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「基幹システムの刷新」に取り組む前にできることは?「企業をAIに合わせるな。AIを企業に合わせよう」

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Wonderful AI 日本代表執行役社長の細井智(ほそい・さとし)氏
  • Wonderful AI 制作:東洋経済ブランドスタジオ
大規模言語モデル(LLM)を企業の実務現場に組み込むアプライドAIの領域で急成長を遂げ、2026年5月に日本市場へ進出した「Wonderful AI」。2026年9月にはシリーズCで5.5億ドルを調達し、企業価値50億ドルに到達。すでにグローバル35以上の市場、100社を超えるエンタープライズ企業で導入が進んでいる。現場のレガシーシステムを生かす「水平統合型」プラットフォームの真価について、Wonderful AI (以下、Wonderful)日本代表執行役社長の細井智(ほそい・さとし)氏に話を伺った。

“ローカルファースト”の考え方で、日本企業にAIを合わせる

 オランダのアムステルダムで2025年1月に創業し、高度なサイバーセキュリティとIT技術が集積するイスラエルに研究開発本部を構えるWonderful。

 金融や通信、ヘルスケアといった極めて高いセキュリティとガバナンスが求められるエンタープライズ企業に向け、業務を横断して自律遂行するAIエージェントと、AIエージェントを統括する独自の「Wonderful AI OS」を提供している。

「日本企業には、長年培ってきた固有の商習慣や何十年も安定稼働してきた基幹システムがあり、それらが質の高い現場を保っています。新たに導入したツールに業務プロセスを合わせるといったアプローチではうまくいきません」と話すのは、Wonderful 日本代表執行役社長の細井智(ほそい・さとし)氏だ。

細井智(ほそい・さとし)
中央大学理工学部卒。1996年日立ソフトウェアエンジニアリングに入社。1998年日本マイクロソフト入社。プロダクトマネージメント、エンタープライズ事業、公共事業、パートナー事業本部技術統括本部業務執行役員、デジタルトランスフォーメーション事業本部執行役員常務を経て、2022年1月パイオニア常務執行役員モビリティサービスカンパニーCEO兼グループCISO。2026年5月よりWonderful 日本代表執行役社長。

「長年積み重ねてきた複雑な基幹システムが共存している状態で、『グローバル標準のベストプラクティスであるITツールに、自社の業務を合わせる』という考え方をすると、膨大なアドオンやカスタマイズが発生し、コストが跳ね上がり、結果的にシステムが身動きの取れないスパゲッティ状態に陥ってしまうことがあります」

こうした課題に対し細井氏は、Wonderfulに「合わせていただく必要はまったくない」と話す。

「Wonderfulは“ローカルファースト”を掲げ、日本語の敬語・文脈・日本固有の商習慣、さらにはAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)のない旧来システムにAI側を適合させることに注力しています。企業の実態に、AI側をチューニングさせていくという考え方です」

企業の資産を生かしながら、AIが業務を一気通貫で完了

同社はイスラエルを拠点としてヨーロッパで大きく成長してきたが、「世の中が直面していた『生成AIに対する企業の幻滅期』に、実務に直結した解を提示できたこと」も、その背景にあると細井氏は話す。

「多くの企業はこれまで法務や営業、サポートなど部門ごとに個別のSaaSを導入してきました。しかし本来、業務の成果はサイロ(部門の壁)の中ではなく、部門をまたぐ一連のワークフローの中で生まれるものです。結果として『ツールを入れたがデータの移行が煩雑で実務が回らない』『社員がシステム間を手作業で橋渡ししている』というギャップが生じていたのです」

そこでWonderfulが提示したのが、既存のシステムを壊さずに横串を通す「水平統合型」のAIエージェントだった。企業の資産をそのまま生かしながら、複数のシステムを横断して実際の業務を完了させる仕組みだ。

「業務向けAIは、特定のCRM(顧客管理システム)やクラウドの中でしか動かない「垂直統合型」が主流でした。しかし現実のビジネスでは、社員はCRMを見ながら古い基幹システムをたたき、表計算ソフトを開いてデータを突き合わせメールを送っています。当社のAIエージェントは、まさにこの人間と同じような振る舞いを再現します。APIが存在する最新クラウドはもちろん、APIがない古いメインフレームやオンプレミスの画面であっても、人間のようにGUI(グラフィカル・ユーザー・インターフェース)を直接画面操作してデータを読み書きし、業務を一気通貫で完了させます」

迅速な立ち上げと成果最大化を両立する、透明性の高いハイブリッド型料金体系

導入におけるスピード感にも注目したい。

「要件定義からAIエージェントの構築、本番稼働までをおおむね1カ月から3カ月以内で完了させることができます。これが可能な理由は、私たちがゼロからスクラッチ開発しているのではなく、すでに世界35市場で培った『検証済みのエージェントモジュール』『データ連携コネクタ』『セキュリティガードレール』をライブラリ化しており、これらを顧客の業務に合わせて迅速に組み立てるアーキテクチャを持っているからです」

そして、このスピードゆえに、顧客側で費用対効果をコントロールしやすい体系になっているという。

「お客様がリスクを抑えてスタートし、事業成長に合わせて無理なくスケールできる設計にしています。初期はFDE(Forward Deployed Engineer)やDS(Deployment Strategist)が現場に入り込み本番稼働から軌道に乗るまで伴走しますが、最終的にはお客様自身が自走運用できる体制へ移行することをゴールとしています。伴走フェーズから自走フェーズへ滑らかにシフトすることで、費用対効果をコントロールしながら、長期的に高いROI(投資利益率)を実感していただける関係性を目指しています」

