特別仕様車まで造るトヨタディーラーの凄み 名物経営者がディーラー業界の未来を占う

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神奈川トヨタが横浜をイメージして2017年に発売した「プリウス」の特別仕様車「濱プリ」。ディーラーが特別仕様車まで手掛けるのは珍しい(写真:KTグループ)
日産自動車のおひざ元、神奈川県で気を吐くトヨタ系ディーラーがある。新車、中古車合わせて59店舗を展開する神奈川トヨタ自動車だ。トヨタ自動車設立から2年後の1939年に創業。トヨタ系有力ディーラーの最古参の一角を占める。その神奈川トヨタ自動車をはじめとしたトヨタディーラー4社や自動車関連の事業会社12社で構成されるのがKTグループだ。
KTグループはトヨタ系販社の中でもかなり異色の存在だ。整備作業の効率化に向け、大学と連携して複数の基盤技術を開発。昨年、その技術の実用化を企業に訴える展示会を初めて開催した。店舗と整備工場を光ファイバーでつなぎリアルタイムで整備状況を確認できる映像通信システムや、その場にいなくても車の破損部分に触った感覚が伝わる触覚伝送システムなどを来社企業70社にアピールした。
自動車ディーラーの枠を超えたユニークさを持ち合わせる企業グループを率いる創業3代目の上野健彦会長兼社長に、ディーラーの現状や課題、将来像について聞いた。

ディーラー業界の構造に劇的な変化は当面ない

上野健彦(うえの たけひこ)/1958年生まれ。1982年慶応義塾大学卒業後、神奈川トヨタ自動車入社。1985~1989年、トヨタ自動車に出向。1989年神奈川トヨタ自動車取締役。2000年社長。2007年会長。2008年KTグループ会長兼社長に就任、現在に至る(撮影:今井康一)

 ――自動車業界は電動化や自動運転など100年に1度の変革期にあります。ディーラーも変革期にありますか。

今の変革は技術領域が中心で、ディーラーの業界構造が大きく転換することは当面考えられない。理由は4つある。

1つ目は自動車メーカーが専売制を採り、メーカーごとに流通網があることだ。多くの流通網がある家電業界と違い、専売ルートを通じてしか販売を行えない。

2つ目は道路3法と呼ばれる道路交通法、道路運送車両法、道路運送法があるということだ。自動車は車検制度に基いた点検を数年に一度必ずしないといけない。ディーラーは運輸支局から指定工場の資格を得ていれば、車検場に車両を持ちこまず車検業務を行うことができ、車検需要を取り込むことができる。

3つ目は自動車の保有台数だ。つい最近まで増え続けてきたが、水平飛行に入った。しばらくすると少しずつ減る。だが、現状では、新車で購入した顧客は平均8年ぐらい乗っており、今後も保有については底堅いものがある。そして4つ目は、それだけの保有台数に対してサービスを行える人員が確保されているということだ。

以上4つのディーラー地盤があり、この構図が生きているうちは劇的な変化が起きようがない。

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