風光明媚!長距離特急「南風」に乗ってみた 4時間半で乗務員交替5回、無人駅にも停車

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「南風」は四国の代表的な長距離特急のひとつだ
鉄道ジャーナル社の協力を得て、『鉄道ジャーナル』2016年10月号「特急にっぽん縦断記Ⅱ」の一部を抜粋して掲載します。

 

四国の土讃線系統の特急は岡山~高知間「南風」と高松~高知間「しまんと」、高知を起終点に高知県南西部の中村・宿毛(すくも)方面に向かう「あしずり」に分けられる。このうち、「南風」と「しまんと」の一部は中村方面に直通して、「あしずり」系統の代替にもなっている。多度津(たどつ)からの土讃線は窪川までで、窪川から西は土佐くろしお鉄道となる。

気動車初の振子車両

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この土佐くろしお鉄道は窪川~中村間の元国鉄中村線を転換した区間と、新規開業した中村~宿毛間宿毛線に二分される。以前は多くの特急が宿毛まで乗り入れていたが、苦しいことに乗客数が伸びず、根本的な見直しによって今は9往復のうち7.5往復までが中村で折り返す。しかし、そのような形で宿毛に入る特急列車が少ない中、うち1往復は「南風」であり、つまり岡山~宿毛間を通して走る。

その距離は318.0km。じつは現在、300km以上の距離を走る昼行在来線特急は、413.1kmの「にちりんシーガイア」が筆頭で10系統のみであり、この「南風」は9位に入る。かつて長距離特急と言えば、大阪~青森間1000kmを超えて走る「白鳥」や、上野~青森間「はつかり」などを指したものだが、あらためて様子が変わったことに思い至る。

豊後水道に開く宿毛湾に面した高知県西端の駅、宿毛の高架駅から出る「南風12号」は、2000系気動車3両編成である。後部の1号車がグリーン車と普通車の合造で指定席、 2号車の普通車は指定席と自由席に二分しており、指定席は濃紺の枕カバーにその旨の文字がある。先頭3号車は自由席。

2000系は1989年、四国の高速道路の進展に抗する高速性の確保のため、発足したばかりのJR四国にとって是が非でも必要な車両として、気動車初の振子車両として開発された。試作車のTSEがソファ席のラウンジやカラオケ装置を搭載して誕生した背景には、もしも開発が成功に至らず量産をあきらめた場合、振子を固定してイベント車両に転用する考えがあったためという。鉄道総研とともに開発に挑んだ制御付き振子は、周知のとおり電車を含めた以後の在来線特急車に標準的な装備となり、JR全社に広まった。

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