると、個人消費、設備投資、雇用動向を示す景気指標は景気後退までは示唆していない。インフレ率は低位で推移しているため、金融引き締めペースは緩やかにとどまろう。投資戦略に当たっては、株式のオーバーウェイトは維持しつつも、高クオリティ債券投資やヘッジファンドやプライベート市場などの代替投資を組み合わせることが重要と考えている。

企業収益は鈍化も、株価下落で益利回りは高い

2019年の市場環境は、3つの点で大きな転換期にある。

まず、世界の経済成長の鈍化が明確となる点だ。2018年の3.8%から2019年は3.6%に減速すると予想している。アメリカは財政刺激策の効果が剥げ落ち、金利上昇や原油価格下落の影響が出始める。中国はアメリカからの関税と国内経済の不均衡是正という2つの圧力に直面しており、2019年の経済成長率は6.1%まで減速するとみている。

ユーロ圏でも、内需は比較的堅調であるが、中国経済の減速や政治面での不確実性による影響を相殺することはできないだろう。それでも、今後、アメリカの利上げペースは鈍化すること、先進国の雇用環境はひっ迫しており賃金上昇が続きやすいこと、中国では財政・金融政策のさらなる緩和が予想されていることから、アメリカや世界経済がマイナス成長となり景気後退に陥るリスクは、非常に低いと考えている。

景気が鈍化する中、企業収益も全般的に減速するだろう。世界の株式市場の時価総額の半分以上を占めるアメリカ市場では、企業の利益の伸びは2018年は21%と8年ぶりの高水準に達した。しかし、2019年は4%程度まで減速するだろう。法人税減税による一時的な浮揚効果が剥落することに加え、関税の悪影響が表れ始めるからだ。一方、新興国の増益率は9%程度と、アメリカやユーロ圏(同5%程度)、日本(0%程度)と比較すると相対的には魅力がある。

昨年9月以降の株価急落により、アメリカ株S&P500種のPER(株価収益率)は、われわれの2019年の業績予想に対してわずか13.7倍(収益利回りは7%)で推移している。過度に下落した新興国株式の魅力も高まっており、株式については十分に分散されたかたちで保有し続けるべきだと考えている。

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