「恋愛至上主義」になる教育困難校の生徒たち 妊娠して高校を中退した時が、幸せの絶頂に

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恋愛に異常なまでに関心を持つ背景には、家庭での寂しさがあった(写真:tonton / PIXTA)
「教育困難校」という言葉をご存じだろうか。さまざまな背景や問題を抱えた子どもが集まり、教育活動が成立しない高校のことだ。
大学受験は社会の関心を集めるものの、高校受験は、人生にとっての意味の大きさに反して、あまり注目されていない。しかし、この高校受験こそ、実は人生前半の最大の分岐点という意味を持つものである。
高校という学校段階は、子どもの学力や、家庭環境などの「格差」が改善される場ではなく、加速される場になってしまっているというのが現実だ。本連載では、「教育困難校」の実態について、現場での経験を踏まえ、お伝えしていく。

 

年末年始、テレビや新聞では家族だんらんや故郷への帰省を当たり前のように取り上げているが、今の日本では実際はそれらとまったく関係のない家庭も多い。「教育困難校」のほとんどの生徒の家庭がまさにそうであろう。

「家族」に強いあこがれを持つ

「教育困難校」の生徒には幼い頃から、年末年始を家族一緒にゆっくり過ごすという習慣はない。サービス業に従事し非正規社員であることが多い親は、ほかの人が働きたがらず、そのために時給がよくなるこの時期こそ稼ぎ時であるし、生徒自身も同様の理由でアルバイトに忙しい。

子どもの最高の楽しみであるお年玉も、故郷から切り離され、もらえるような親戚付き合いをしていないので、親以外からもらった経験がない生徒もいる。その親からもらうお年玉の金額も、物心ついた頃から同額でまったく上昇しないという。確かに、今の高校生が小学生低学年の頃にリーマンショックが起こっており、彼らは好景気の時期を知らないのだ。

結局、年末年始も特別ではなく、家族がいつもより少し忙しく、いつもどおりバラバラに行動し、空いている時間はスマホに熱中することになる。テレビドラマやCMなどから、家族だんらんはすばらしいものらしいという一般的な価値観は漠然とキャッチしながら、その実態を体験できない「教育困難校」の生徒は、「家族」に強いあこがれを持っている。

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