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信託が仕掛ける攻めの成長戦略とは?

貯蓄から投資へ、インフレ局面で飛躍する

三井住友トラストグループ 東証プライム 8309

三井住友トラストグループは、国内で唯一上場している信託銀行グループであり、資産運用残高をはじめ多くの領域で業界トップクラスの地位を誇る。インフレ局面の中、「メガバンク」とは一線を画し、金利収益に過度に依存しない高品質な「手数料収益中心のビジネスモデル」を強みに、資本効率の目標として「ROTCE 16%」という高い数値を掲げる、その成長戦略とは何か。

2026/09/16
制作:東洋経済ブランドスタジオ
三井住友トラストグループ 取締役執行役社長(CEO)大山 一也

三井住友トラストグループが新たに掲げる10年間の長期計画と3カ年の中期経営計画。法人営業や経営企画などの中枢部門を歩み、信託銀行のトップを経て2026年6月、取締役執行役社長 (CEO)に就任した大山一也氏は、その決意をこう語る。

「日本の金融界は今、デフレからインフレへの移行、金利のある世界、日経平均株価の史上最高値更新という状況下で、個人金融資産2300兆円が一気に動き出す歴史的な転換期を迎えています。日本の長年の金融課題である『貯蓄から投資へ』という大きな潮流において、当グループは中核的役割を果たしていきたい。『人事を尽くして、天命を待つ』のではなく、この天命に真正面から向き合って人事を尽くす覚悟です」

今回の計画公表の注目点は、経営目標をグローバルレベルに引き上げたこと。同社は2035年のありたい姿として「ROTCE※116%、実質業務純益1兆円」と野心的な目標を掲げている。

「われわれは資金・資産・資本の好循環を実現し、日本の持続的成長に貢献していくことで存在感を高めていきたい。昨年度も2期連続で過去最高益を達成しましたが、株式市場における当社の評価は必ずしも十分ではありません。三井住友トラストグループがグローバルな金融機関として選ばれるために、この3年間で資産運用ビジネスを成長エンジンに収益構造を転換し、新しい成長軌道をつくり上げていきたいと考えています」

※1 のれん及びM&A等により認識された無形資産を控除した株主資本(TCE)が生み出す収益力を示す指標。普通株式に係る親会社株主に帰属する当期純利益からのれん償却額等を控除した利益を、普通株式に係る自己資本からのれん等を控除した金額で除して算出

インフレ局面の勝者としてメガバンクとの決定的な違い

同社は、メガバンクとはビジネスモデルが大きく異なる。銀行と信託という、2つの機能を併せ持つハイブリッドな存在であり、資産運用・資産管理、年金、不動産、証券代行など信託関連の手数料収益を軸としたビジネスモデルが特徴。国内では唯一上場している、信託銀行を中心とする金融グループでもある。

「われわれは銀行であり、機関投資家であり、不動産機能も有しています。資金・資産・資本の好循環が起きるさまざまな市場でビジネスを行っているため、今の環境下では絶好のポジションにいるといえます。収益構造の特徴は、銀行ビジネスの金利収益よりも手数料収益のほうが大きいことです。資産運用・資産管理ビジネスの手数料は時価残高×報酬率で計算されるため、インフレ局面では時価上昇に伴い、手数料収益も伸長します。現在、日本の個人金融資産の半分は現預金で株式・投信は2割程度といわれていますが、インフレ経済のアメリカはその逆です。インフレ局面では現預金の価値が目減りするため、アメリカの家計資産は必然的に投資へ向かいました。 今後は、日本においても貯蓄から投資へという潮流の中で、現預金は減少し、投資の比率が着実に伸びていくと予想しています」

それだけではない。同社は他ジャンルにおいても「攻めの投資」を見せる。信託ならではのエッジの利いた投資戦略とは何か。

「これまで日本で資金の循環が起こらなかった理由の1つに、国内への投資不足があります。われわれは今後、インフラ、エネルギー、環境といった分野で長期かつ大型の資金需要が見込まれる国内への投資を促進すべく、2023年に国内総合型インフラファンドを組成しました。現在は2号ファンドを募集中で、2030年度までに5000億円規模に拡大します。また、今後も当社の経験や知見を生かした船舶ファンドの組成など、信託としての特徴を活用し、プライベートアセットの取り組みを強化していきます。預金に過度に依存せず、ファンドを通じて投資家資金をインフラなどのリアルアセットに供給することで、『令和版産業金融』を実現し、長期的かつ安定的な資金循環を創出していきたいと考えています」

「ROTCE 13~16%」への挑戦と総還元性向50%以上の狙い

同社は資本効率の高さを示すため、中期経営計画の最終年度である2028年度に「ROTCE 13%程度」、長期ビジョンとなる2035年度には「ROTCE 16%」という目標を掲げている。投資家が期待する「中長期的な株主還元」についてはどう考えるのか。

「還元方針を見直し、総還元性向を50%以上にしました。配当の累進的な運営は継続しますので、株主の皆様には『50%をどのくらい上回ってくるか』という、総還元性向のアップサイドを意識していただければと思います。50%以上を還元した残りの資本を活用して、将来の還元拡充のための成長投資もしっかりと行っていきます」

実際、中計の3カ年では、1兆2000億円程度の資本創出に対して、6000億円以上を還元し、残りの資本をオーガニックおよびインオーガニック投資に振り向ける方針だ。オーガニック投資は主にプロジェクトファイナンスなど収益性の高い貸し出しへ、インオーガニックでは資産運用ビジネスへ投資していく考えを示した。

今年8月には株式分割を行った。1:4の株式分割により、20万円以下で1単元を保有できるようになった。

「もともと当社は外国人株主比率が40%台と高く、個人株主は現状9%と比率が低いことが課題でした。個人投資家を増やすため、少額投資で始められる環境を整えました」

今後10年間のグランドデザインを示し、新たな一歩を踏み出した三井住友トラストグループ。最後に大山氏は個人投資家へ熱いメッセージを送ってくれた。

「長期に当社の株式を保有してくださる皆様にしっかりと還元していきたい。われわれはグローバルベースで選ばれる企業になれるよう高い目標を掲げ、成長していきたいと考えています。ぜひ三井住友トラストグループの未来にご期待ください」

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