さらに、大企業が懸念するベンダーロックインに対しても、意図的に顧客を囲い込まない思想を徹底している。具体的には、蓄積された業務知識やプロンプトはオープン形式で管理され、契約終了時にも外部へエクスポート可能であること。特定のLLMプロバイダーに依存せず最新モデルに自由に差し替えられること。自社クラウド(BYOC)やオンプレミスのエアギャップ環境でも稼働すること。そして、構築したロジックのノウハウは顧客に帰属し自ら改修できる開発基盤を提供することの4つを打ち出している。

現場の強みと既存資産を生かしたまま、複雑な業務プロセスを自律的につなぎ込むWonderful。このローカルファーストなアプローチは、日本企業が抱える課題に対し、強力な解を示している。

オンプレミスにも対応。AIが人間に代わって画面を直接操作
金融や通信、パブリックセクターでは、セキュリティ上の制約などからパブリッククラウドに機密データを送信できないケースが多数存在する。「当社では、お客様のデータセンター内に閉じた、完全なオンプレミス・エアギャップ環境にも対応しています」と細井氏。
欧州の某大手通信キャリアでは、中小企業向けの契約・受注管理に長年CRMを使用していたが、このCRMに現代的なAPIがなく、受注内容を人間が手作業で確認・入力していた。この課題に対し、同社のコンピュータ操作エージェントを導入。AIが人間に代わって画面を直接操作して自動処理を行った結果、受注1件当たりの処理コストを86%削減し、分析にかかる時間も85%削減できたという。
財務会計や人事などのバックオフィス業務も効率化
バックオフィス業務、とりわけ財務会計や人事は、一見ルールベースに見えて「例外処理」が非常に多い。「当社が真価を発揮するのが、まさにこの領域です」と細井氏。
グローバルな会計・コンプライアンス管理を担うオランダ発のサービス企業では、世界87の法域における税制やVAT(付加価値税)の規制変更をAIが常時監視し、ルール改正が検知されると、影響を受ける企業のERP(統合業務システム)をエージェントが自動で特定する仕組みを構築。必要な証憑の収集からシステム更新のステージングまでを自動で行うため、担当者は最終確認の承認ボタンを押すだけでよくなったという。人事領域においても、国内外の就業規則や福利厚生規定の照合、社員からの複雑な申請に対する一次審査から基幹人事システムへの代理入力まで、システム間を横断する定型・準定型業務を効率化しているという。
Interview
AIは日本の産業構造をどうアップデートできるのか。日本企業と外資系ITの双方を経験した細井氏が、日本の現状に対する問題意識や、実現したい「Wonderful World」のビジョンについて熱く語る。
――日本企業のイノベーションを阻んでいる原因について、どのように考察されていますか。
日本企業のイノベーションを阻んできた最大の要因は、「IT環境の過度なサイロ化と、レガシー基盤の全面刷新にとらわれる思考停止」にあると考えています。多くの日本企業は、過去数十年にわたり個別最適でシステムを継ぎ足してきました。その結果、業務がブラックボックス化し、いざDXしようとすると、「基盤が古すぎてつながらない」「基幹システムの刷新に3〜5年かかる」といった事態が起こる。それによって、現場の変革が何年も立ち往生してしまうといったケースを見てきました。これでは変化の激しいグローバル競争に勝てるはずがありません。
――Wonderfulへ参画を決めた経緯をお聞かせください。
私はこれまで約30年間、外資系ITの現場でテクノロジーの普及と企業の変革に携わってきました。その後「自らの手で直接、日本企業の再生に貢献したい」という強い思いから、国内大手製造業へ身を転じ、マネジメントの立場から構造改革に挑みました。その経験を通じて実感したのが、日本企業が持つ底力と現場力の高さです。もっと多くの日本企業の変革に尽力したい。しかし、私個人が会社内部から変革を起こしていくのでは、時間がかかりすぎてしまう。日本が直面している労働力不足という課題に対し、1社ずつ変えているだけでは日本産業全体の沈下スピードに間に合わないのではないか、という強い危機感を抱いたのです。Wonderfulでは何十社、何百社という日本企業を一気に変革できると確信し、参画を決意しました。
――Wonderfulを通じて、どのような社会や世界を実現させたいとお考えでしょうか。
社名には、「Wonderful World」、すばらしい世界をつくりたいという創業以来の純粋な思いが込められており、これは私自身の人生のミッションでもあります。私たちが目指すのは「人間を、システムのお守りや単調な作業から解放すること」です。異なるシステム間の面倒な橋渡しや定型業務は、AIエージェントが裏側で完璧にやり遂げる。それによって生まれた余白の時間で、社員は目の前のお客様と深く対話し、新しいビジネスのアイデアを練り、家族や仲間との時間を豊かにする。AIによって人が職を奪われるのではなく、AIという信頼できる相棒がいるからこそ、人間が人間らしい創造性を発揮できる。これこそが私たちの実現したい「Wonderful World」です。
――読者に向けてメッセージをお願いします。
「DXを進めたいが、基幹システムが古くて動けない」「過去のSaaS導入で業務がバラバラになり、投資に踏み切れない」とお悩みなら、ぜひ私たちにご相談ください。大切に築き上げてこられた事業基盤と現場の強みをそのまま生かし、AIが実務を動かす姿をお見せできます。また、「AIの力で日本の産業構造そのものをアップデートしたい」という熱い志を持つ方は、ぜひ私たちのチームに加わってください。世界を、そして日本を本気でワンダフルに変えていく挑戦を、共に楽しみましょう。

基幹システムの刷新に取り組む前に。Wonderful AIの公式HPはこちらから